2016年6月1日水曜日

アベノミクス限界 賃金は減少し景気は上向かず

 「アベノミクスは失敗していない」。首相は27日、伊勢志摩サミット後の記者会見で批判への予防線を張りましたが、それではなぜ、あれだけ固執していた消費税増税を延期したのでしょうか。
 また黒田日銀総裁は、就任時に2年間でデフレを脱却できなかったら総裁を辞めると言った筈ですが、そういう動きはなさそうです。アベノミクスをさらに続けようというのでしょうか。
 
 確かに昨年は円安株高を演出した結果一部富裕層などは大儲けをしましたが、肝心の景気は一体どうなっているのでしょうか。
 「論より証拠」政府の資料で見ても、GDP個人消費量は14年4月の消費税アップ(8%に)を境に322兆円から306兆円に急落して現在に至り、実質賃金指数は2010年をピークに以後は一貫してそれを下回っていて、主要国の経済成長率も他の国は2~6%を維持しているのに対して、日本だけは0%すれすれにとどまっています。
 
 アベノミクスの手仕舞いのときの一大悲劇要因を除外して考えたとしても、金融緩和を柱とする政策が功を奏していないことは明らかです。
 中日新聞 の記事を紹介します。
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アベノミクス限界 賃金減少、景気上向かず
中日新聞  2016年5月31日
 大企業を起点に富を行き渡らせる「アベノミクス」は経済を活性化し、消費税率を上げられるようにするシナリオだったが、引き上げる環境は整わなかった。安倍晋三首相は新興国をはじめ世界経済の先行きリスクを挙げるが、政策の限界を指摘する声も上がる。
 
 「アベノミクスは失敗していない」。首相は二十七日、伊勢志摩サミット後の記者会見で、有効求人倍率の改善などを挙げて批判への予防線を張った。
 アベノミクスは(1)日銀が大量のお金を用意する「金融緩和」(2)政府が公共事業などを発注する「財政出動」(3)企業が活動しやすいルールを整備する「規制改革」-という「三本の矢」で企業の利益を増やす。これにより働く人たちの賃金が増え、消費が伸び、また企業がもうかるという「好循環シナリオ」を描いた。
 
 二〇一二年十二月に政権が発足すると、日銀は大規模な金融緩和を実施。たくさんの円が世の中に流れるようにしたため、円は米ドルなど外貨より価値が下がり、大幅な円安に。大企業の海外売り上げが円換算でかさ上げされた。財務省の法人企業統計によると一四年度の企業の税引き前の経常利益は前年度より8・3%増え、約六十五兆円と過去最高になった。
 ただ、厚生労働省のまとめでは、昨年の春闘の賃上げ幅は大企業でも2・38%にとどまった。「円安による一時的な利益のかさ上げだけで、思い切った賃上げに踏み切れない」(大手電機メーカー関係者)という企業心理も働いている。
 
 今年の春闘は、年初からの円高で円安効果が薄れ、賃上げが急速に鈍った。円安の副作用で上がった食品などの物価はなかなか下がらない。物価の影響を加味した賃金水準である「実質賃金指数」は、政権の発足から減少傾向が続く。
 立命館大の高橋伸彰教授(経済政策)は「もっと弱者や労働者への分配に力点を置くべきだ」と話す。
 首相はサミット後の会見で「新興国経済に弱さが見られる」と危機感を示した。リーマン・ショック時と同じ程度の下落を示す資源価格など一部の指標を持ち出し、危機を回避するため「あらゆる政策を総動員する」と述べていた。あくまでも世界経済の危機に対応するというのが消費税率引き上げ再延期の理由だ。
 
 国際通貨基金(IMF)の統計では、中国の国内総生産(GDP)成長率は7%台後半から6%台前半にまで減速。それでも米国は一七年には2・5%成長を、欧州は1・9%成長を見通す。しかし、景気が低迷する日本は消費税率を予定通り来年四月に引き上げた場合、0・1%減のマイナス成長に陥ると指摘されていた。(吉田通夫)
 

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