2017年8月24日木曜日

民進党は党の分割を協議するべき

 かつての民主党政権の閣僚だった二人が戦う民進党の代表選の投開票があと1週間に迫りました。
 結果によって国民の支持がアップするわけでもない不毛の選挙だと言えばそれまでですが、前原氏の方が議員票ではかなり優位に立っているということです。
 「晴天とら日和」は前原氏の主張を次のように要約しています。
 共産党との連携は解消
   民共のレッテルを貼られ、中間層・無党派らに逃げられるから
 小池新党とは理念共有できれば協力
 消費税は増税する
 堂々と憲法改正の議論に応ずる

 まさに反動を絵に描いたようなものでこれでは自民党と何も変わりません。蓮舫執行部が脱原発推進や共産党との共闘を掲げたことで悪化した連合との関係を修復しようという意図があると見られているので、脱原発の主張がないのは当然です。
 前原氏は、①に加えて「全選挙区に候補者を立てる」と言っていますが、それはこれまで曲りなりに進みつつあった野党共闘を根底から覆そうとするものです。
 それなのに、これまで知性派・良識派と見られていた阿部知子議員、桜井充議員などまでが前原氏の推薦人になっているのは何とも解せません。一体どういう集まりなのかという思いを禁じえません。
 それに前原氏の方針で民進党が国民の支持を回復できるという考え方が何としても理解できません。 前原氏には政治家が持つべきセンスという肝心な点が欠けているのではないでしょうか。

 それに比べれば枝野氏の主張は遥かにまともであり、その彼が議員票で多数派にならないようであれば話になりません。

 植草一秀氏は、両者の考え方は最も重要な基本政策課題である原発・憲法・消費税」で基本的に対立しているので、代表戦を戦うよりも、この相違を軸に、民進党を分党することを協議することが賢明であると述べています。そして前原氏と枝野氏のどちらが勝つにせよ、民進党は代表戦後に分離・分割を実行するべきだとも

 もともと民進党は極右のメンバーと、いわゆるハト派とが混在しているので「政党としての体をなしていない」とされ、ことあるごとに党は解体して出直すべきだと言われ続けてきました。
 もしも議員以外の支持票によって枝野氏が代表の座を獲得すれば、前原氏の一派は早晩離党すると見られていますが、逆に前原氏が勝った場合でも、ハト派のグループはそこに留まるべきではなく党を分割して出直すべきです。

 小池新党と前原氏のグループが合流して「第二自公勢力」を構築しようという構想が論外なものであることは言うまでもありません。

 「植草一秀の知られざる真実」と「五十嵐仁の転成仁語」を紹介します。
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路線対立鮮明 民進党は党分割協議こそ急務
植草一秀の「知られざる真実」 2017年8月23日
民進党の代表戦に出馬した前原誠司氏と枝野幸男氏の主張を見ると、目指す政治の方向がまったく異なっていることが分かる。
最も重要な基本政策課題である 原発・憲法・消費税 について、両者の考え方は基本的に対立している。
前原氏が原発容認、憲法改定推進、消費税増税推進 であるのに対し、枝野氏は原発ゼロ、憲法改定慎重、消費税増税反対 の主張を示している。

これと平仄を合わせるように、次期衆院選に向けての野党勢力の結集についても、まったく異なる主張を示している。
前原氏が小池国政新党との連携を示唆しているのに対して、枝野氏は小池国政新党が自民補完勢力であるとの見立てを示している。
要約して表現すれば、前原氏が小池国政新党と連携してでも、政権交代勢力を構築しようとしているのに対し、枝野氏は安倍自公政権との政策の相違を軸に共産党を含む野党共闘体制を維持して政権交代を目指すとの姿勢を示している。
つまり、同じ政党に属してはいるが、基本政策路線、基本政権樹立の方針がまったく違うのである。
これをひとつの政党のなかで論じることのおかしさ、不自然さに気付くことが賢明な対応である。

小選挙区を軸にする選挙制度の下で政権交代を実現するには、与党勢力に代わる政権を担いうる第二勢力が登場することが必要不可欠である。その第二勢力のあり方について、前原氏が示す考え方と枝野氏が示す考え方がまったく違う。したがって、代表戦を戦うよりも、この相違を軸に、民進党を分党することを協議することが賢明である。民進党の議員がこの議論を推進してゆくべきである。

戦後日本の支配者は米国である。より正確に表現すれば、米国を支配する勢力が日本支配を続けてきた。このなかで、対日政治工作の主翼を担ってきたのがCIAであると考えられる。
この米国の支配者が、日本に自公と第二自公勢力による二大政党体制を構築しようとしている。
彼らは、民進党を第二自公勢力創設の方向に誘導しようとしている。
小池国政新党、渡辺喜美みんなの党勢力、江田憲司ゆい勢力、橋下徹維新勢力、松沢成文氏、細野豪志氏、長島昭久氏、そして、前原誠司氏勢力が合流して、第二自公勢力を創設する方向に事態が誘導されている。

CIA、CSISと連携していると見られる日本経済新聞は民進党代表戦報道を通じて、露骨に第二自公勢力の創設を誘導している。
8月21日朝刊1面トップで 「非自民結集3度目の挑戦」 の見出しで民進党「隠れ自公勢力」と小池国政新党との連携による「第二自公勢力」創設の流れを生み出すことに腐心する姿勢を示す。
8月22日朝刊では、「非自民+α」の表現で同じ流れを誘導しようとしている。
しかし、最大の問題は、日本の主権者の多数が、安倍政治の基本路線に反対しているという現実が見落とされている。見落とされているというよりも、その最重要の事実を隠蔽しようとしているのである。

日本の主権者多数が安倍政治の基本政策に反対している現実が存在する以上、二大勢力の一翼を担う政治勢力は、最終的に必ず安倍政治の対峙勢力にならざるを得ない。
目先のムードに流されることなく、政策を軸に対峙勢力の結集を図らねばならない。

民進党は前原氏と枝野氏のどちらが勝つにせよ、代表戦後に分離・分割を実行するべきだ。
代表戦の論戦で、民進党が水と油の混合物である事実が改めて浮き彫りになった。
この最大の「矛盾」を放置しているから、日本政治が沈滞しているのである。
日本支配勢力にとっては、民進党が分離して、自公と対峙する勢力が結集することが最大の脅威になる。
かつての小沢-鳩山民主党こそ、彼らにとっての最大の脅威であった。この「過ち」を二度と繰り返さぬよう、彼らはあらゆる工作活動を展開してきた。
自公と第二自公による二大政党体制を構築しようとする彼らの誘導工作を打ち破らねばならない。
安倍政治に対峙する本当の意味の「たしかな野党」勢力を結集することを怠らないならば、第二自公勢力の創出は、安倍政治対峙勢力にとって、文字通りの「天佑」になる。
確固たる信念を持って進んでゆきたい。
以下は有料ブログのため非公開

古い民主党の前原さんと新しい民進党の枝野さんの対決となった代表選挙
五十嵐仁の転成仁語 2017年8月23日
   (前 略
 このようななかで、最も大きな違いが示されているのが野党共闘をめぐる姿勢です。前原さんは共闘を「選挙互助会だ」と批判しています。
 「何を、今さら」と言いたくなります。民進党自体がある種の「選挙互助会」ではありませんか。
 これに対して、枝野さんは「参院選で成果を上げることができたのは理念、政策が違うなか、自民党の暴走を止めて欲しいという市民の声を受け、ギリギリの努力をしたからだ」と反論し、「排除する理由はない」と共闘を評価しています。幹事長時代に野党共闘路線を推進した枝野さんからすれば当然の発言ですが、ここでも連合との腐れ縁に引きずられ、この間の共闘の成果をきちんと評価できない前原さんの弱点が示されています。

 なお、理念・政策について枝野さんは「理念、政策が違うなか」と言い、前原さんも「政権選択をする選挙で理念・政策が合わないところと協力するというのはおかしい」と述べています。おかしくありません。おかしいのは、この考え方です。
 違う政党ですから、理念や目標が異なっているのは当然です。これが一致していれば、別の政党である理由はなく、合流すれば良いだけです
 しかし、政策については事情が異なります。別の政党ですから全ての政策が一致することはありませんが、全ての政策が異なっているというわけではなく一致できる点もあります。
 この一致できる政策の実現を目指して協力し、必要であれば政権連合も組むというのが共闘の論理であり、連立政権の姿です。自民党と公明党の連立でも世界のどの国の連立政権でも、このような例は普通に見られます。 
 しかも、共産党を含む立憲野党には、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪などに反対するという明確な一致があり、「森友」「加計」学園疑惑や南スーダンPKOの日報隠蔽問題では疑惑解明という点での合意があり、アベノミクスに反対し「中間層」を大切にする経済政策という点でも共通する立場が形成されました。これらの政策的な一致点や合意、共通の立場があったからこそ共闘が可能になったのであり、それはアベ暴走阻止という一点に集約されたのです。
 まさに、枝野さんが「自民党の暴走を止めて欲しいという市民の声を受け、ギリギリの努力をした」と指摘されている通りです。この「市民の声」こそ共闘や連立の基盤であり、それに応えて勝利へと至ることのできる唯一の道が野党共闘だったのです。

 他方、小池百合子東京都知事の「小池新党(日本ファーストの会)」や離党組との関係では、枝野さんが「厳しく対応しなければならない」と述べているのに対して、前原さんは「総合的に判断する」として連携に含みを残しています。小池新党の理念や政策がどうなるかが、全く分かっていないにもかかわらず。
 これはダブルスタンダードであり、矛盾した対応ではありませんか。政策が部分的に共通している共産党との連携については背を向け、一致点があるかどうかも分からない小池新党との連携には前のめりになっているわけですから

 この点に関連して、本日の『朝日新聞』には細川護熙首相の下記のような興味深いインタビューが掲載されています。「まさにその通り」と言いたくなるような内容です。

 「小池さんは例えば憲法や原発にしても、どの方向を目指しているのか分からない。知事就任後、2人で何度か会った際に『そうしたところをはっきりさせれば、政治的な幅ももっと広がっていく』と伝えたが、小池さんからはまだはっきり聞いていない。
 ――前原さん、枝野さんはどうですか。
 前原さんは小池さんと同様、明確に言っていないところがある。例えば自民党との距離感。『自民党と何が違うんだ』と感じることもあるし、憲法もそう。安倍晋三首相と言っていることは違わないんじゃないかと心配になることもある。野党共闘については、枝野さんの方が現実的に進めるんじゃないか。憲法も、私は枝野さんに考え方が近い。しかし、どちらかに肩入れしているわけではない。
……連立政権ができると政治も変わる。細川内閣の時は8党派で連立を組んだのだから。共産党とも政策的に一致できるところは一緒にやったらいい。同じ小選挙区に民進、共産両党が候補者を立てて、共倒れになるのは愚の骨頂だ。」
後 略