2018年10月6日土曜日

自民は改憲案を 単独で憲法審査会に提示へ

 安倍首相は2日、第4次安倍内閣のスタートに当たり改憲への強い意欲と自信を見せましたが、5日の段階では、9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案を自民単独で憲法審査会に提示するということに落ち着きました。
 一方主要な野党は改憲案の提示自体に反対し、「立憲主義を踏みにじっている人たちとの議論には乗れない」と明言しています。
 
 2日、第4次安倍内閣の発足に当たり、安倍首相は午後6時から記者会見を行い、改憲についての記者の質問に対し、
「昨年の総選挙で自衛隊明記を含む4項目の改憲案を国民に示し支持を得たし、党内においては総裁選で、次の国会に改正案を提出できるよう取り組むと訴えて勝利した。改憲の作業を加速したい。公明党に対しては具体的な条文を示し協議を進めたい(要旨)」
と述べました。しかし改憲案は内閣が提出できるものではなく、衆参両院の憲法審査会での審議を経て上程されるものなので、そんなに簡単にはことは進みません。
 それに公明党は、来年の統一地方選、参院選を控え、公が足並みをそろえて改憲発議を主導したと批判されたくないので、事前協議に応じようとはしません。山口代表は「与党の調整を先行し、改憲案を国会に出すことはわれわれは考えていない」と繰り返し述べています。
 首相側近の萩生田幹事長代行も「自民党の案を憲法審査会で各党に議論してもらう。その作業を前に進めることが大事だ」と審査会で議論を始めることが大切との考えを示しました。
 
 3日、改憲推進本部顧問の高村正彦氏が安倍首相に「自民党がまとめた自衛隊明記など四項目の改憲条文案について憲法審査会で説明する、ということでいいか」とただしたのに、首相は「そういうことだ」と答え、「議論のたたき台として説明するだけでも構わない」とトーンダウンしたのにはそんな背景がありました。
 結局、自民党は公明党との事前協議は見送り、10月下旬召集予定の臨時国会に、9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案単独提示する方針を固めましたが、冒頭に記したように、野党は改憲案の提示自体に反対しているので、簡単には進みません。
 
 関連する4つの記事を紹介します。
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【速報】「憲法改正案を次の国会に提出目指す」安倍首相会見
FNNニュース 2018年10月2日 19時7分
第4次安倍改造内閣が発足。安倍首相が、午後6時から記者会見を行った。
 
Q  憲法改正案について公明党と調整したいと発言されましたが、公明党は事前の与党協議には否定的です。今後どう調整を進めていくのか、また自民党麻生派は、来年夏の参院選までに憲法改正の国民投票を行うよう求めています。国民投票を参院選前までに実施を目指すお考えでしょうか。
A  憲法改正については、自民党としては昨年の総選挙におきまして、自衛隊明記を含む4項目について国民の皆さんにお示しをし、そして力強い支持を得ることができました。そして党内においては、今回の総裁選挙におきまして、私自身、次の国会に改正案を提出できるよう党を上げて取り組むべきであると申し上げて勝利を得たところであります。
結果が出た以上は、下村憲法改正推進本部長の下に、さらに議論を深めて作業を加速化させていただきたいと思っています。
 
与党である公明党との調整についても、当然、丁寧に説明していかなくてはならないわけですが、公明党とは、まさに風雪に耐え連立政権を築いてきたわけであります。
その信頼関係の中において、真摯(しんし)にしっかりと議論をしていくことが大切であろうと思いますが、まずは具体的な条文をしっかりとお示ししていかなくては、公明党との皆さんとの議論、国民の皆さんのご理解も深まらないのは当然のことだろうと思います。
その意味におきましては、国会の第一党である自由民主党が、リーダーシップをとって具体的にお示しを、党としてはだいたいイメージとして条文をお示ししておりますが、次の国会での改正案提出を目指していくべきであろうと考えています。
その後のスケジュールは、国会次第で予断を持つことはできないと思っています。三分の二で発議をして、国民投票で過半数と高いハードルでありますが、与党野党にかかわらず、幅広い合意を得られるように努力していくべきだろうと考えています。
 
 
安倍首相  トーンダウン 自民改憲案「提出」は「説明」
毎日新聞 2018年10月3日 22時02分
 安倍晋三首相は3日、自民党の高村正彦前副総裁と首相官邸で会談し、自衛隊の明記など4項目の党憲法改正案を、秋の臨時国会で与野党に説明したいとの意向を示した。首相は2日の記者会見で「次の国会で党の改憲案提出を目指す」と改めて表明。高村氏が「党の条文案を衆参両院の憲法審査会で説明するという意味でいいか」と真意を尋ねると、首相は「そうとらえてもらって結構だ」と答えたという。 
 
 首相はこれまで、臨時国会で条文案の「提出」に意欲を示したと受け止められていたが、議論のたたき台として「説明」するだけでも構わないと事実上認め、トーンダウンした形だ。 
 自民党憲法改正推進本部は3月、9条への自衛隊明記▽緊急事態条項の創設▽参院選の合区解消▽教育の充実--の条文案をまとめた。しかし先の通常国会では、立憲民主党など野党が慎重姿勢で、憲法審での説明さえほとんどできなかったという経緯がある。 
 
 首相は公明党との事前協議にも意欲を示したが、公明党は応じず、与野党が一堂に会する憲法審での議論を求めている。公明の山口那津男代表は3日、国民民主党の玉木雄一郎代表にあいさつ回りをした際、「憲法(論議)には与野党の区別はなく、国会で同等のプレーヤーだ」と指摘。「場外で先行させ、何かを持ち込むことはふさわしいやり方ではない」と伝え、首相を重ねてけん制した。 【田中裕之】
 
 
首相「臨時国会に4項目提示」 公明に配慮、改憲前進狙う
東京新聞 2018年10月5日朝刊
 安倍晋三首相が自民党の高村正彦前副総裁との会談で、秋の臨時国会では改憲原案の提出でなく、同党の改憲案の説明を目標とする意向を示したのは、他党が協議に応じやすくする環境を整える狙いだ。改憲原案の提出には与党の公明党も難色を示しており、強引に進めれば協議に入れず、改憲発議そのものの遅れにつながると判断した。(村上一樹)
 首相と高村氏の会談は三日に行われた。高村氏によると、自民党がまとめた自衛隊明記など四項目の改憲条文案について「臨時国会の(衆参両院)憲法審査会で説明する、ということでいいか」とただしたところ、首相は「そういうことだ」と答えた。
 
 首相は二日の記者会見で、改憲について「自民党がリーダーシップを執り、次の国会に改正案を提出すべきだ」と話したが、改憲原案の国会提出を指すのか、憲法審での自民党案の提示だけを意味するのかを明らかにしていなかった。
 首相自らが公の場で約束して言質をとられるようなことはしないが、改憲論議を前に進めるため、党憲法改正推進本部の最高顧問に就く高村氏を介して協調路線を演出したとみられる。
 背景には、自民党が求める事前の与党協議に公明党が難色を示していることがある。山口那津男代表は「与党の調整を先行し、改憲案を国会に出すことはわれわれは考えていない」と繰り返す。来年の統一地方選、参院選を控え、安全保障関連法のように自民、公明両党が足並みをそろえて改憲発議を主導した、と批判されたくないからだ。
 
 自民党の竹下亘・前総務会長は四日、首相の意図について「公明党がやろうという気にならないと(改憲の議論が)動かない」と記者団に説明。首相側近の萩生田光一幹事長代行も三日、「(自民党の)案を憲法審査会で各党に議論してもらう。その中で出っ張るものや、引っ込むものもあるかもしれない。その作業を前に進めることが大事だ」として、まず審査会で議論を始めることが大切との考えを示した。
 
 ただ、自民党の考えは野党側に見透かされている。社民党の又市征治党首は「憲法審で説明して議論をしたいという誘い水だろう。立憲主義を踏みにじっている人たちとの議論には乗れない」と明言した。
 
 
自民、改憲案で与党協議見送りへ 国会に単独提示、9条改正など
東京新聞 2018年10月5日12時43分
 自民党は、10月下旬に召集予定の臨時国会に、9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案の単独提示を目指す方針を固めた。連立を組む公明党が事前協議に一貫して難色を示しているため、協議は見送る。自民党幹部が5日、明らかにした。衆参両院の憲法審査会で条文案を示し、与野党による議論を喚起することを狙う。主要な野党は改憲案の提示自体に反対しており、予定通り進むかは見通せない情勢だ。
 
 自民党憲法改正推進本部長に内定した下村博文・元文部科学相が4日、推進本部の最高顧問に就く高村正彦前副総裁らと党本部で会談し、条文案の提示を目指す方針を確認した。
(共同)