2017年8月25日金曜日

得意?なはずの北朝鮮問題が安倍首相の命取りになる可能性

 ジャーナリストの高野孟氏が日刊ゲンダイの連載記事「永田町の裏を読む」で、「・・・北朝鮮問題が安倍首相の命取りになる可能性」とする記事を載せました。

 米・朝間の緊張問題で我々が知るべきことは、トップ同士の派手な応酬の裏で米・朝はチャンとした「水面下での接触=秘密交渉」のルートを持っていて、深刻な事態にはならないという「実質的な合意」があるらしいということです。
 そうした「表面上の応酬」とは一線を隔す「本音の交渉ルート」を別に確保しているというのが、一人前の国家同士のあるべき姿なのでしょう。

 安倍首相は北朝鮮が核実験を行ったりミサイルの発射実験を行うたびごとに、世界に先駆けて過激な文言で北朝鮮を非難しますが、彼の場合はただそれだけで、多数の拉致被害者家族を擁する国家でありながら、首相に就任して以来ただの一度も北朝鮮との間で実のある交渉などしていません。
 「自分が拉致問題を解決する」と語った大口は一体どうなったのでしょうか。ただ恰好をつけるだけで拉致問題を解決しようとする気持ちなど全くないことに、拉致被害者を抱える家族の落胆と心痛が思いやられます。彼らもまた、絶対に口にはしないものの安倍首相の一刻も早い退陣を望んでいる筈です。

 高野氏の記事を読むと、この度の米・朝間の危機問題でもただ表面的な情報に流されて「跳ね上がっている」安倍首相の姿が分かり、浅ましい思いが募ります。
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   永田町の裏を読む
得意なはずの北朝鮮問題が安倍首相の命取りになる可能性
高野孟 日刊ゲンダイ 2017年8月24日
 米韓軍事演習が予定通り始まって、これに北朝鮮がどういう反応を見せるか、片時も目が離せない緊迫が続いている。が、旧知の米外交専門家によると、「それは表面だけで、米朝双方とも軍事衝突を回避することで基本的な認識は一致している。そればかりか、水面下での接触を通じて、軍事演習の内容やプレス発表の仕方などについて米韓側が一定の抑制をすれば、北もいきなりミサイルをぶっ放したりしないということで、すり合わせが行われているという。危機には至らないだろう」と言う。
 もちろん経済制裁は続けるし、軍事圧力も緩めるわけにはいかないけれども、それで不測の戦闘に転がり込まないために双方とも細心の注意を払っているということだ。それで“落としどころ”はどうなるのか。
「それは最初から見えていて、北が核・ミサイル開発を凍結することを条件に、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に置き換える交渉を開始し、追っかけて米朝国交交渉も開始することだ。朝鮮戦争が公式に終了すれば、北が核武装しなければならない理由が消滅する」

 さらに米専門家は言葉を継いだ。
「時間はかかっても、米国はそういう方向に動く。そうなると一番困るのは日本の安倍晋三首相だろう。彼の発想はいまだに、米国を盟主に日本と韓国が左右を固めて軍事・経済圧力を強めれば北は屈服するだろうという、冷戦時代の反共軍事同盟スタイルだ。それだと“落としどころ”がない。ある日突然、米朝が交渉に入って、呆然と立ち尽くすということにならないか」と。
 得意なはずの北朝鮮問題が安倍の命取りになる可能性があるということである。

 しかし、トランプ大統領は「怒りと炎」とわめいているし、米軍トップも軍事行使の可能性を否定していないではないか。
「軍幹部が軍事力の発動を否定するわけがないから、そう言い続けるのは当然だ。しかし、93年にクリントン政権が北の核施設破壊作戦を検討した時は、北の報復能力をすべて封じることは不可能なので、『大規模戦闘が3カ月に及び、死傷者が米軍5万人、韓国軍50万人、韓国民間人の死者100万人以上』との予測が出て、軍部が反対した。それから24年経って、今の北は、最大で60発の核弾頭と短中長のミサイルを山ほど持っているんだぜ。北だけでなく、韓国も日本も全滅する。北の問題の『軍事的解決』なんてあり得ないんだ」と米専門家は断言する

  高野孟  ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。