2018年10月26日金曜日

総括欠くスローガン政治 6年間の総括はどこに 所信表明演説

 24日の安倍首相の所信表明演説では、何と取って付けたように原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」を引用し、そのつもりでなのか、「皆さん、共に」という趣旨の言葉を8回も繰り返しました(朝日新聞)。「共に」と言ったから民意に沿っているという訳でないことは言うまでもありません (^○^)
 演説の内容は空疎の一語に尽き、各紙の紙面でもそんな言葉が躍っていました。
 また国会での傲慢な態度が批判されたことを意識して「低姿勢」に終始していましたが、これはそう振る舞っていればすぐに支持率も回復するからという魂胆が見え見えのものでした。
 今度の所信表明では安倍内閣の一枚看板であった「アベノミクス」が突然消えました。円安を誘導し株価を吊り上げて大企業を大儲けさせ、投資家(大金持ち)を富ませた以外には何の益もなく、デフレ脱却が絶望的であるのはもはや明らかです。いまはどうして撤退するかの「解のない」難題に取り掛かるしかないので、言及したくないのは分かりますが、こんな大問題をフェードアウト(気づかせないうちに姿を消す)させていい筈はありません。
 
 この6年間、安倍内閣で一貫していたことは、政府が掲げた政策がどうなったかの総括を全くしないままで次々と目新しい方針を打ち出したことでした。東奥新聞はそれを「スローガン政治」と呼びました。中國新聞は「6年間の総括はどこに」と批判しました。
 
 両紙の社説と「日々雑感」氏のブログを紹介します。
お知らせ
都合により27日、28日は記事の更新が出来ませんのでご了承ください。
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総括欠くスローガン政治/安倍首相の所信表明演説 
東奥新聞 2018年10月25日
 安倍晋三首相は臨時国会での所信表明演説で、残る3年の任期中に、憲法改正による「新たな国創り」と、北朝鮮やロシアとの間の諸問題を解決して「戦後日本外交の総決算」を実現すると強調した。
 列挙された日本人拉致問題や北方領土問題などはいずれも歴代内閣が成し遂げることができなかった難問だ。仮にこの一つでも解決できれば安倍内閣は、その長さのみならず実績でも戦後史に深く名を刻むだろう。
 
 一方、2012年末の政権復帰後、看板政策であったアベノミクスへの言及がなくなった。最大の柱である金融の大規模緩和は、円高是正による株価上昇をもたらしたが、2%の物価上昇というデフレ脱却への最終目標は達成されていない。
 次々に新しいスローガンと目標を打ち出し続ける一方、都合の悪いものはフェードアウトさせるのであれば、「スローガン政治」と言われても仕方がないだろう
 
 この所信表明演説は、安倍首相が政権復帰後、初めて行われた9月の自民党総裁選で連続3選を果たし、任期を21年9月まで延ばして以後、国会で政治方針を示す最初の場だった。
 演説は総裁選で自らを選んだ自民党にも向けられており、今回は、今後3年間の方向性を示す必要があった。
 しかし、未来を語るのであれば、政権の過去を中間総括することが必須だ。政権復帰後、すでに約6年間という長い年月が過ぎているからだ。かつて安倍首相はアベノミクスについて「道半ば」と位置づけ、さらなる継続を訴えていたが、野党などから「永遠の道半ば」と突っ込まれたせいか、使わなくなった
 
 金融緩和を縮小させる「出口戦略」の必要性が叫ばれ続け、安倍首相も9月の総裁選の討論会で「ずっとやっていいとは思わない。経済が成長している中で、なんとか私の任期のうちに(緩和縮小への方向転換を)やり遂げたい」と述べたにもかかわらず、演説では一切触れなかった
 
 日本人拉致問題や北方領土問題に至ってはこの6年間、道半ばどころか形になった成果が全く出ていない。一方、最近は財務省の決裁文書改ざん事件など公文書やデータにかかわる不祥事が頻発した。過去の検証も説明もせず、新たなスローガンと目標を並べ立てるのでは目先を変えようとしているとしか見えない。
 
 
社説 首相の所信表明 6年間の総括はこに
中國新聞 2018年10月25日
「強い日本」「強靭(きょうじん)な故郷(ふるさと)」「ど真ん中でリードする日本」。きのうの安倍音三首相の所信表明演説では、いつにも増して威勢のいい言葉が続いた。
 その割に、首相が「わが国是大のピンチ」とする少子高齢化など山積する問題への具体策は述べられなかった。未来を語るのであれば、自身の6年に及ぶ政権運営についても総括が必要だったのではないか。
 
「新しい日本の国創り」として、首相が最初に挙げたのが「強靭な故郷づくり」たった。道路や河川の改修、ため池の補修など災害復旧を加速させるという。防災・減災のための事業は急いでほしい。だが「強靭な故郷」とは何か。イメージも湧かなかった。
「ピンチもチャンスに変えることができる」との文句も繰り返し使われた。少子高齢化や地方の過疎化を「ピンチ」と位置付けているようだ。
(中 略)
 来年10月に引き上げる消費税については、「経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員する」と述べた。ー方で、あれほど胸を張ってきた自らの経済政策アベノミクスに、今回は全く言及がなかった。デフレ脱却への目標が達成できないことを認めたのだろうか。
(中 略)
 対ロシアでは「私とプーチン大統領との信頼関係の上に領土問題を解決し、日口平和条約を締結する」と述べた。だがプーチン氏は先月、いきなり前提条件なしの平和条約締結を提案しており、本当に信頼関係があるのか心もとない。
(中 略)
「安倍1強」「最長政権」への慢心が批判されることを意識したのかもしれない。演説の締めくくりには、日本で初めて本格的な政党内閣を築いた原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」を引用していた
 だが最近だけでも森友・加計学園問題や陸自の日報問題を巡る公文書管理に対する姿勢など、国民の信頼を裏切るような不祥事は少なくない。
「民意」というならば、聞こえのいい言葉をひねり出すばかりではなく、総括も必要である。臨時国会では内容を伴った論戦を、与野党に求めたい。
 
 
安倍氏の所信表明の内容は「亡国」政策のテンコ盛りだ
日々雑感 2018年10月25日
(時事通信記事の部分は省略)
 なんど安倍氏の口から「丁寧な説明」という言葉を聞いたことだろうか。「モリ カケ」に関しても彼は「丁寧に説明」するとホザイテいた。いやTPP参加についても「丁寧な説明」をして農家の理解を得る、と言っていた。何でもかんでも、安倍氏は「丁寧な説明」をすると言っておけば良いと考えているようだ。
 それは「その場」だけの言い逃れに過ぎない。憲法改正に関しても今国会で「丁寧に説明する」と言っている。しかし改憲草案の説明をするのは政府ではなく、政党ではないのか。政府には憲法遵守の義務が課されているはずだ。
 
 残念ながら安倍氏の所信表明は「亡国」への道筋を語っているだけだった。「深刻な人手不足」は特別な業種に偏っているだけだし、拡大局面の経済で各企業が増産に次ぐ増産で人手不足になっているのではない。
 デフレ下でも団塊の世代の大量退職で人手不足になっているだけだ。外国人労働者の大量移民で人手不足が解消されて、デフレ経済だけが残ったなら日本はどうなるのだろうか。それこそ深刻な経済不況と大失業時代が訪れるだろう。
 
 なぜ国内企業に設備投資と研究開発を促進させる政策を強力に推進しないのだろうか。日本の経済成長を促すには生産性向上による労働賃金の上昇を図るしかない、というのは大学で経済学部一年生の「経済原論」を学んだ程度の頭脳でも理解できる話だ。
 法人税の本税を減税しても内部留保が増えただけではないか。法人税減税と見合いになっているのが消費増税だ。これほど国民を馬鹿にした話はない。自民党の懐に企業献金は入るが、日本の風土に個人の政治献金はない。それなら個人の消費に税を課して、法人を減税した方が自民党にとって「合理的」ということなのだろう。
 
 消費税は景気を冷やす冷却材でしかない。その消費税を増税しようというのだから、安倍自公政権は「亡国」政権だと批判するしかない。経済成長なくして日本の国家として存立基盤はない。消費税は中国に併呑される運命を自ら招く悪政だ。
 経済成長こそが日本にとって最優先されるべき至上命題だ。たとえ財務省の唱える「財政規律」を達成しても、日本が経済大国・中国に併呑されては元も子もない。なぜ消費減税、もしくは消費税の撤廃を考えないのだろうか。
 消費税を巡って自公政権と対峙する資格のある政党は残念ながら共産党と自由党だけだ。そうした意味で、日本の健全野党は共産党と自由党しかない。あとの政党の国会議員は亡国の財務官僚に洗脳された愚かな人達の塊だ。
 日本は決して「借金大国」ではない。むしろ世界一の「債権大国」だ。財務省がマスメディアを総動員して「国の借金が1045兆円だ」と大宣伝しているのは「政府の借金」に過ぎない。それも95%を銀行等を通じて国民から借りた金だ。国民は自分たちが貸したカネを自分たちで支払わされている。
 
 それでも「政府の借金は償還すべきだ」というのなら、経済成長による「適正なインフレ」で償還するのが望ましい。デフレ下では名目の借金は変わらなくても「実質的借金」は膨らむばかりです。
 そこにFRB等の金利引き上げにより、日本も金融緩和策の出口戦略を迫られたら財政が極端に悪化するのは目に見えている。その残された時間は少ないというのが一致した見方だ。経済成長こそが日本の至上命題だと主張する所以だ。
 
 憲法を改正して「自衛隊」を明記しても現状とは何も変わらない、というのなら変える必要はない。何のために改憲議論をやろうというのかも安倍氏の説明では理解不能だ。
 憲法に「自衛隊」と明記しなければ自衛隊員は肩身が狭いのではないか、とも安倍氏は別の機会で発言しているようだが、憲法に明記されていないのは自衛隊だけではない。海上保安庁も警察も消防も介護福祉士も保育士も、その他の具体的な身分や資格に関してすべて憲法に明記されていないから国民は肩身が狭いのだろうか。バカも休み休み言うものだ。
 
 尤もらしい屁理屈を付けて、安倍自公政権は日本を亡国へと追い立てている。いよいよ祖父以来の企てを実行して、祖父・岸氏が締結した「日米地位協定」では飽き足らず、安倍氏は日本を丸ごと米国の植民地にしようとしている。日本の国家と国民のために、安倍自公政権を打倒しなければならない。