2017年8月11日金曜日

11- 安倍暴走政治の破綻が次々と明らかに

 安倍政権は内閣改造で支持率の低下が一旦止まったかに見えますが、先の見通しは決して明るくはありません。「安倍一強」という聞きなれた言葉はもはやメディアからはすっかり影をひそめ、小沢一郎氏などは安倍政権は「年内持たない」と公言しています。

 五十嵐仁氏が、安倍暴走政治の破綻が次々と明らかになってきているとして、5つの観点から論じていますので紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次々と明らかになってきたアベ暴走政治の破綻
五十嵐仁の転成仁語 2017年8月10日
 鳴り物入りの内閣改造によって選挙での敗北と支持率の低下という「負のスパイラル」からの脱出を図った安倍首相でした。しかし、それは成功せず、アベ暴走政治の破綻が次々と明らかになってきています。

 その第1は、非核政策の行き詰まりです。6日に広島で、9日に長崎で開かれた原爆犠牲者を追悼する平和式典に参加した安倍首相は7月に国連で採択された核兵器禁止条約について全く言及せず、「どこの国の総理か」と被爆者から鋭く批判されました
 長崎での式典で平和宣言を読み上げた田上市長は「核兵器のない世界を目指してリーダーシップをとり、核兵器を持つ国々と持たない国々の橋渡し役を務めると明言しているにも関わらず、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できません。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への一日も早い参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直しを進めてください。日本の参加を国際社会は待っています。また、二度と戦争をしてはならないと固く決意した日本国憲法の平和の理念と非核三原則の厳守を世界に発信し、核兵器のない世界に向けて前進する具体的方策の一つとして、今こそ「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討を求めます」と日本政府に訴えました。この式典に参加していた国連等国際機関、58の国や地域と欧州連合(EU)等の代表もこの訴えを聞いたはずです。
 唯一の戦争被爆国の政府であるにもかかわらず核兵器の禁止を求める国際社会の大きな波に背を向けて「ゼロ回答」を続ける安倍首相の姿こそ、日本のトップリーダーとしての資格の欠如を明確に示しています。非核の政府を実現するためには、安倍首相を交代させるしかありません

 第2に、日本周辺の安全保障環境の悪化です。北朝鮮のミサイル発射実験をめぐって国連はかつてない厳しい制裁決議を挙げ、アメリカと北朝鮮は激しく挑発しあっています。
 トランプ大統領は「世界がこれまで見たことのないような砲火と激烈な怒りに直面することになるだろう」と強く警告し、北朝鮮は「米国に厳重な警告を送るため、中長距離弾道ミサイル『火星12』によるグアム島周辺の包囲射撃作戦を慎重に検討している」という声明を出すなど朝鮮半島情勢は緊迫の度を増し、航空自衛隊のスクランブルの回数は過去最多になっています。戦争が始まるのではないか、それに巻き込まれるのではないかという国民の不安が高まっているのも当然です。
 しかし、安保法が審議されているときに安倍首相は、この法律が制定されて日米同盟の絆が強まり「抑止力」が高まれば日本周辺の安全保障環境は改善されると請合っていました。安保法の成立によって実際に強化されたのは「抑止力」ではなく軍事的挑発であり、北朝鮮とアメリカなどの軍拡競争に日本が巻き込まれてしまったというのが現実です。

 第3には、「森友」「加計」学園疑惑の深まりと「佐川隠し」です。閉会中審査の後も、疑惑を裏付ける新たな事実が次々と明らかになっています。
 「森友」学園疑惑では、値引きの根拠とされたゴミは100分の1しか存在しなかったこと、最初から金額を提示しての交渉だったこと、異例の10年分割が提案されていたことなどを裏付ける音声や文書資料が出てきています。「加計」学園疑惑では、愛媛県と今治市の担当者が2015年4月2日に首相官邸を訪れた際に加計学園事務局長が同行していたこと、官邸で対応したのが当時の柳瀬唯夫・首相秘書官(現・経済産業審議官)だったこと、このとき下村文科相がやってきて「やあ加計さん。しっかりやってくれよ」と激励されたという証言があること、2016年6月に開かれた国家戦略特区諮問会議にも加計学園側の幹部3人が出席していたにもかかわらず伏せられており、議事要旨も改ざんされていたことなどが分かりました。
 「森友」疑惑を隠蔽する先頭に立っていた佐川理財局長は国税局長官になりましたが、慣例となっている就任会見を取りやめました。「森友」疑惑について質問が集中することを恐れての措置だとみらており、説明や言い訳ができないから逃げ隠れしているということでしょう。

 第4に、南スーダン日報問題と「稲田隠し」です。この問題では本日閉会中審査が開かれていますが、稲田朋美前防衛相などの当事者は参加していません。
 行政文書の扱いや公文書管理のずさんさ、自衛隊に対するシビリアンコントロールという点でも大きな問題がありますが、それ以上に「戦闘」と書かれた日報が意識的に隠されたのではないかという疑惑があります。陸自などの現場が勝手にやったのではなく、稲田防衛相やさらにその上の安倍首相からの指示によるものではなかったのかという疑惑が生じていますが、当人が出てこないのでは、どれだけ解明されるか大いに疑問です。
 日報に対する情報開示請求が出されたのは安保法によるPKOへの新任務付与が問題になっており南スーダンでの安全性に疑問が出されているときでした。そんなときに「戦闘」と書かれた日報を開示するわけにはいかないということで廃棄したことにして廃棄し、事実を隠蔽したということではないでしょうか。

 第5に、内閣改造の不発と新たな「火種」の発生です。安倍首相の目論み通り、改造後の内閣支持率は軒並みアップしましたが、それは期待されたほどではなく、それどころか前途を懸念させるに十分な不安材料がてんこ盛りとなっています。
 改造による支持率アップは野田聖子総務相と河野太郎外相という「異分子」の入閣が評価されたためですが、これも新たな「火種」となる可能性があります。「異分子」が安倍首相に従えば国民は失望し、もし従わなければ閣内不一致となるかもしれないからです。
 早くも、江崎鉄磨沖縄北方相の失言が飛び出してマスコミの注目を浴び、週刊誌などでも閣僚のスキャンダルなどが報道され始めています。今後、これらの「火種」が大きな「火災」を引き起こす可能性も小さくありません。

 日本ファーストの会の発足と民進党の代表選など、自民党に対抗する新たな動きも生じています。それについて判断し評価を下すのは早計ですが、いずれも「受け皿」づくりの試みであるという点では共通しています。
 どの程度自民党に対抗することになるかは今のところ不明ですが、少なくともアベ暴走政治を支えてきた「一強」体制を崩すものでなければなりません。そうでなければ、結局は国民の期待を裏切ることになってしまうでしょうから。