経済学者の植草一秀氏は、先進各国の中で日本だけがGDPの成長率の見通しがマイナスで、日本だけが、リーマンショック時と類似した状況にあると述べています。
リーマンショックの局面は、円高=株安の進行局面の途上において起きたもので、現在の日本がまったく同様に、円高=株安の進行局面の途上にあるとしています。(そのことを明瞭に示すグラフが2枚添付されているので下記のURLから原記事を参照願います)
そして、6月16日の日銀・金融政策決定会合で、もはや量的金融緩和は効かずに、円高=ドル安の進行を止めることはできないとして、日本銀行がついに白旗を上げました。このままでは再び、円高=株安=景気急落 の悪夢に見舞われます。
安倍内閣が「さらにアベノミクスのエンジンを吹かす」などという、無意味にとどまらず有害な発言を続けて、全く危機感を持っていないのは不思議なことです。
「東京の株式市況暴落待ったなし」とする日刊ゲンダイの記事も併せて紹介します。
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日本だけはリーマンショック時に似た危機にある
植草一秀の「知られざる真実」 2016年6月16日
6月13日、14日に第16回TRI政経塾を開催した。
の購読者を対象に40名の会員を募集して、年4回開催している政治経済金融情勢分析を中心とするセミナーである。
A日程(原則として月曜日開催)とB日程(原則として火曜日開催)を設定し、それぞれ20名の限定会員で開催している。
今回のTRI政経塾で、足下の金融市場変動についての分析を提示した。
そのエッセンスの部分を切り取って紹介させていただく。
安倍首相は5月26-27日に開催された伊勢志摩サミットで、「リーマンショック前の状況と類似している」という主旨の見解を示して、主要国首脳から強い異論を受けたと伝えられている。
この点については、5月26日付ブログ記事「安倍首相のこじつけリーマン級危機説に異論噴出」およびメルマガ記事に既述した。 http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-264f.html
欧米経済は緩やかな景気回復を維持しており、リーマンショック前の状況とはまったく異なる。
しかしながら、実は、日本の状況だけは、リーマンショック時と類似している部分があるのだ。
日本には言霊信仰がある。発せられた言葉自身が、力を持つということになる。
安倍首相は消費税再増税再延期の口実として「リーマンショック」という言葉を使ったのだろうが、安倍首相がこの言葉を使ったために、その状況が呼び込まれてしまうという現実が広がる気配を示しているのだ。
IMFの2016年-2017年実質GDP成長率見通しは、
2016年 2017年
日本 0・5% -0・1%
米国 2・4% 2・5%
ユーロ圏 1・5% 1・6%
であり、日本だけが不況の様相を示している。つまり、欧米はリーマンショック時とは異なる経済状況にあるが、日本だけは、リーマンショック時と類似した状況にあると言ってよい状況にある。
そして、もうひとつ、見落とせぬ点がある。
リーマンショックの局面は、円高=株安の進行局面の途上にあった。そして、現在の日本がまったく同様に、円高=株安の進行局面の途上にある。
そして、円高=ドル安の進行を止めるとしてきた日本銀行がついに白旗を上げた。
量的金融緩和が効かず、マイナス金利に踏み込んだが、これも効かず、6月16日の金融政策決定会合で、追加策を示せなかった。
日銀がついに白旗を上げた。幹部は総辞職するべきだろう。
(2枚のグラフ 添付省略)
つまり、日本だけは、リーマンショック時と同じように、円高=株安=景気急落 の悪夢に見舞われる可能性が浮上している。
そして、この日本の崩落が、中国経済の底割れ等に波及すると、世界経済が日本と新興国を震源地にして急落する可能性が浮上する。
安倍首相は世界経済がリーマンショック時の状況に似ていると主張して異論噴出を招いたが、そう言うのではなく、「日本経済がリーマンショック時の経済状況と類似した状況にある」ことを率直に認めて、大胆な経済政策を決定して、サミットに臨むべきだった。
しかし、安倍首相は、日本経済ではなく、世界経済がリーマンショック時の状況に似ているという事実誤認の指摘を示し、日本の積極策を打たずにサミットに臨み、政策合意を得ることもできなかった。
2012年衆院選、2013年参院選、2014年衆院選、2016年衆院補選では、選挙前に株価がいったん下落し、その後、選挙直前に向けて株価が急反発したが、今回は、この「株価操縦」が効力を失うリスクが浮上している。円高=株安の流れが持続する場合、安倍政権与党は参院選で大敗北を喫する可能性が浮上する。
日経平均株価は
5月31日の17234円から
6月16日の15434円に 急落している。2週間で1800円、10%の急落である。
ところが、NHKは株価急落をニュースで伝えない。
傑作は6月13日の正午のニュースである。
週明けの東京市場は、週末の株価から約300円も下落して取引を始めた。
円高が進行し、株価下落が進行しており、この円高=株安が今後の日本経済にどのような影響を与えるのか、あるいは、なぜ円高=株安が進行しているのかが、視聴者の知りたい関心事項である。
ところが、NHKはなんと、「日本国債が買われている」とニュースで報じたのである。
英国の国民投票で英国のEU離脱が可決されるのではないかとの懸念が強まり、相対的に安全な資産を買おうという動きが強まり、日本の国債が値上がりしていると伝えたのである。
そして今日もまた、NHKは株価急落をまったく伝えない。
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(以下は有料ブログのため非公開)
空売り比率が最高に “狙われた東京市場”暴落待ったなし
日刊ゲンダイ 2016年6月17日
市場は過去最高レベルの警戒態勢を敷き始めた。
日経平均は15日、5営業日ぶりに反発したものの、16日の終値は485円安の1万5434円と再び下落。一瞬の値上がりは「下げ過ぎた反動に過ぎない」の見方が主流で、この先、凋落傾向に歯止めがかからない地獄相場が待っているという悲観論が蔓延している。
確かに、英国のEU離脱やトランプ旋風、米の銃乱射、中国の景気失速など、市場にとっての悪材料は事欠かない。ここへきて暴落を予感させる指標に注目が集まっている。
「東証の空売り比率(売買代金ベース)が急上昇しているのです。今月10日に過去最高となる47・1%を記録し、その後も高止まりしています。市場参加者の多くが、株価はもっと下がると思っている証拠でしょう」(証券アナリスト)
空売りは信用取引のひとつで、買い戻しが前提だ。単純には、株価が高いと思われる場面で売って、株価が下落したときに買い戻す。例えば、1000円で売って、800円で買い戻せば200円の儲けとなる。
相場ジンクスでは、空売り比率が過去最高を更新すると、そこが底値になるといわれる。昨年9月に過去最高(43・4%)を付けたときも、そこから株価は反転した。
ところが、今回は様子が違う。日経平均の下落傾向が止まらないのだ。
「空売り比率は50%まで高まると読んでいます。英国のEU離脱を問う国民投票が23日に実施されますが、結果が離脱だったら、世界の金融市場は大混乱します。ただ、市場は離脱を織り込み始めました。空売りの急増は、そうした背景があると睨んでいます」(株式評論家の倉多慎之助氏)
今週も空売り比率は40%台を維持したままだ。15日は41・9%あった。一方、相場への警戒感が高まったため取引量は細ってきた。東証1部の売買代金は13~15日と3日続けて活況の目安となる2兆円を割り込んだ。
「市場参加者が少ないと金融マフィアの思惑通りに相場は動きます。ドル円相場を1ドル=95円、日経平均を1万3000円まで暴落させる驚愕シナリオが囁かれています」(倉多慎之助氏)
ハゲタカ系の投資ファンドが猛然と空売りを仕掛けているのだとしたら、大暴落は目の前だ。