2017年8月9日水曜日

日本ファーストが発足 早期の解散説も

 永田町では、内閣改造のご祝儀相場で支持率が一定の回復を見せたのを契機に、にわかに「早期解散説」が駆け巡っているということです。
 それは「“ご祝儀相場” で微増した支持率も今回が最高値で、この先は上がる見通しはない」、「公明党も早期解散には賛成」、「民進党は分裂含みの迷走中」、「選挙で議席を減らしても公明党、維新の会、それに民進党内の改憲派を合わせれば改憲勢力は確保できる」からで、このままずるずると解散を引き延ばして年を越せば、安倍政権は「追い込まれ解散」になってしまうためです。

 そんな中7日、若狭勝衆院議員が国会内で記者会見し、政治団体「日本ファーストの会」を7月13日付で設立したと発表しました。こうなることは都議選で都民ファーストの会が大勝した時から予想されていましたが、設立してから随分経ってから発表されたのは、閉会中審査や内閣改造の話題が一段落しニュースバリューが高まるタイミングを狙っていたからと言われています。
 会の代表は若狭氏で、背後には当然小池氏がいますが、彼女は(東京オリンピックが済むまでは都知事の仕事に専念し)国政は若狭氏に任せると述べています
 団体の設立が予想よりも早まったのは、10月22日に予定されている愛媛県第3区青森県第4区衆院補欠選挙に合わ、衆院の解散総選挙を行う可能性が高いと見ているためです。

 肝心の政策については若狭氏は会見で、「軸となる政策は特にない。(会の掲げる政策は)優秀な人材が政治塾(輝照塾)に入って多様な考えで収斂していく」と述べました。何とも不可解な説明ですが、これまで小池氏は都議選でも「反自民党」は謳っていないので、自民党系であると見られます。民進党を離党した右派議員などが参加すると見られ、これも右派の前原氏が多大な関心を示しているのも、その辺の事情を示すものです。

 ところで早ければ9月に召集される臨時国会の冒頭解散もあると言われている中で、小池氏と若狭氏は、自民党内でくすぶっている反主流派や、安倍政権が続くかぎり活躍の場が回ってこないような議員を中心に現職議員の引き抜きにかかっているということです。その場合『安倍首相に反目するわけではない』、『自民党と方向性は同じ』謳っているほうが引き抜き作業がしやすくなります。
 自民党のあるベテラン議員は「20人は離党者が出るだろう。小池知事の仕掛け次第ではもっと増える」と見ています。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「都議選での得票数を当てはめれば、国政選挙でも小池新党は東京で20議席は取る。全国展開なら50人は当選する。最も割を食うのが自民党」と見ています。骨肉の争い?というわけです。いずれにしても「日本ファーストの会」が今後台風の目になるのは間違いありません。
 日刊ゲンダイの2本の記事を紹介します。
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日本ファーストの会設立 小池新党に自民離党組20人合流も
日刊ゲンダイ 2017年8月8日
 安倍政権は戦々恐々だろう。7日、若狭勝衆院議員が国会内で記者会見し、政治団体「日本ファーストの会」を7月13日付で設立したと発表した。代表は若狭氏で、国政選挙に立候補する人材を発掘するための政治塾「輝照塾」も開校する。9月16日の初回講師は小池都知事が務めるという。
 この件についてメディアの取材に応じた小池知事は、「国政は若狭さんにお任せしている。改革の志を共有するもので、国政において大いに活躍されることを心から願っています」などと白々しいエールを送ってみせたが、若狭氏とは一心同体。小池知事が率いる「都民ファーストの会」が国政進出する布石なのは明らかだ。
 小池知事が年内に国政政党を立ち上げることは確実視されていたが、予想されていた年末から大幅に前倒ししてきた印象。小池知事本人は解散総選挙は近いとみているらしい。

 実際、内閣改造で支持率が30%台を回復し、早ければ9月に召集される臨時国会の冒頭解散もあり得る。問題は、それまでに小池新党がマトモな候補者を集められるかどうかだが、実は、すでに自民党内に手を突っ込んでいるという。自民党関係者が言う。
「新人と民進党からの離党組ばかりでは、寄せ集めの烏合の衆になってしまい、有権者の支持を得られないと考えているようで、小池氏と若狭氏は自民党の現職を引き抜きにかかっている。都議選前から、党内でくすぶっている反主流派や、安倍政権が続くかぎり活躍の場が回ってこないような議員を中心に口説いていたようです。『安倍首相に反目するわけではない』『自民党と方向性は同じ』などと言われれば、離党に対する心理的なハードルは下がる。都議選での圧勝ぶりを見せつけられ、わが党の凋落をヒシヒシと感じる現状ではなおさらです。ただ、『日本ファースト』という名称は国粋主義的でいただけないですよね。トランプ大統領の『アメリカ・ファースト』に倣ったんですかね。『国民ファースト』の方がよかったんじゃないのかな」

■東京だけで20議席、全国で50議席は確実
 いまは逡巡していても、いざ選挙が目の前に迫れば、当選可能性が高い方へと流れるのが政治家のサガというもの。解散風が強まれば、自民党から雪崩を打って日本ファーストに移籍する可能性がある。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「都議選での得票数を当てはめれば、国政選挙でも小池新党は東京で20議席は取る。全国展開なら50人は当選するでしょう。最も割を食うのが自民党です。小池新党が政権批判の受け皿になり、さらには自民党支持層まで持っていかれたらたまらないと、選挙巧者の小池知事を警戒する声が上がっている。小池知事自身が立候補することはないでしょうが、総選挙になれば代表に就任するのは間違いありません。その場合、共同代表に自民党の大物議員を置くことを考えていると思います。橋下徹氏と石原慎太郎氏が率いて、12年の総選挙で躍進した日本維新の会のような形です。あの時の関西地域のように、小池新党から出れば確実に当選という状況なら、自民党からの離党は数人では済まないでしょう」

 自民党から何人引き剥がせるか、大物議員を一本釣りできるか。そこに新党の成否がかかっているが、自民党のベテラン議員は「20人は離党者が出るだろう。小池知事の仕掛け次第では、もっと増える」とみる。政権へのダメージは計り知れない。


タブー破れば月内にも 高まる「早期解散説」根拠の数々
日刊ゲンダイ 2017年8月8日
「やるなら今しかない」――。先週末から永田町で「早期解散説」が駆け巡っている。

 きっかけは、内閣改造の効果でつるべ落としだった支持率が回復したこと。依然、不支持が支持を上回る状況とはいえ、30%以下の危険水域から底を打った影響は大きく、「首相が抜き打ち解散に打って出るかもしれない」と与野党問わず政界関係者をザワつかせているのだ。

「恐らく内閣支持率は改造人事の“ご祝儀相場”で微増した今回が最高値。この先、ずるずると解散を先延ばししても、首相が安倍さんでいる限り、上がり目なし。新閣僚の不祥事が飛び出せば、もう目も当てられない。どんどんと支持率を下げる前に、早めに解散を仕掛けた方がいい」(自民党関係者)
 安倍首相がテレビ局をハシゴし、2019年10月予定の消費税アップについて「予定通り行っていく考えだ」と明言。この行動も「2014年の総選挙直前も首相は消費税を『上げる、上げる』と繰り返した後、いきなり『延期する』と反故にして、解散の口実にした。今回もそのパターンか」(政界関係者)という解説が流れている。
 公明党も早期解散には賛成のようだ。山口代表は先月末に「解散がいつあってもおかしくない」と言及。解散を先延ばしすれば、都議選でタッグを組んだ小池都知事の「都民ファーストの会」がいずれ国政に進出する可能性が出てくる。「自民につくのか、都民ファにつくのか、と踏み絵を踏まされる前に、サッサと解散してくれた方がありがたい」(公明党関係者)というわけだ。

 何より、民進党の迷走ぶりがあまりにもヒドイ。蓮舫代表の辞任に始まり、新代表候補も新鮮味ゼロ。今年4月まで党幹部だった細野豪志衆院議員が離党と、もうバラバラ。有権者の5割近くに上る政権不支持層の受け皿になるどころか、不毛な足の引っ張り合いを続け、党分裂の可能性が日増しに高まるありさまだ。
 これでは安倍首相じゃなくとも、「野党間の選挙協力が進んでいないうちに」と解散権を行使したくなってしまう。

「野党第1党の政党支持率が2ケタに及ばない状況ですから、自民党の議席減も最小限にとどめることができる。今、総選挙となれば、受け皿のない政権不支持層は『棄権票』となって宙をさまよい、歴史的な低投票率を招きそうです。その場合も組織票が幅を利かせ、自民党が得する結果となる。解散に打って出るには今が絶好のタイミングです」(政治評論家・山口朝雄氏)

 衆院の自民党は現有290議席。次回選挙は区割りの見直しで小選挙区の定数は6減、比例の定数も4減する。よって安倍首相の悲願である改憲発議に必要な「3分の2」は310議席となる。
「自民が20議席ほど減らしても、公明と維新の議席を足せば3分の2に迫る可能性はあり得るし、それでも足りなければ民進党内の改憲派を切り崩せばいい。民進党内が分裂含みだけに、なおさらです」(山口氏)

 唐突な改憲方針に加え、加計・森友両学園の疑惑や南スーダンPKOの日報隠蔽など、安倍首相が国民に信を問う口実は山ほどある。支持率急落を招いた諸問題も、選挙に勝てばチャラとなりかねない。
 民進党の代表選は9月1日。国政政党の代表選びの最中に、解散を仕掛けるのは禁じ手だが、あくまで政界の不文律に過ぎない。これまでも安倍首相は散々タブーを破ってきただけに、野党の選対幹部は「日報問題をめぐる閉会中審査を行う8月10日以降は、いつ解散があってもおかしくない」と警戒を強めている。