2016年6月9日木曜日

教委が集会参加の教師に「政権批判はダメ」と

 選挙権を18歳に引き下げるのに伴って高校生の校外での政治活動も当然認められましたが、自治体によっては事前の届け出を要求するなどして、高校生の政治活動に対して干渉がましい対応をしています。高校生の思想信条の自由や表現の自由を制限するのは勿論許されません。
 
 ところが宮城県教育委員会は、「ブラックバイト」や安全保障法制、生徒会活動などをテーマにした県内での集会に参加した県立高校の教師に対して、事前に「どんなことを話すのか」などと尋ね、政権批判の発言を慎むよう求めたということです。
 教委は「教育公務員としての政治的中立性が保たれるべきだ」と弁解していますが、「教師として現場でどのような教育を実践するか」と「個人としてどのような考えを持って発信するか」はまったく別問題であると、若手弁護士の会はその非を指摘しています
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ロコツに「政権批判はダメ」 いやいやいや…憲法違反です(汗) 
明日の自由を守る若手弁護士の会 2016年6月7日     
 報道によると、宮城県教育委員会が、校外での集会に参加して発言した県立高校の先生に対し、参加前に「政権批判の言葉に気をつけるように」と注意していたのだそうです。
政権批判、慎むよう求める 集会参加の教諭に 宮城県教委...
 
 その高校の先生は「ブラックバイト」や安全保障法制、生徒会活動などをテーマにした県内での集会に参加したのだそうで、教委の担当者さんが学校を訪れ、その先生に「どんなことを話すのか」などと尋ね、政権批判の発言を慎むよう求めたようです。
 憲法は、19条で国民の「思想・良心の自由」を保障し、21条で国民の「表現の自由」を保障しています。ご存じのとおり。
 どんな思想を抱くことも自由だし、言いたい時に言いたいことを言う自由があります(ただしヘイトスピーチのような人の尊厳を傷つけるようなものは別ですが)。
 公権力が、国民のこういう自由を制限することは絶対に許されないことです。なぜって、言いたいことを言えないようでは「その人らしい」人生は歩めるはずもなく、また自由な議論ができなくなることで民主主義もマヒしてしまうからです。
 
 なのに今回、教委(権力)は、「政権批判はダメ」と、先生に圧力をかけました。
 授業で生徒に極端な思想を教え込んだわけでもなく、集会に参加するというだけなのに。
 なんの集会に出ようがそれは先生個人の自由です。
 教委は「教育公務員としての政治的中立性が保たれるべきだと考えた」と弁解していますが、「教師として現場でどのような教育を実践するか」と「個人としてどのような考えを持って発信するか」はまったく別問題です。
 政権批判はダメ…そうですか、では、政権擁護発言ならいいのですか? と勘ぐりたくなりもします。
 政治色を一切封じ込めることで『政治的中立性』が実現すると考えるのは悪しき中立病患者さんの典型的な症状です。
 どんな政治色を持っていてもいいんだよ、とあらゆる政治色を認めることこそ、民主主義国家における「中立」は保たれるのだと思います。
 宮城県教委の、先生への「注意」は、憲法に違反する許されないものです。
 
 これとは別ですが、与党に、学校の先生の政治参加をどんどん禁止しよう、という動きがあります。選挙前にぜひ知っておいていただきたいことです。
 選挙権が18歳から付与されるようになります。
 投票ってどんなものかな、政治のどんなことに注目すればいいのかな、と,当然のことですが高校生の政治への関心は高まっています。
 そんな高校生たちから、「先生、今の政権ってぶっちゃけどうなの?」と質問されたら、教師はどう答えたら良いというのでしょう?
 教委は「中立性が大事だから、教師はそういう質問には答えてはいけない」、とでも言うのでしょうか?
 「それは政治的な話だから先生にはなんとも言えません。中立性が大事だからね。でも君たちには選挙権があるから、よく考えるように。」
 生徒がせっかく政治や社会に関心を向けているのに、「どっちつかずの当たり障りのないこと」だけ述べて逃げるのが「教育者としてあるべき態度」なのでしょうか?
 
 「いろいろな意見があるけれど、先生自はこう思うよ。なぜかというとね…」
と、教師自らの考えを、さまざまな材料と共に発信することが、生徒たちにとって一番いいことなのではないでしょうか。
 そっかー、政治っていろいろな考えがぶつかり合ってるんだ。
 そっかー、先生も一人の人間として、いろいろなことを見て聞いて、こうやって結論に至ってるんだ。
 そっかー、じゃあ他の大人はまた別の考えかもしれない。別の新聞にはちがうことが書いてあるかもしれない。
 先生の態度から、生徒たちは「政治参加」についてたくさんの大切なことをくみ取ります。
 
 それができなければ、自由に発信し、自由に考え、自由に議論を深め合うという土壌はできません。
 与党は、何をおそれているのでしょう?
 何をいやがっているのでしょう?
 日本を成熟した民主主義国家にしたいのであれば、18歳を一人前の主権者として扱いたいのであれば、教師の政治活動を禁止などという考えは生まれるはずがないのに。
 そんな息苦しい(生き苦しい)国になっていいのか、ぜひ、選挙の前に、考えてみて下さい。