2018年10月31日水曜日

暗雲漂うなかで船出した臨時国会(五十嵐仁氏)

 五十嵐仁氏が、臨時国会は安倍首相にとって暗雲漂う中での船出となったとして、安倍首相の3つ暗雲(悩みや焦り)を挙げました。
 第1の暗雲は「漂流を始めた外交」として米中両国の板挟みにあって揺れていることと、この先朝鮮半島の宥和や中國との関係改善が進めば、そのまま安倍首相の従来の北朝鮮敵視、中国敵視の基本姿勢との整合性が問われ転換を求められるという悩みです。安倍首相自身が招来したものであるのは言うまでもありません。
 第2の暗雲は国会が序盤から高市議運委員長名が出した安倍首相を援護する政府寄りの国会改革試案をめぐって紛糾したことで、これもまた森友・加計学園疑惑や閣僚の資質などへの追及を恐れる安倍首相の焦り」が、高市氏をしてそうした行動に走らせ結果です
 第3の暗雲は、経済界の要求に基づき外国人労働者の受け入れ拡大に向けての出入国管理法改正案をめぐり、自民党内でも反対や懸念、慎重意見などが続出して紛糾していること、これも早く成果を出したいという安倍首相の焦り」が生み出した混乱です。
 他にも10%への消費増税「売り物」だったアベノミクスが何の成果もあげていないという負い目があり、前途は暗澹としています。
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暗雲漂うなかで船出した臨時国会
五十嵐仁の転成仁語 2018年10月10月30日
 10月24日に安倍首相の所信表明演説が行われ、昨日から代表質問が始まりました。3選を実現して3期9年間という最長の任期を視野に入れて発足した第4次改造内閣ですが、その前途は容易ではありません。
 長期政権の驕りや緩み、安倍首相自身の焦りなどが随所で垣間見えるからです。臨時国会は暗雲漂う中での船出となりました。
 
 第1の暗雲として漂流を始めた外交を挙げることができます。日中首脳会談と日印首脳会談を立て続けに開催するなど順調に進んでいるように見えますが、実はそうではありません。
 トランプ政権による米中新冷戦への対応に苦慮し、米中両国の板挟みにあっているからです。一方で中国との関係改善を進めながら、他方でインドとも関係を強化して中国包囲の姿勢を示すなど、安倍外交は揺れています。
 トランプ米大統領の顔色をうかがいながら中国に急接近する安倍首相に、外務省がストップをかけようとしたのが「3原則」をめぐる行き違いです。この先、朝鮮半島での南北接近と緊張緩和の進展や中国との関係改善がすすめば、安倍首相による北朝鮮や中国への「敵視政策」、安保法制・改憲、軍備増強・基地強化などの好戦的な軍事大国化路線との整合性が問われ、政策転換が迫られることになるでしょう。
 
 第2の暗雲は序盤から与野党が激突して本会議の開会が45分も遅れてしまったことです。そのきっかけを作ったのは、安倍首相の側近で衆院議院運営委員長に抜擢された高市早苗氏でした。
 衆院本会議に先立って開かれた理事会において、議運委員長名で高市氏が出した国会改革試案をめぐって紛糾したからです。この試案は政府提出法案の審議を優先し、一般質疑は会期末前にするとの内容を含んでいたため、立法府の役割や議運委員長の役割が公正公平で行政監視機能を果たさなければいけないということを理解していないなどと野党は強く批判し、試案の撤回と謝罪を求めました。
 森友・加計学園疑惑などで国会による行政監視が不十分で行政の私物化と暴走が大きな問題となっているときに、高市氏は政府寄りの提案をして安倍首相を援護射撃しようとしたわけです。中立であるべき議運委員長の立場を逸脱する暴挙で批判されて当然ですが、森友・加計学園疑惑や閣僚の資質などへの追及を恐れる安倍首相の焦りを反映したものだと言って良いでしょう。
 
 第3の暗雲は出入国管理法改正案をめぐる混乱です。これは外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格創設を柱とするものですが、自民党内でも異論や懸念、反対、慎重意見などが続出して法務部会が紛糾し、議論は4時間も続きました。
 この問題は代表質問でも取り上げられ、「新たな移民政策ではないのか」という懸念を安倍首相は打ち消しました。しかし、与党内でも異論があり、自民党内で安倍首相を支えてきた右派議員からの批判もあって亀裂が生まれました
 この改正案は内容だけでなく、来年4月からの実施を予定するというスケジュールについての異論も強く、臨時国会での審議の行方は不透明です。このような形で急ぐのも、早く成果を出したいという安倍首相の焦りの表れかもしれません。
 
 臨時国会はまだ始まったばかりですが、ここに挙げた問題以外にも10%への消費増税や「全世代型社会保障改革」など重要な課題が目白押しです。会期が12月10日までと短いことも、安倍首相の焦りを生んでいる要因かも知れません。
 それとも、6年間も政権を担当してきたのに、「売り物」だったアベノミクスも外交も上手くいかず、誇るべき成果が何もないことに気が付いたのでしょうか。このままでは、モリ・カケだけが国民の記憶に残ってしまうかもしれないのですから。