アメリカのマティス国防長官とティラーソン国務長官は、14日付けの「ウォール・ストリート・ジャーナル」に連名で寄稿し、「アメリカは北朝鮮の政権転覆には関心がなく、北朝鮮と交渉するのをいとわない」としたうえで、「北朝鮮が核実験やミサイル発射などの挑発行為を直ちに停止すれば、北朝鮮と交渉する用意がある」と明らかにしました。
トランプ大統領の放言とは別にティラーソン米国務長官は1日にも、「われわれは北朝鮮の敵ではない」と述べ、体制転換は求めないことを明らかにし、対話の席に着くよう北朝鮮に呼び掛けています。
そして米下院の民主党議員64人は10日、同長官に宛てた書簡で、「北朝鮮との直接対話を求める最近の発言を強く支持する」と表明し、「北朝鮮問題に軍事的な解決策はない」と述べています。
ドイツのメルケル首相も11日の記者会見で、「この紛争に軍事的な解決はない」と強調し、武力行使に反対する考えを示しました。
このように海外では米朝に話し合いで解決をすることを望む真剣な動きがあるのですが、ひとり日本だけは「北がミサイルを発射すれば日本は米側について参戦する可能性がある」などという的外れな発言をし、幼稚で好戦的な性格を露呈させました。
それだけではなく政権はこれを好機とばかりに迎撃ミサイルシステムの拡充を目指しています。売る側としてはこれほど上手い商売はありませんが、一体どれほどの効果があるというのでしょうか。
「PAC-3」(やTHAAD)の前身のパトリオットミサイルはかつて湾岸戦争の時にイスラエルに設置されましたが、イラクから飛来するスカッドミサイルを殆ど迎撃できなかったと言われています。
「PAC-3」(やTHAAD)の前身のパトリオットミサイルはかつて湾岸戦争の時にイスラエルに設置されましたが、イラクから飛来するスカッドミサイルを殆ど迎撃できなかったと言われています。
如何にレーダー機能を充実させ高性能のコンピュータを備えたとしても、最終的には「弾丸を弾丸で撃ち落とす」よりもさらに上回る精度が要求されます。
テレビに登場する解説者は命中精度は80%とか90%などと述べますが、超々音速(ミサイルの巡航速度は7・9km/秒)で飛来するミサイルの弾頭(小サイズ)に、側方向乃至斜め前方から迎撃ミサイルを衝突させるには、少なくとも数十km先の衝突予定点に軌道的には数十センチ以内の誤差と、到達時刻に関しては1万分の1秒以内の遅速誤差に収める必要があります。
アメリカといえどもそんな技術を持っているとはとても思えません。莫大な国費を投ずるまえに性能を十分に確認すべきです。
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米2長官「北朝鮮挑発やめれば交渉の用意」新聞に寄稿
NHK NEWS WEB 2017年8月15日
アメリカのマティス国防長官とティラーソン国務長官は、アメリカの新聞に寄稿し、トランプ政権への威嚇を続ける北朝鮮に対して、核実験やミサイル発射などの挑発行為を直ちに停止すれば、交渉する用意があると明らかにし、挑発行為をやめるよう改めて求めました。
アメリカのマティス国防長官とティラーソン国務長官は、14日付けのアメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」に連名で北朝鮮について寄稿しました。
この中で両長官は、弾道ミサイルのさらなる発射の構えを示すなど、アメリカへの威嚇を続けている北朝鮮に対して「いかなる攻撃も打ち負かされ、いかなる核兵器の使用も効果的で圧倒的な報復攻撃に遭うだろう」と警告しました。
その一方で両長官は、朝鮮半島の非核化のためにアメリカは国際社会と連携して経済制裁や外交による「平和的な圧力」の取り組みを展開していると説明し、北朝鮮の政権転覆には関心がないと指摘しました。そして「アメリカは北朝鮮と交渉するのをいとわない」としたうえで、北朝鮮が核実験やミサイル発射などの挑発行為を直ちに停止すれば、北朝鮮と交渉する用意があると明らかにしました。
北朝鮮が、グアム島周辺に向けた弾道ミサイルの発射計画を検討していると発表する中、トランプ政権としては、最大限の圧力を加える一方、対話も排除しないという方針を改めて示すことで北朝鮮に選択を迫った形です。
15日午前に日米首脳電話会談へ
(中 略)
米ペンス副大統領「あらゆる選択肢を検討中」
(後 略)
北朝鮮と直接対話を
トランプ政権に米議員・元高官ら “カギは前提条件なくすこと”
しんぶん赤旗 2017年8月14日
北朝鮮の核兵器・ミサイル開発をめぐって米国と北朝鮮の緊張が高まっていることに関し、米国の連邦議員や元政府高官などからは、危機打開のために前提条件なしで直接対話に踏み出すようトランプ政権に求める声が相次いでいます。
ティラーソン米国務長官は1日、「われわれは北朝鮮の敵ではない」と述べ、体制転換は求めないことを明らかにし、対話の席に着くよう北朝鮮に呼び掛けました。
「軍事解決ない」
米下院の民主党議員64人は10日、ティラーソン氏に宛てた書簡で、この発言を歓迎し、「北朝鮮との直接対話を求める最近の発言を強く支持する」と表明しました。トランプ大統領と政権幹部が「最大限の注意と抑制を持って発言し、行動する重要性」を強調し、北朝鮮問題をめぐっては「簡単に言えば、この問題に軍事的な解決策はない」と指摘しています。
米国務省の元高官で、1994年の米朝枠組み合意の際に重要な役割を果たしたジョエル・ウィット氏は10日、米テレビで、北朝鮮に対してとるべき選択肢として直接対話を提案しました。
同氏は「米国と北朝鮮の直接対話を実現するための外交手段はまだ十分に真剣に追求しきっていないと思う。北朝鮮側と行った私自身の対話経験に基づけば、彼らはある一定の条件のもとでは直接対話を行う準備がある」と述べました。達成する必要がある条件の一つは、「あらゆる前提条件をなくすこと」だと述べました。
米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』(電子版)は11日、「緊急の必要性 ワシントンと平壌の直接対話」と題する記事を掲載しました。
記事は、トランプ政権が北朝鮮に対する明確な戦略を持っていないと批判し、「依拠すべきアプローチは、あらゆる前提条件を排して、北朝鮮と直接交渉に入ることだ」と指摘しました。6月21日には北朝鮮の駐インド大使がテレビ・インタビューで、核実験とミサイル発射の凍結をめぐって米国との直接交渉に臨む準備ができていると発言したことに触れ、「これは対話のためのまれに見る機会だ。もし米国がこれを逃すと、核武装した北朝鮮という現実はますます後戻りしないものになる」としています。
「共存する方法」
記事はまた「直接対話は北朝鮮の危機を魔法のように解決することはないだろう。それでも、それは米朝両国に、意思疎通し、激化や誤解を防ぎ、しばらくは共存する方法を与えることになるだろう」と強調しました。
6月28日にはペリー元米国防長官ら6人がトランプ大統領に連名書簡を送り、北朝鮮との協議開始を要求。対話こそが「北朝鮮の核開発や核兵器の使用を阻止する唯一の現実的な選択肢だ」と訴えました。書簡は、より公式な交渉の選択肢を探る目的を持って、「前提条件なしの非公式な2国間交渉」を始めるべきだとしています。
米朝戦端開けば日本の被害甚大 軍事あおらず対話促進を
しんぶん赤旗 2017年8月14日
米国と北朝鮮が軍事衝突にいたり大規模な戦争に発展すれば、日本は弾道ミサイルの標的となり甚大な被害を受ける―。少なくない専門家は共通してこう指摘しています。だからこそ、米国の軍事的対応をあおるのではなく、対話による解決を促す以外に道はありません。(竹下岳)
米軍基地が標的
北朝鮮が米領グアムを攻撃した場合、米国が直ちに反撃するのは確実です。その役割を最初に担う可能性が高いのが在日米軍です。
1950年6月に始まった朝鮮戦争では、日本全土が米軍の兵たん・出撃拠点となりました。今なお国内には「国連軍」基地が7カ所(横田、座間、横須賀、佐世保、嘉手納、普天間、ホワイトビーチ)存在しています。休戦している朝鮮戦争が再開されれば、これらの基地が米本土から増派される部隊の拠点になります。
さらに、岩国や三沢の航空部隊も北朝鮮への攻撃態勢を保っています。加えて、日本海に面した車力(青森県つがる市)や京都府京丹後市に朝鮮半島をにらんだレーダー基地が設置されるなど、全土で朝鮮有事に即応できる態勢が維持・強化されています。
北朝鮮がこれらの基地や周辺地域を報復の対象として選ぶ可能性は高い。実際、北朝鮮は3月に日本海に弾道ミサイル4発を同時に発射した際、在日米軍基地の攻撃任務を持った部隊が担当したとしています。
危険な拡大解釈
自衛隊が参戦した場合、自衛隊基地も報復対象になることは言うまでもありません。小野寺五典防衛相は10日の衆院安保委員会で、北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過してグアムを攻撃する場合も「存立危機事態」に該当し、安保法制=戦争法を発動して集団的自衛権を行使し、米軍の武力行使に参戦する可能性に言及しました。
弾道ミサイルが日本の上空を通過するだけなら安保法制の発動要件にならないというのが、従来の政府見解です。小野寺氏の答弁は明らかに拡大解釈であり、日本を戦禍に巻き込む危険な考えです。
迎撃極めて困難
日本政府は北朝鮮の弾道ミサイルに備え、「ミサイル防衛」態勢をとっています。
防衛省は12日、上空通過が予告された島根、広島、愛媛、高知各県の駐屯地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を搬入しました。万が一、日本に落下する場合に備えてのものです。
そのような「事故」ではなく、日本を標的にしたミサイル攻撃の場合、射程範囲も高度も限られているPAC3では迎撃は困難とみられています。
「ミサイル防衛」網や有事法制を担った元政府高官は「ミサイルを撃ち漏らさないことは不可能。国民にある程度の犠牲を覚悟してもらうか、撃たせないための外交努力のどちらかだ」と指摘します。
現実問題として、米朝の軍事力の差は歴然としています。しかし、北朝鮮が制圧されるまでの間に、日本を含む周辺国で大量の血が流れることになります。
17日には日米の外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)が開催され、北朝鮮問題が最重要議題とされます。日本政府は軍事的圧力一辺倒ではなく、米朝の直接対話の実現、6カ国協議の再開など外交努力の強化を訴えるべきです。