2018年10月11日木曜日

米国が昨年末 臨界前核実験 ICBM発射実験も定期的に

 米国は(それに日本も北朝鮮に完全な核廃棄を求め、それなくしては朝鮮戦争の終結宣言も出させないとする一方で、自らは昨年12月、ネバダ州で臨界前核実験を行っていたことが分かりました(東京新聞)。
 トランプ政権は2月2日、核戦略の中期指針「核体制の見直し」(NPR)で、相手国への核攻撃抑止や反撃に限らず、通常兵器で攻撃された場合でも核兵器で反撃することを排除しないだけでなく、先制核攻撃自体も排除しないとする方針を発表していますが、この実験はその方針に沿ったものです。
 
 また米国は、北朝鮮に対して大陸間弾道弾(ICBM)の開発中止・廃棄も要求していますが、自分自身はバンデンバーグ空軍基地で大陸間弾道弾ミニットマン3の定期的な発射実験を行っています。
 いずれも自分たちには許されるが北朝鮮には許されないとする身勝手な理屈に基づくもので、米国とその衛星国(日本も含む)以外には到底通用しないものです。
 
 米国の核実験に対し被爆者たちから10日、が核実験を繰り返す中で他国に核施設廃棄を求める資格はない」「核兵器廃絶を求める市民社会の声を無視している」、「日本政府は唯一の戦争被爆国として抗議すべきだ」との声が上がりました(東京新聞)
 
 日本は唯一の戦争被爆国でありながら、属国であるかのように米国に追随し、米国の「核の傘」で守られていることを口実に核兵器禁止条約に参加しない一方で、2月に明らかにされた米国の核体制の見直し」(NPR)にはいち早く賛同するなど、見苦しい態度を取っています。
 ICANIの国際運営委員・川崎哲氏は、2月7日の参院国際経済・外交に関する調査会で、「核の傘」論の欺瞞を明らかにし、政府の「核の傘」論の批判的再検討を訴えました。
      ⇒ (2月12日)「核の傘」論の批判的再検討 ICAN 川崎哲氏
 元外交官の孫崎 享氏も、日経ビジネスのインタビューでアメリカの「核の傘」は実際には機能しないことを明らかにしています。
 
 また9日、東京広島市などで行われた「6・9行動」原爆が投下された8月6日と9日に因み、毎月6日・9日に行う被爆者救援・反核兵器運動)に被爆者も参加し「ヒバクシャ国際署名」呼びかけるとともに、「核の傘 依存変えよう」と訴えました。
 
 東京新聞としんぶん赤旗の記事を紹介します。
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トランプ政権、初の核実験 昨年末 臨界前、米国5年ぶり
東京新聞 2018年10月10日
 米国が昨年十二月、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実験を西部ネバダ州で実施していたことが十日、分かった。米エネルギー省傘下の核安全保障局(NNSA)が四半期ごとの報告書で明らかにした。トランプ政権下で初の実験で、米国として五年ぶりで二十八回目。新たに開発した技術の性能を試す実験で、今年十二月にも別の新技術の性能を調べる実験を計画しているとしている。
 
 トランプ政権は今年二月、核兵器を「使える兵器」として役割の拡大を目指す方針を発表。今回の実験は、この構想を推進する姿勢を強く示したと言える。北朝鮮に非核化を迫る一方、国内では核兵器の役割を強化するトランプ政権に、反核団体からの批判が強まる可能性がある。
 
「ベガ」と名付けられた今回の実験は、オバマ前政権が実施した二〇一二年十二月以来。核反応を開始させる「爆縮」と呼ばれる過程に、通常の爆薬よりも反応が鈍く、偶発的な爆発の可能性を低くした「低感度爆薬」を採用し、その性能を試した。
 NNSAは、「新設計の核兵器の有用性を確認できた」とコメントしている。
 
臨界前核実験> 核爆発の模擬実験の一つで核爆発は起きない。製造から時間が経過した核兵器の信頼性を評価することが目的。核分裂の連鎖反応が続く「臨界」にならないよう少量のプルトニウムなどの核物質に高性能火薬の爆発で衝撃を与え、反応を調べる。米国は1992年に地下核実験を停止。97年から臨界前核実験を開始した。包括的核実験禁止条約(CTBT)の対象外と主張している。オバマ政権は2010年9月から12年12月にかけて計4回行った。
 
 
北に非核化求めながら… 被爆者「米の利益ばかり追求」 トランプ政権核実験
東京新聞 2018年10月10日
 米国がトランプ政権下で初の核実験をしていたことが明らかになった十日、被爆者からは「いかなる核実験にも反対だ」などの抗議の声が上がった。自国が核実験を繰り返す現状の中で「他国に核施設廃棄を求める資格はない」として、北朝鮮の非核化を巡る米朝交渉に臨む外交姿勢への批判も出た。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(77)は、「核兵器廃絶を求める市民社会の声を無視している。絶対反対だ」と語気を強め、「日本政府は、唯一の戦争被爆国として、抗議すべきだ」と訴えた。
 長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(78)は、米国が、自らは実験をしながら北朝鮮に非核化を求めていることを踏まえ、「トランプ政権の外交戦略が、自国の利益だけを考えていることを表している」と批判した。
 
 広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之副理事長(76)は「トランプ氏は言うこととやることが違う」と憤り、「北朝鮮が実験を知れば交渉がうまくいかなくなるのではないか」と懸念をあらわにした。
 広島市の被爆者、小田敦通さん(75)は「いまだに核兵器を懸念し続けないといけない時代であることが残念だ」と語った。
 
 
「核の傘」依存 変えよう 6・9行動
しんぶん赤旗 2018年10月10日
 東京と広島市で9日、被爆者も参加して「6・9行動」が取り組まれました。被爆者も参加した「ヒバクシャ国際署名」の呼びかけに、多くの市民が立ち止まり、署名をしました。この宣伝は、原爆が投下された8月6日と9日に合わせて毎月行っています。
 
「ヒバクシャ国際署名」私も
東京
 東京・新宿駅前では、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)や東京の被爆者でつくる東友会などが訴えました。都内在住の被爆者をはじめ23人が参加し、世界では核兵器禁止条約の発効へ向けた流れが進んでいることを紹介。「核保有国と、日本をはじめ核の傘に依存している国の姿勢を変えさせよう」と呼びかけました。
 タスキをかけた被爆者を先頭に署名を呼びかけると、多くの人が立ち止まり署名をしました。
 「長野県から、大学の行事で東京へ来ました」と話す学生2人も署名に応じました。長野県塩尻市の学生(19)は、「私は核兵器に反対するのは当然だと思っています。日本は被爆国でもあるので、世界から核兵器をなくす先頭に立ってほしい」。松本市の学生(20)は、「大学でも、授業のなかで核兵器について学んでいます。平和のためにできることは協力したい」と話しました。
 日本共産党の本村伸子衆院議員が参加し、スピーチしました。
 
核兵器禁止条約に参加を
広島
 広島県原水協と県被団協(佐久間邦彦理事長)は、広島市内の繁華街で「ヒバクシャ国際署名」への協力を呼びかけ、30分で36人分の署名が寄せられました。被爆者ら11人が参加しました。
 県原水協の神部泰代表理事は、北朝鮮の脅威を口実にアメリカの核の傘が必要だと、核兵器禁止条約に背を向ける日本政府を批判し、「世界は核兵器廃絶へと大きく動いています。被爆国日本の役割を果たさせるため、署名を広げ、日本政府に核兵器禁止条約への参加を迫ろう」と呼びかけました。
 学生(20)は被爆者が呼びかけていると知り、署名しました。「戦後70年以上たっても苦しんでいる被爆者が多くいるのに、なぜ、核兵器を持つのか。核兵器はいりません」と話しました。
 中国で終戦を迎え、広島に帰ってきた女性(82)は「戦争は悪です。ましてや、核兵器は悪の元凶。被爆国である日本政府がアメリカにものを言えず、核の傘にいるのは悲しいことです。堂々と核兵器に反対し、条約に入ってほしい」と語りました。