2017年8月10日木曜日

加計学園獣医学部 認可の判断「保留」へ 文科省審議会

 加計学園の今治市での獣医学部新設(来年4月開学の予定)について審査する文科省の大学設置審議会が9日開かれ、実習計画などが不十分であるとして、認可の判断を保留する方針が決まりました。今後、学園に修正案の提出を求めたうえで、来月以降、改めて来年4月の新設について審議を行い、認可の判断を行う見通しですNHK)
 世論の厳しい批判があるのですんなり認可するのは難しいから、認可は1年延期になるのでは・・・という見方はされていました。「保留」が単なる慎重審議のアリバイ作りであってはならないのは言うまでもありません。

 加計学園の今治市での獣医学部新設を巡って7日、弁護士や現役の大学教授らで作る「加計学園問題追及法律家ネットワーク」が記者会見を行い、「”石破4条件” が十分満たされていないまま、国家戦略特区の会議で新設が認定されたのは違法」、また「加計学園の加計孝太郎理事長と親密な関係にある安倍首相が諮問会議に出席し、発言していることも審議の中立性を欠いている」として国家戦略特区として加計学園獣医学部の新設を認めたのは違法だと指摘しました
 同ネットワークはその際に安倍首相(と梶山規制改革担当大臣)に質問書を出しています
※ 8月8日 加計学園の獣医学部は「石破4条件」を満たさず認定は違法

 日刊ゲンダイが9日付けでその「詳報」を出しましたので併せて紹介します。
 記事中に登場する憲法95条と内閣法第4条の条文は下記のとおりです。

 憲法95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 内閣法第4条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
2 閣議は、内閣総理大臣がこれを、主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
3 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。
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加計学園獣医学部 認可の判断「保留」へ 文科省審議会
NHK NEWS WEB 2017年8月9日
学校法人「加計学園」の来年4月の獣医学部新設について審査する文部科学省の審議会が9日開かれ、実習計画などが不十分で課題があるとして、認可の判断を保留する方針が決まり、今月末に予定されていた大臣への答申は延期される見通しとなりました。
「加計学園」が来年4月に愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、ことし4月から審査を行い、今月末に結論をまとめて大臣に答申する予定でした。
これまでに審議会は、教員の数や学生の定員について見直すよう求め、学園は、定員を当初より20人少ない140人としたほか、教員を増やす案を提出していました。

関係者によりますと、9日、非公開で審議会が開かれた結果、認可の判断を保留する方針が決まり、今月末に予定されていた大臣への答申は延期される見通しとなりました。保留となった理由としては、学生に対する実習計画が不十分でライフサイエンスの獣医師などを養成するうえで教育環境が整っておらず、課題があるとされたということです。
審議会は今後、学園に修正案の提出を求めたうえで、来月以降、改めて来年4月の新設について審議を行い、認可の判断を行う見通しです。


加計学園の獣医学部を認めた国家戦略特区は「憲法違反」
日刊ゲンダイ 2017年8月9日
安倍内閣の不正義を許さない――。文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)が25日にも結論を下すとみられている加計学園の獣医学部新設問題で、ついに法曹界が怒りの声を上げた。「加計学園問題追及法律家ネットワーク」(共同代表・梓澤和幸、中川重徳両弁護士)が、獣医学部の新設は「裁量権を逸脱・濫用する違憲かつ違法の決定」である疑いがあるとして、7日、国家戦略特区諮問会議で認定に至った経緯を確認するための質問状を安倍首相らに送ったのだ。

 質問状では、獣医学部の新設には、2015年6月の閣議決定で設けられた、既存の大学・学部では対応困難な場合や、近年の獣医師需要動向を考慮する――といった「石破4条件」を満たすことが不可欠だったにもかかわらず、議事録を確認する限り、加計学園では「具体的な検討・検証を経て共通認識に至った形跡が窺えず、石破4条件を充足するとされた確たる根拠は不明」と指摘。
 特区認定が、憲法5条や内閣法4条の趣旨に反する――としているほか、国家戦略特区基本方針では、〈諮問会議に付議される調査審議事項について直接の利害関係を有する議員は審議や議決に参加させないことができる〉(特区法)とあるのに、加計孝太郎理事長と親しく「利害関係を有する立場」の安倍首相が認定したのは「違法なものというほかない」と断罪している。

 さすが法律家のグループだ。加計問題を「水掛け論」とトボケている安倍首相とは違い、法律に照らして的確に問題点を突いている。安倍首相は法律家グループの質問状に対して論拠を示して正々堂々と答えるべきだろう。

 指摘通りなら加計学園の獣医学部新設は違法となるわけだが、野党内からは、そもそも国家戦略特区自体が「憲法違反」との声が出始めている。
「憲法14条は、すべての国民は法の下の平等にあり、『政治的、経済的又は社会的関係において差別されない』と規定し、憲法95条は、地方公共団体のみに適用される特別法は、当該地方公共団体の住民投票で過半数の同意を得なければ、国会は制定できない――とある。しかし、国家戦略特区は住民の意思など全く関係なく、特定の地域に恩恵をもたらす仕組み。つまり条文の趣旨を明らかに逸脱しています」(司法ジャーナリスト)

 設置審が「憲法違反」の獣医学部新設を認可したら、日本は法治国家ではなくなってしまう。“壊憲”しか頭にない安倍首相にとっては、何とも思わないのだろうが、国民にとっては冗談じゃない。何が何でも新設を認めたらダメだ。


加計学園問題で関係大臣宛に提出した要望書と質問状を掲載します
2017年8月9日
 学校法人加計学園による獣医学部新設の計画が、平成29年1月20日に国家戦略特別区域法に基づく内閣総理大臣による区域計画の認定を受けました。
 この認定を受けたことで、学校法人加計学園の獣医学部新設計画は、平成29年8月中にも学校教育法4条1項に基づく文部科学大臣の設置認可処分を得れば主要な法的手続を完了し、予定どおり平成30年4月に開設されることとなります。
 しかしながら、外部に公表されている各種議事録等や、文部科学省事務次官であった前川喜平氏の一連の証言などを検討すると、加計学園の獣医学部新設は、石破4要件の充足性や、「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」(文科省告示)が定める審査基準への適合性が適正に検討されることなく進められた可能性が窺われます。
 そこで、私達は、法律家として整理した法的論点について、文部科学大臣に対する要望書、内閣総理大臣および地方創生大臣に対する質問状を2017年8月7日に提出しました。
加計学園問題追及法律家ネットワーク
共同代表 弁護士 梓澤和幸 
同   中川重徳