2018年10月29日月曜日

29- 私たちはこの憲法を変えさせない

 第4次安倍内閣の発足に当たり安倍首相は、自民党憲法改正推進本部長に、細田博之氏に代えて下村博文氏を起用し、衆議院憲法審査会の自民党幹事に、与野党協調路線と言われた中谷元氏、船田元氏らに代えて新藤義孝氏をあてるなど、改憲強硬路線の人事を整え、今度の臨時国会に自民党改憲案提出することに強い意欲を示しました。
 この安倍首相による改憲に対し、以下の3つの反対声明が出されました。
私たちはこの憲法を変えさせない             消費者連盟 9条の会
安倍政権による憲法改悪に反対する声明~平和と労働運動を守るために
 日本労働弁護団 
◇自民党改憲案の臨時国会提出に断固反対する法律家団体の緊急声明 
改憲問題対策法律家6団体連絡会 
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【声明】 私たちはこの憲法を変えさせない
NPO日本消費者連盟 9条の会 2018年10月24日
 第4次安倍内閣が発足しました。その布陣は、まさに改憲シフトと呼んでよいものです。安倍首相は今、あらゆる機会をとらえ、改憲の必要性を説く発言を繰り返しています。10月14日には自衛隊観閲式で、「今や国民の9割が敬意を持って自衛隊を認めている。政治がその役割をしっかり果たさなくてはならない。私はその責任をしっかりと果たしていく決意だ」と訓示しました。憲法9条への自衛隊明記を念頭においた発言です。この発言自体が、閣僚の憲法尊重擁護義務(99条)を踏みにじる憲法違反そのものです。彼の改憲にかける執念をうかがわせます。
 「すこやかないのちを未来へ」を掲げる日本消費者連盟がよって立つ基盤は、いま私たちが手にしている憲法です。平和、人権、自由を高く掲げたこの憲法こそが、化学物資、農と食、環境、核・エネルギー問題などなど私たちの生命を脅かす諸問題と対峙し、取り組んできた日本消費者連盟の活動を支えてくれています。
 私たちはこの憲法に手を付けるいかなる行為も許すことはできません。なぜなら、憲法は私たち自身だからです。その憲法を変えようという動きが、安倍自公政権によって現実のものになっています。
 私たちは、日々のくらしの足元、草の根から「この憲法を守り抜く」消費者・生活者の声を積み上げ、安倍政権による改憲を阻止する運動の一翼を担う決意です。以上、声明します。
2018年10月24日
 特定非営利活動法人 日本消費者連盟
 消費者・生活者9条の会
 
「安倍政権による憲法改悪に反対する声明」を出しました 
日本労働弁護団 2018年10月25日
憲法改正を巡る動きが慌ただしくなってきています。日本労働弁護団では「働く者」側の視点から、このような動きに強く抗議する声明を本日発表しました。
ご高覧ください。
また、12月14日(金)夜に「憲法改正と労働者・労働運動」(仮)というテーマで集会を予定しています(※詳細は後日発表します)。
 労働者・労働組合の皆さま、改正を阻止する運動に是非ともご協力下さいますようお願いします。
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安倍政権による憲法改悪に反対する声明
 ~平和と労働運動を守るために!
2018年10月25日
 日本労働弁護団 
 幹事長 棗 一郎
 自民党総裁の安倍首相は、臨時国会に自民党の憲法改正案(改憲4項目)を単独で提案し、両院の憲法審査会で議論するとしている。与党公明党や日本維新の会、希望の党など改憲支持野党が審議に応じることになれば、与党と改憲野党の共同で憲法改正原案が可決されることは必至である。そうなれば、来年の7月に行われる参議院議員選挙の前に両議院の3分の2以上の賛成で憲法改正発議、国民投票を強行してくる危険がある。
 
 安倍政権は2014年7月1日の閣議決定により、それまで歴代の自民党内閣が国際法上の集団的自衛権(国連憲章51条)の行使は日本国憲法9条に違反しできないとしてきた憲法解釈を勝手に変更して一部合憲としたうえ、2015年9月には多数の国民の反対の声を押し切って安全保障関連法案を強行採決し、自衛隊が海外で武力行使できる道を開いた。日本国憲法を改正できるのは主権者たる国民だけであり(憲法96条)、国民の承認を得ない一方的な解釈改憲は国民主権を踏みにじる暴挙であった。このような安倍政権にそもそも憲法改正を提案する資格などない。
 
 安倍首相は、現在の憲法9条はそのままにして9条の2を創設し「憲法に自衛隊を明記する」だけであり何も変わらない、「違憲と言われる自衛隊員がかわいそうだ」としている。しかし、何も変わらないなら憲法を改正する必要はないし、自民党改憲案は新たに緊急事態条項も創設するのであるから、「武力攻撃災害」も想定しており、何も変わらないことなどありえない。まして「かわいそうだ改憲」などと情緒的な理由で国のあり方の根幹を規定する憲法を改正せんとするのは立憲主義に対する挑戦である。
 
 今回の自民党改憲案の真の狙いは、9条の2に「前条の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。」との条項を設けることにより、戦争の放棄、戦力の不保持と交戦権の否認を規定する憲法9条1項2項の空文化を狙うものである。すなわち、自衛隊の憲法明記は、集団的自衛権の行使が違憲ではないことを憲法上明確にする趣旨であり、これまで国是としてきた専守防衛、非核三原則などの変更にもつながっていくものである。このような憲法改正を許せば、日本が“戦争をする国”すなわち軍事大国への道を突き進むことになる。
 
 ひとたび戦争が始まれば、真っ先に多大な犠牲を強いられるのは労働者である。自衛隊員はもとより、医療、土木建築工事又は輸送を業とする者や国・地方公共団体、指定公共機関として各種独立行政法人、日本銀行、日本放送協会、日本郵便、放送業者、鉄道業者、電気通信事業者、旅客・貨物運送事業者等の労働者、自衛隊の基地労働者、さらには報道や教育に従事する労働者などあらゆる職場で働く労働者が戦争への協力を強制されることになり、生命・身体の安全を犠牲にされ、基本的人権が侵害される。
 
 わが国の戦前の歴史が物語っているように、かつて日本の労働運動は、戦争遂行のための国家総動員体制の下で、労資一体となって「皇国」に報いるとする産業報国運動と労働組合は相いれないという政府の圧力により解体し消滅させられた。1940年、多くの労働組合が解散・消滅して大日本産業報国会に統合させられ、日本の労働運動は壊滅したのである。そして、日本は太平洋戦争へと突入していった。今回の憲法改悪を許せば、この悲惨な歴史を繰り返すことになりかねない。
 
 戦後の労働運動は、「平和なくして労働運動なし。」というスローガンを掲げて再出発した。改めて我々は歴史の教訓に深く学び、二度と戦争の惨禍を繰り返さないために、そして、働く者にとってかけがえのない労働運動を守るために、安倍政権による憲法改悪を断じて容認することはできない。
 
 日本労働弁護団は安倍政権による憲法改悪に断固反対するとともに、日本の全ての労働組合と労働者に対し、憲法改悪を阻止する運動に立ち上がることを呼びかける。平和と民主主義を守る重要な砦は労働運動である。日本労働弁護団は全ての労働者、労働組合と団結し、平和を求める市民運動とも連帯して、安倍政権による憲法改悪を阻止する運動に全力で取り組むことをここに宣言する。 
以上
 
自民党改憲案の臨時国会提出に断固反対する法律家団体の緊急声明 
改憲問題対策法律家6団体連絡会 2018年10月26日
はじめに
 安倍首相(自民党総裁)は、10月2日の組閣後の記者会見において「憲法改正については、自民党案としては昨年の総選挙におきまして、自衛隊明記を含む4項目について、国民の皆様にお示しをし、力強い支持を得ることができました。総裁選で勝利を得た以上、党としては、下村憲法改正推進本部長の下にさらに議論を深めて作業を加速させていただき」「国会の第1党である自由民主党がリーダーシップをとって、次の国会での改正案提出を目指していくべき」と語り、改憲への強い意欲を改めて示した。また、自民党憲法改正推進本部長に、細田博之氏に代えて下村博文氏を起用し、衆議院憲法審査会では与野党協調路線と言われた中谷元氏、船田元氏らに代えて新藤義孝氏を筆頭幹事にあてるなど、改憲強硬路線の人事を整えた。
 改憲憲問題対策法律家6団体連絡会(以下、「6団体連絡会」という。)は、以下の理由から、臨時国会での自民党改憲案の提出に断固として反対するものである。
 
1.憲法の最高法規性と立憲主義
 憲法96条1項は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会がこれを発議」するとし、法律の改正に比べて高いハードルを設定している(硬性憲法)。これは、憲法が、個人の自由と人権をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する規範(立憲主義憲法)であり、国の最高法規とされている(憲法98条1項)ことから、高度の法的安定性が要求されているためである。
 国の最高法規である憲法が、時の首相の一存で、あるいは、多数派の国会議員の数の力によって、軽々しく変更できるとなれば、国家権力を縛って国民の人権を保障しようとした立憲主義は無意味となる。国会に与えられた憲法改正の発議権は、最強の権力であり、濫用行使することは絶対に許されない。全国民を代表する国会議員で組織される両議院は、当該憲法改正案の発議が、果たして、立憲主義の原理から見て、必要であるのか、許されるのかを、慎重に真剣に議論し、その議論の過程を全国民に分かりやすく明らかにする重い責務を負う。
 議員ないし憲法審査会が憲法改正案を国会に提出するにあたっても、同様に、立憲主義と国民主権による制約に服する。この理は、最終的に国民投票による審判が予定されていても同様である。
 4項目の自民党改憲案なるものは、本年3月の自民党大会でも決定できず、自民党員内ですら様々な意見のあるところであり、昨年秋の「国難突破」解散に引き続いて行われた総選挙においても、自民党改憲案は争点とはなっておらず、憲法審査会においても一度も議題にすら上がっていない。国民的な議論が全くないまま、自民党改憲案の本質を国民に伏せて、憲法9条の2に自衛隊を書き加えても「自衛隊の権限・任務に変更がない」と国民を欺き、オリンピックの年までに新しい憲法を施行したい(2017年5月3日安倍首相読売新聞インタビュー)などとして、自民党改憲案を臨時国会(憲法審査会)に提出し、数の力で強引に来年の通常国会での憲法改正発議を狙うような暴挙は、立憲主義の破壊行為であり、絶対に許されることではない。
 
2.憲法を蹂躙し続ける安倍自民党に、改憲をリードする資格はない。
 安倍政権は、憲政史上最悪の憲法蹂躙政権となっている。秘密保護法、集団的自衛権の一部行使容認の閣議決定、安保法制、盗聴法の対象犯罪の拡大、共謀罪など、国民の多くが反対し、法曹関係者より憲法違反と指摘される数々の立法を、十分な審議もせずに強引に数の力で成立させてきた。また、野党議員による臨時国会の召集要求権(憲法53条)を無視する一方で、首相は解散権を濫用して衆議院を解散する暴挙を繰り返してきた。さらに、複数回にわたる国政選挙や県知事選挙等を通じて示された沖縄県民の意思を傲然と無視して、辺野古新基地建設を強行するなど権力行使の正当性根拠は見出しがたい。加えて、検証も反省も被害回復も置き去りにしてやみくもに原発再稼働を推し進める政権の姿勢は、国民の命や安全に対して実は無関心であることの現れといえる。
さらに、森友疑惑をめぐる公文書改ざんと公文書毀棄、証拠隠滅、加計疑惑での事実を隠す数々の答弁、自衛隊の「日報」隠し、裁量労働制をめぐる不適切データの使用、財務省事務次官のセクハラ問題等々、民主主義国家の基盤を揺るがす事態が枚挙のいとまなく相次いでいる。
 国民の声に耳を貸さず、憲法を蹂躙し続ける安倍自民党(政権)に、改憲をリードする資格はない。
 
3.国民は憲法改正を望んでいない
 各種世論調査によれば、国民は憲法の改正を望んでいない。共同通信調査(本年10月2日3日)では、秋の臨時国会に改憲案を出すことについて、反対は48.77%、賛成は36.44%、日本経済新聞社調査(同10月2日3日)では、同じく反対が66%、賛成が22%、朝日新聞調査(同10月13日14日)では、同じく反対が42%、賛成が36%である。朝日の調査では政権に一番力を入れて欲しい政策(択一)は、社会保障が30%で一位を占め、景気・雇用が次で17%、改憲は5%に過ぎない。国民が、第1に望んでいるのは、医療・年金・介護などの社会保障政策の充実であることは各社調査ともに一致しているが、他方で、第4次安倍政権が打ち出した「全世代型の社会保障改革」は期待できないが57%に及んでいる。また加計理事長の記者会見で疑惑が晴れたかの質問には82%が晴れていないと回答している(いずれも朝日新聞10月13日14日)。
 国民は、今、憲法改正を望んでいない。政府・国会に求められているのは、政治・行政の腐敗を正し、国民の政治への信頼を回復し、社会保障など国民生活に直結する施策の充実を図ることであり、憲法改正に前のめりになることではない。
 
4.自民党改憲案の危険性
 本年3月の自民党改憲推進本部と党大会で提案された9条改憲の諸案は、憲法9条1項2項を維持しながら「9条の2」を創設し、「わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」に自衛隊を保持するとの条項を設けようとする。これらは、いずれも「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は認めない。」と規定する憲法9条2項の空文化を狙うものである。そこでの「必要な自衛の措置」という文言は、フルスペックの集団的自衛権の行使を可能とすることになりかねず、2015年に成立した安保法制が合憲化されるにとどまらず、憲法の平和主義の原理を捨てて、アメリカの指揮下で何時でもどこでも「普通に」戦争ができる国への転換を図るものであり、国民の自由と人権、生活への影響は計り知れない。また、緊急事態への対処条項は、自然災害の場合に限定されておらず、9条改憲とワンセットであることが明らかである。
 
5.最後に
 6団体連絡会は、これまで、立憲主義を破壊する安倍政権の一連の施策に反対し、自民党の改憲4項目の本質と危険性についても警鐘を鳴らし続けてきた。自民党改憲案の臨時国会提出が言われている今、立憲主義を守り、安倍政権の改憲に反対する野党と市民とともに、断固として自民党改憲案の国会提出に反対することを宣言する。 
以上
2018年10月26日
   改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター 共同代表理事     宮里 邦雄
自 由 法 曹 団 団長            船尾 徹
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長  北村 栄
日本国際法律家協会 会長                 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長                 佐々木猛也
日本民主法律家協会 理事長              右崎 正博