2017年8月3日木曜日

ヨーロッパ諸国が対米自立に向かう「一縷の希望」

 いうまでもないことですがヨーロッパ諸国はアメリカの属国ではありません。しかし事実上ヨーロッパは第二次世界大戦終焉以来、独自の経済政策も外交政策もない属国状態に陥っています。
 ヨーロッパはいまアメリカから既に3年以上に及ぶ対ロシア経済封鎖を強制されていて、経済的に大いに困窮しています。

 そもそも対ロシア経済封鎖の発端は何だったのでしょうか。
 アメリカ5000億円と言われる莫大な資金を投入して周到に準備したのち13年11ウクライナで「内戦」を起こしました。そして14年3月には暴徒を仕掛けてクーデターを起こし、ついに政権を奪取しました。それがアメリカ世界に支持呼びかけウクライナキエフ新政権=アメリカの傀儡政権でした。

 世界は、ロシアがソチ・オリンピック終了後直ちにウクライナ南端のクリミヤ自治共和国に侵攻したと非難し、アメリカに言われるがままに対ロシア経済封鎖を行っていますが、もともとクリミヤ自治共和国にロシア軍2万人ほどが常駐していたのであって、2日やそこらで2万人のロシア兵が侵攻したのではありません。逆にアメリカの方が、クーデターを利用してロシア軍港のあるクリミアを占領する作戦に失敗したのでした。
     (関係記事)
         2014年3月19日 ウクライナ・クリミア問題 ロシアは何も悪くない
         2016年12月19日 西側の対ロシア経済制裁の理不尽
            https://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2016/12/19.html 

 ユンケル欧州委員会委員長は新たな対ロシア経済制裁に直面して、「ヨーロッパの利益を後回しにする時期は終わった」 と述べました。
 ドイツ外務省は、「ヨーロッパ企業がいかなる第三者 特にロシアのエネルギー企業と、どういう形で協力するか判断したり、決めたりする権利がアメリカにあるわけではない」 と述べました。
 フランス外務大臣は「経済制裁は 域外適用 ゆえに 国際法に矛盾する” 」と述べました。

 これらはあまりにも当たり前の発言ですが、そうしたことがようやくヨーロッパの主要な国家から聞かれるようになりました。著名なコラムニスト:Paul Craig Roberts氏が、「ヨーロッパの自立への『一縷の希望』が見えてきたと評する所以です。
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一縷の希望
マスコミに載らない海外記事 2017年8月 1日
Paul Craig Roberts 2017年7月26日
クリントン政権時代に、ネオコンがアメリカ外交政策を乗っ取り、21世紀のアメリカを規定する二十年におよぶ戦争犯罪を始め、アメリカ大企業がアメリカ労働者を裏切って、アメリカの雇用をアジアに移して以来、アメリカは意欲をそぐ景観になった。

オバマ政権がロシアの脅威を復活させ、核大国間軍事紛争の可能性を高めたことで、見通しは一層暗くなった。
ヨーロッパは板挟みになり、普通の状況であれば、ヨーロッパ諸国は、ワシントンに、ロシアに対するいわれのない挑発を止めるよう主張していたはずだ。だが普通な状況は存在していなかった。第二次世界大戦終焉以来、ヨーロッパ諸国は独自の経済政策も外交政策もない属国だ
ヨーロッパは、ロシアを脅かすアメリカ軍基地を受け入れている。ヨーロッパは、セルビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアに対するワシントンの侵略戦争を、ワシントンによるパキスタンの州に対する空爆を、ワシントンが対イエメン代理戦争を戦うのにサウジアラビアを利用しているのを支持している。
ヨーロッパは、ワシントンのいわれのない対イラン、対ロシア経済制裁、ヨーロッパに大きな損害をもたらし、ワシントンにはさほど損害のない経済制裁を支持してきた。

ヨーロッパ好き勝手にするのに慣れて、ワシントンはヨーロッパ 傀儡諸政権と相談することさえせずに命令する。今や、ワシントンの途方もない尊大さと傲慢さの結果、手を広げ過ぎになってしまったように見える。新たな対ロシア経済制裁に直面して、ジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長は、ワシントンが自分の利益を優先し、ヨーロッパの利益を後回しにする時期は終わったと、ワシントンに言った。

新たな経済制裁は、ヨーロッパにとって、壊滅的な経済的、政治的影響をもたらす。ユンケルは、もしヨーロッパの“懸念が十分配慮されない場合、我々は数日のうちに適切に行動する用意がある”と述べた
ドイツとフランスの外務大臣もユンケル支持を表明した。ドイツ外務省はこう述べた。“ヨーロッパ企業がいかなる第三者と - 特にロシアのエネルギー企業と、一体どういう形で協力してよいか判断したり、決めたりする権利がアメリカにあるわけではない
フランス外務大臣はこう述べた。経済制裁は“域外適用”ゆえ“国際法に矛盾する”。
ヨーロッパは、経済制裁を、アメリカの事業権益を、ヨーロッパの事業権益より優先させるためのアメリカ産業政策手段だと見なしている。

ワシントンの傲慢さが、ワシントンが後退するのを許さず、ヨーロッパがワシントンに中指を突きたてて、アメリカ帝国から離れることを願おう。軍事基地を受け入れ、アメリカのプロパガンダを鸚鵡返しにするヨーロッパなしには、ワシントンがロシアを威嚇する能力は大幅に減少するはずだ。実際、ロシアに対する敵対的な威嚇的な態度を続ければ、ワシントンは世界の中で孤立するはずだ。ワシントンの単独覇権主義だけのために、核戦争を味わうリスクを望んでいる国など皆無だ。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。
彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Order.が購入可能。