シリアにおけるダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)の壊滅は時間の問題だと見られています。
米国はその代わりとして、ユーフラテス川の北に米軍を侵攻させ、その地域を数十年間占領する計画だということです。これは明白な国際法違反の侵略です。
戦争国家の米国は2000年に入ると「対テロ戦争」を国家戦略に据えました。もはや米国と戦火を交えるような国は存在せず、それでは米国の軍産複合体は立ち行かないので、「対テロ戦争」という 持続させることが容易な口実を編み出したのでした。
それからまもなく9・11事件が勃発しましたが、この事件にまつわる疑惑は際立っていて、自作自演ではないのかという疑念はいまも払拭されていません。
そんな中で米国を中心とする勢力が自分たちでダーイッシュなどのテロ集団をシリアに送り込み、「対テロ戦争」を口実に勝手に空爆を始めたのが有志連合による「シリア空爆」でした。それはいうまでもなくシリア政府の意向を無視したものでした。
空爆の回数は優に1万回以上に及びましたが、米軍にはもともとテロ集団を殲滅する意図などはないので、ひたすら爆撃の目的はシリア国内の市街地やインフラの破壊でした。
それによって居住地を破壊され、そこを追われた1250万人の人たちが国内外においてが難民となりました(このうち約500万人が国外に脱出)。
かつて米国はイラクを「石器時代に戻す」として無慈悲にも徹底的に破壊し尽くしました。シリアではそこまでは行きませんでしたが、それに近い破壊を行いました。これ以上の犯罪はありません。
2015年9月末、シリア政府の要請によりロシアが介入し、ダーイッシュへの攻撃を開始するとテロ集団はたちまち劣勢になり、いまや壊滅するのは時間の問題という状況に追い込まれました。
この顛末は戦争国家米国の醜態を示すものとして明確に記憶されるべきです。
米国としてはダーイッシュの壊滅で「対テロ戦争」の火種までなくすわけにはいかないので、いわば「満州国」のような占領地をそこに設けて新たな火種にしようというわけです。明らかに国際法に違反しますが、現在の力関係ではどうすることもできません。
そんな国をひたすら崇めているのが安倍首相をはじめとする日本の体制側の人たちです。
櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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露軍によって手先のダーイッシュが崩壊寸前に追い込まれた米国は
地上軍を侵攻させ、占領を続ける
櫻井ジャーナル 2017年8月19日
シリアにおけるアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の壊滅は時間の問題だと見られている。アメリカ政府も「ダーイッシュ後」の準備を進めている。ユーフラテス川の北へアメリカ軍が侵攻、イスラエルの影響下にあるクルド勢力と連携して「数十年」の間、占領すると伝えられている。いわば「満州国」の樹立だ。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、シリアの戦乱は「内戦」でなく「侵略」だ。侵略の黒幕はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟が中心で、イギリス、フランス、トルコ、カタール、ヨルダンなどが協力する布陣。こうした国々が侵略の先兵として送り込んだのがアル・カイダ系の武装集団。リビアでアル・カイダ系武装集団とNATOの連携が明確になったこともあり、2014年からダーイッシュが前面に出てきた。
「民主主義を望むシリア市民が独裁者の打倒を目指して蜂起した」という一般受けしそうなシナリオを侵略国の支配者は配下のメディアを使って宣伝していたが、その嘘は早い段階から明らかにされている。
2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィ自身は惨殺されているが、その後、CIAは国務省の協力を得てアル・カイダ系武装集団を武器/兵器と一緒にシリアへ運んだ。
輸送拠点のひとつがベンガジのアメリカ領事館で、クリストファー・スティーブンス大使も関係、2012年9月10日に大使は領事館でCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。その直後に領事館が襲撃され、大使は殺された。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスで、国務長官がヒラリー・クリントン。このふたりがこうした工作を知らなかったとは思えない。
シリア政府を倒すために戦闘員や武器/兵器が送り込まれている最中、西側の有力メディア「市民の蜂起」というおとぎ話を宣伝していた。そうした宣伝の「情報源」とされたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)。シリア政府の弾圧を訴え、外国勢力の介入を求める発言を続けていた。
しかし、2012年3月1日にダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子を含む映像が流出し、彼の情報がインチキだということが判明する。が、CNNを含む西側メディアはこうした事実を無視、偽情報を大々的に「報道」しつづけた。
そして2012年5月、ホムスで住民が虐殺される。反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。
その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。その後もシリアで戦闘が続き、侵略軍が優勢になる理由のひとつは、西側の有力メディアが真実を語らなかったことにあると言えるだろう。
2012年にはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団だと指摘する報告書をホワイトハウスに提出している。報告書の中で、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。この警告は2014年、ダーイッシュという形で現実になった。
ダーイッシュの出現を口実にしてアメリカは2014年9月に連合軍を組織、アサド体制の打倒を目指す。連合軍に参加したのはサウジアラビア、カタール、バーレーン、アラブ首長国連合のペルシャ湾岸産油国、ヨルダン、トルコ、さらにイギリス、オーストラリア、オランダ、デンマーク、ベルギー、フランス、ドイツなど。
この連合軍は2014年9月23日に攻撃を始めるが、その様子を取材したCNNのアーワ・デイモンは翌朝、最初の攻撃で破壊されたビルはその15から20日前から蛻の殻だったと伝えている。その後、アル・ヌスラやダーイッシュはシリアで勢力を拡大していくが、その理由は連合軍が本気で攻撃していなかったからだ。主なターゲットはシリアのインフラや市民だったようである。その後、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュは支配地を拡大していく。
そうした流れを変えたのが2015年9月30日に始まったロシア軍の空爆。アメリカ主導軍と違い、ロシア軍はシリア政府の要請に基づいての軍事介入だった。そして戦況は一変、侵略軍は押され始め、今では崩壊寸前になっている。そこでアメリカは地上軍を軍事侵攻させざるをえなくなった。
イスラエルはモサド(対外情報機関)の長官、アマン(軍の情報機関)の長官、国防省の高官をワシントンへ派遣、国家安全保障担当補佐官のH・R・マクマスター、副補佐官のダイナ・パウエル、そしてジェイソン・グリーブラットと会談するというが、「ダーイッシュ後」のシリアについても話し合うだろう。