2017年8月16日水曜日

首相、5年連続「加害」に触れず 天皇陛下と対照的

 戦後72年を迎えた15「全国戦没者追悼式」政府主催)で、天皇陛下は今年もここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことをせつに願い」と「お言葉」を述べられました。戦後70年を迎えた2015年から毎回「深い反省」という表現を使っておられます
 歴代首相は式辞で「多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」と加害と反省の意を示してきました
 しかし安倍首相は第2次政権の発足後から5年続けて、先の大戦での諸外国に対する「加害と反省」の言葉を盛り込んでいません。
 安倍首相は「戦後、わが国は一貫して戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに歩んでまいりました。・・・どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります」と述べました。是非「有言実行」してほしいものです。
 東京新聞とNHKの記事を紹介します。
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重み増す平和の誓い 戦没者追悼式 加害責任、首相また言及なし
東京新聞 2017年8月15日
 終戦から七十二年を迎えた十五日、政府主催の「全国戦没者追悼式」が日本武道館(東京都千代田区)で開かれ、全国から集まった約五千人の戦没者遺族らが、先の大戦で犠牲になった約三百十万人を悼み、平和への誓いを新たにした。安倍晋三首相は式辞で「戦争の惨禍を、二度と繰り返してはならない」と述べたものの、歴代首相が盛り込んできたアジアへの「加害と反省」には五年連続で触れなかった。
 天皇陛下は皇后さまと共に参列、お言葉で「深い反省」という表現を三年連続で使い、不戦への強い思いを述べられた。退位を実現する退位特例法が六月に成立し、節目の参列となった。
 安倍政権が九条改憲を視野に入れ、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験も相次ぐなど、平和のあり方が問われる中での慰霊の日。式典には、衆参両院議長や最高裁判所長官ら各界の代表が参列した。正午の時報に合わせ、全員が一分間の黙とうをささげた。
 安倍首相は「戦後、わが国は一貫して戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに歩んでまいりました」とした上で、「歴史と謙虚に向き合いながら、どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります」と述べた。
 天皇陛下は「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」と述べた。
 遺族代表の渡辺一(はじめ)さん(83)=福岡県豊前市=は追悼の辞で「私たち遺族は、先の大戦から学んだ戦争の悲惨さと平和の尊さを次の世代にしっかりと伝え、二度と戦争をしない日本と国際社会の建設に向かってまい進していく」と誓った。
 厚生労働省によると、参列遺族の最年長者は、夫が一九四五年六月に沖縄で戦死した東京都練馬区の芹ケ野春海(せりがのはるみ)さん(百一)。最年少者は、曽祖父が沖縄で戦死した宮城翔龍(しょうりゅう)君(6つ)だった。
 追悼の対象は、戦死した軍人・軍属約二百三十万人と、空襲や広島・長崎の原爆投下、沖縄戦で亡くなった民間人約八十万人の計約三百十万人。
終戦から72年 全国戦没者追悼式
NHK NEWS WEB 2017年8月15日
終戦から72年を迎えた15日、およそ310万人の戦没者を慰霊する政府主催の全国戦没者追悼式が東京の日本武道館で行われました。
式典には全国から遺族の代表など、およそ6400人が参列しました。
天皇皇后両陛下が菊の花で飾られた式壇に着かれたあと、安倍総理大臣が「戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない。戦後、わが国は一貫して戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに歩み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきました。私たちは歴史と謙虚に向き合いながら、どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります。争いの温床ともなる貧困の問題をはじめ、さまざまな課題に真摯(しんし)に取り組むことにより、世界の平和と繁栄に貢献してまいります」と式辞を述べました。そして、参列者全員で1分間の黙とうをささげました。
続いて、天皇陛下が「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことをせつに願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」とお言葉を述べられました。
このあと、遺族を代表して、昭和20年7月に南太平洋のビスマーク諸島で父親を亡くした福岡県豊前市の渡邊一さん(83)が「母は父の戦死が信じられず、帰還した兵隊さんを訪ね回って父の戦友に会い、やっと納得しました。それからの母の苦労と頑張りは筆舌に尽くせません。私たち遺族は戦争の悲惨さと平和の尊さを次の世代にしっかりと伝え、二度と戦争をしない日本と国際社会の建設にまい進することをお誓い申し上げます」と述べました。
式典ではこのあと、参列者が式壇に菊の花を手向けて、戦争で亡くなったおよそ310万人の霊を慰めました。
遺族の高齢化進む
終戦から72年を迎えて遺族の高齢化が進み、参列した遺族の78%は70歳以上となり、戦没者の妻もこれまでで最も少なく6人となりました。
最年長の参列者で、東京・練馬区に住む101歳の芹ヶ野春海さんは、昭和20年6月に沖縄本島で、結婚してまもない夫の博さん(当時31)を亡くしました。芹ヶ野さんは「夫は1度も怒ったことがない優しい人でした。当時のことはあまり思い出せないが、戦争は嫌なものです」と話していました。
また、去年に続き、ことしもすべての都道府県から18歳未満の若い世代、合わせて123人が式典に参列しています。
参列者で最年少となる6歳の宮崎市に住む田邉彩乃さんは、沖縄戦で曽祖父の田邉章さんを亡くしました。彩乃さんは両親と共に曽祖父の遺影を胸に抱いて式典に参列し、「ひいおじいちゃんに会いたかったです」と話していました。
また、彩乃さんの父親で、章さんの孫の揮一朗さん(46)は「遺族が高齢化する中、戦争のことを語り継いでいかないといけないという思いから、娘と一緒に参列することにしました。戦争では多くの命が失われましたが、命がいちばん大切なので、娘たちにはしっかりと命をつないでいってもらいたいと思います」と話していました。
式典では、このあと、参列者が式壇に菊の花を手向けて、戦争で亡くなったおよそ310万人の霊を慰めます。