2017年8月22日火曜日

日本の末路は日米軍事同盟による破産

 防衛省は北朝鮮問題対応を理由にして、来年度予算として過去最大の5兆2550億円を要求する意向を固めたということです。これまでの5兆円の枠を大幅に超えるものです。

 17日にワシントンで開かれた日米2プラス2では、「日米軍事同盟における日本の役割の拡大と軍備の拡大」を約束させられました。勿論それは空証文などではなく、早速 ミサイル本体(単価10~20億円)を入れれば1式で1000億円を超える「イージス・アショア」の導入を決定しました。これは2式以上が必要とされています。
 現在4隻保有しているイージス艦はもっと高価ですがそれも1隻建造されるということです。
 日米2プラス2会談を機にアメリカが日本に大々的に武器を売りつけようとしているのは明らかです。

 天木直人氏は、ウィリアム・ハガティ米国新駐日大使が817日に来日するや、翌18日に安倍首相を表敬訪問し、その直後に米軍トップのダンフォード統合参謀本部議長と安倍首相の会談に立会い日米同盟の強化を確認したことに注目し、今後はハガティ大使が日米同盟の顔として日本に君臨するに違いないと見ています。(「天木直人のブログ」 http://kenpo9.com/archives/2053 

 「イージス・アショア」にしてもイージス艦にしても、迎撃ミサイルシステムが有効だという前提で話が進められていますが果たしてそうなのでしょうか。これまでアメリカがミサイル迎撃の成功例として我々に示しているのは、テレビゲームに類似した画面上で命中・爆発したとするシンボリックな映像であって、あれではコンピュータグラフィックと何も変わりません(少なくとも実際の映像ではありません)。

 弾道ミサイルの速度は中距離ミサイルは秒速25kmで長距離ミサイルは秒速57kmといわれています。
 仮に速度を秒速5kmとし、目標となるミサイル弾頭のサイズを直径1m長さ2mと仮定すると、空間のある1点を弾頭が通過するに要する時間は1万分の4秒です。
 つまり迎撃ミサイルは、数百キロ遠方の(計算上の)衝突予定点に、軌道誤差が数十cm以内でかつ到達時刻の許容誤差が±1万分の2秒以内で到達しないと「衝突」しないということです。
 しかもそれは標的ミサイルの計算上の軌道と実軌道が完全に一致しているという前提の話ですが、そこにも当然誤差があるわけなので、迎撃ミサイルが命中する確率はさらに大幅に下がります。
 そもそも多少の軌道調整機能は持っているにしても、真空中を慣性で飛翔する迎撃ミサイルがそんな精度を持つことはあり得ず、万が一命中したとすればそれこそ文字通り「僥倖」と呼ぶべきものです。

 ほかにも安倍政権は来年度までに総額3600億円を投じ「オスプレイ」17機を購入し、19年度までに無人偵察機「グローバルホーク」3機導入で総額1200億円(日刊ゲンダイ 付帯設備を含む?)以上を支払うなど、米国製の高額兵器を盛んに購入しています。
 しかし危険極まりない「オスプレイ」は敵地侵攻のためのものなので、日本にとってはまさに無用の長物です。そんなものを売りつけられるのは、アメリカ軍でも海兵隊以外には空軍も陸軍もオスプレイを採用する予定はないので、あとは日本に売りつけるしかないからです。そんなものを買う方が余程どうかしています。

 無人偵察機「グローバルホーク」も、当初は3機分で510億円と見積もったのが、米国のメーカーが日本向けには23%の増額が必要ということで、630億円に値上げしてきたということです(朝日新聞 21日)。相手はもっともらしい理由をあげていますが、日本に売りつける際に大儲けをしようという魂胆が見え見えの話です。

 安倍政権の姿勢では、この先もアメリカの兵器売りつけに唯々諾々と応じるしかないので、軍事費の際限のない拡大が続きます。そうなれば民生向けの予算は際限なく減らしていくしかありません。

 その先にあるのは「日米軍事同盟による日本の破産だ」と日刊ゲンダイは述べています。
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歯止めなき軍事費増強 この国の末路は日米軍事同盟破産
日刊ゲンダイ 2017年8月19日
 いったい、どこにそんなカネがあるのか。日本政府が「あれも買います、これも買います」の大盤振る舞いだ。
 17日にワシントンで開かれた日米両国の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)。共同発表には、「日米同盟の切れ目ない対応を確保するため」として、日本が防衛費を増やし、自衛隊の任務を拡大する方針が盛り込まれた。
 同時に、日本側は防衛大綱や、自衛隊の装備体系を定めた「中期防衛力整備計画(中期防)」の改定を表明。「わが国自身の防衛力を強化する」と言って、バカ高い買い物を次々と約束してきたのだ。
 まず、「イージス・アショア」の導入を決定。海上自衛隊のイージス艦に搭載している迎撃ミサイル「SM3」を地上に置く新システムで、1基約800億円とされるが、日本全域をカバーするために2~3基の導入を検討する。
 2018年度予算の概算要求では金額を明示しない「事項要求」にとどめ、年末の予算編成時に設計費を計上する方針だという。
 北朝鮮のミサイルに対応するため、SM3搭載のイージス艦も、現在の4隻から年内に5隻に増やす。イージス艦を1隻造るには、1300億円ほどかかるといわれる。弾道ミサイル防衛システムを搭載すれば、数百億円の追加オプション費用も発生する。
 また、航空自衛隊に「宇宙監視部隊」なるものを創設し、来年度から米軍主催の宇宙に関する多国間演習に参加することも決めた。概算要求では「MIMO(マイモ)」と呼ばれる警戒管制レーダー試作費に約196億円を計上する。

米国製の武器を「爆買い」
 すでに、来年度までに「オスプレイ」17機を購入して総額3600億円を投じることや、19年度までに無人偵察機「グローバルホーク」3機導入で総額1200億円以上を支払うなど、米国製の高額兵器をバンバン購入している安倍政権だが、北朝鮮のミサイル危機を理由に、これでもかの“爆買い”を加速させているのだ。
「それこそが米国の狙いなのです。北朝鮮を挑発し、意図的に脅威を煽れば、日本が軍備を増強してくれる。米国の武器産業は大喜びです。スターリンのロシアや毛沢東の中国にも核の脅威はあったのに、危機を煽ることはしなかった。金正恩の北朝鮮だけを意図的に煽るのは、米国にとっての経済的な利益になるからです。安倍政権は日米同盟への依存を強め、米国から言われるままにバカ高い武器を購入している。そういう米国への隷属を隠すために、日本政府も北朝鮮を利用している。米国を喜ばせるために武器を買うとは言えないから、国内向けの言い訳として、北の脅威を煽って、国民の不安をかき立てるのです」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)

 第2次安倍政権では、中国の脅威を理由に5年連続で防衛費を増やしてきた。16年度からは5兆円の大台に乗り、今年度予算は過去最高を更新。来年度予算ではさらに増える。それでも飽き足らず、なんと倍増させる計画まである。

社会保障費の削減分がイージス・アショア代に消える
 自民党の安全保障調査会が今年6月、次期中期防に向けた提言の中間報告をまとめた。そこには、北朝鮮の核・ミサイル開発が「新たな段階の脅威となっている」として、日本の防衛費をGDPの2%程度まで引き上げて「厳しい安全保障環境を踏まえて十分な規模を確保する」ことが提言されている。さらに、宇宙やサイバー分野などについての議論を深め、最終報告を政府に提出するという。これまで日本の防衛費は、GDP比1%の枠内にとどまってきた。倍増させれば10兆円規模。税収55兆円程度の国で、どこにそんな余裕があるのか。
防衛費を増やそうと思えば、真っ先に削減されるのは間違いなく社会保障費です。実際、17年度予算では医療や介護の制度改革で1400億円の社会保障費が削られた。政府は来年度も1300億円を削減する方針です。そうやって削った社会保障費が、役に立つかどうかも分からないイージス・アショア代に消えてしまう。消費税引き上げ分はすべて社会保障に使うという約束だったのに、軍備に使われているのが現実です。北朝鮮を敵に見立て、防衛と称して軍事費をどんどん増やし、国民の血税を米国の軍産複合体に差し出そうとしている。防衛費を10兆円規模にしようと思ったら、消費税10%でも足りません。もっと消費税率を上げなければ追いつかないし、それがそっくり軍事費に使われることになるのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
 社会保障の財源が足りないと国民を脅して増税しておきながら、社会保障費は削られ、なぜか武器の購入が数千億円単位で次々と決まっていく。

国民の生活より軍備を優先
 アベノミクスはいつまで経っても道半ばで、庶民は実質賃金が上がらず、生活を切り詰めざるを得ない。そんな中で増税や社会保険料の負担増に苦しめられ、さらには年金は当てにするな、75歳まで働いて納税しろと尻を叩かれる「1億総活躍社会」の悪夢。そうやって、国民から召し上げた血税が米国産の武器に浪費されるなんて、やりきれない気持ちになってくるが、これが安倍首相が盲目的に信奉する日米軍事同盟の正体であり、安保関連法の本質ということなのだろう。
 それでも無節操な軍事費拡大を黙認するのか。国民の生活より軍備を優先する政府を支持していいのか。
「武器輸出を解禁し、大学の軍事研究を奨励する安倍政権が軍事大国を目指していることは明らかです。再び戦前の軍事国家に戻れば、周辺国との緊張が高まり、ますます軍事力に頼る歪んだ経済構造になってしまう。社会保障がどんどん削られて、負担ばかりが増えれば国民生活は困窮し、日本経済全体がヘタっていきます。軍事力だけが突出し、国家財政は逼迫、経済も弱体化すれば、いずれ国家が破綻する。国防も大切ですが、その前にまずは国民生活のはずです。日本が攻められた時に本当に守ってくれるかも分からないのに、米国にカネだけ毟り取られる無定見を続ければ、その末路は国家の破産しかありません。税金は国民が安心して暮らせる社会を構築するために使われるもので、米国に貢ぐために徴収するものではない。戦争屋の安倍政権に任せていたら、破滅への道をまっしぐらです」(菊池英博氏=前出)
 日米同盟を守るために国が破綻なんてバカみたいな話だが、自国民より米国の利益を優先してきたのが自民党政権だ。国民から収奪した富を米国に貢ぎ、一方では特区を利用した利権を仲間内で回す。自民党政権が続くかぎり、この構造は変わらないのだ。それは、そういう政権を選んで支持してきた国民の責任でもある。
 次の総選挙で安倍自民を引きずり降ろせば、まだギリギリ間に合うかもしれない。自分たちの生活か、高額な米国産武器か。選択を迫られているのは、単純な話だ。軍備への異常なまでの傾注によって、国家の破綻は刻一刻と近づいている。その時になって後悔したところで「後の祭り」なのである。