これは消費増税のデタラメさを糾弾する日刊ゲンダイの「第2弾」です。
安倍政権は、今度の消費税10%への引き上げ表明にあたって「全世代型社会保障制度」(意味不明)への転換を掲げましたが、いつもの「口から出まかせ」のスローガンに過ぎません。
朝日新聞が13、14日に実施した世論調査でも、政権に力を入れて欲しい政策のトップが「社会保障」なのに、政府の掲げる「全世代型社会保障」について「期待できない」が57%で、「期待できる」は32%にとどまりました。ダブルスコアで否定されたわけです。国民をいつまでも騙せると思ったら大間違いです。
庶民は消費増税でむしり取られるばかりで、社会保障の充実などはあり得ません。その税収は即、大企業・富裕層の救済であり、さらに兵器の爆買いなどでトランプ米国に吸収されることになります。
来年の消費増税時はまさに景気後退局面に入ると予測されています。到底小手先の景気対策で乗り切れるわけはなく、日本経済は奈落の底に落ちて行く恐れが高い、と日刊ゲンダイは述べています。。
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巻頭特集
社会保障カットばかり “ボッタクリ”消費増税に庶民の反乱
日刊ゲンダイ 2018年10月17日
安倍首相が15日の臨時閣議で来年10月の消費税率10%への引き上げを正式表明したことを受け、テレビニュースやワイドショーがこぞってこの話題で喧々囂々だ。税率アップの方向性こそ2012年の法改正で決まっているものの、その制度設計や準備がメチャクチャなことが改めてクローズアップされているからである。
誰もが首をかしげるのが軽減税率(8%)の適用対象。同じコンビニで買っても持ち帰れば8%なのに、イートインスペースで食べたら外食扱いで10%になる。小中学校などの給食は8%でも、大学などの学食は他の選択肢があるとして10%だ。その境界線はどうにも分かりにくいし、店頭で大混乱するのは目に見えている。
増税による消費落ち込み対策として「2%分のポイント還元」が検討されてもいるが、クレジットカードやキャッシュレス決済の買い物が対象で、小売店はそのために専用の読み取り機などを購入しなければならない。期間限定の“サービス”のために余計な出費を強いられる店舗はたまったもんじゃない
ただでさえ低所得者ほど負担が重くなる消費税は、逆進性のある悪魔的不公平な税だ。そこへもってきて理不尽な話のオンパレード。安倍身勝手政権のデタラメ増税に対して、庶民の怒りに火が付き、一気に燃え広がっているのは当然である。
■社会保障の充実は反故
そもそも消費税率は何のために引き上げられるのか。増税は、民主党・野田政権下の2012年8月に、民主・自民・公明の「3党合意」で決まったのだが、正式には「社会保障・税一体改革に関する3党合意」だった。「このままでは早晩、社会保障の財源に大きな穴があいて立ちいかなくなるとの強い危機感から、社会保障制度の全般的改革を推進することを条件に、その財源を確保するために消費増税を国民にお願いする」という建前だったはずだ。増税分は全額、社会保障の充実に充てられるとしていた。
ところが、である。同年12月に安倍政権に交代すると、社会保障の充実はすっかり反故にされた。「自助・共助・公助の適切な組み合わせ」がうたわれていたはずの社会保障制度改革が、13年12月の「プログラム法」の成立で、「自助」が基本で政府はそれを“支援”する役割だということにスリ替わった。そうなると、社会保障は充実どころか、逆に削減ラッシュだ。
この間、安倍政権は70~74歳の医療費負担を原則2割に引き上げ、特養ホームの入所資格を原則要介護3以上に限定。年金カット法も成立させた。直近では「人生100年時代」などと言いながら、年金支給年齢を75歳まで引き上げる議論まで始めている。
今度の消費税10%への引き上げ表明にあたって、安倍は「全世代型社会保障制度」への転換を掲げた。幼児教育の無償化など少子化対策も充実させるということで、増税分の使い道を社会保障と借金返済で「1対4」の比率だったところを「1対1」にしたとアピールしている。だが、「3党合意」に遡れば、増税分は全額社会保障に使うはずだったのだから、何をかいわんやだ。社会保障の充実なんて嘘八百なのである。
ジャーナリストの斎藤貴男氏がこう言う。
「消費増税をめぐる一連の流れは、最初から最後まで詐術というか、ただ国民をだますためだけのものだったのです。消費増税が社会保障目的なんて嘘。カネに色は付いていません。政府は増税分を社会保障に充てると言っても、既存の税収の社会保障への使途を維持するとは言っていない。だから現実に年金カットだなんだと、どんどん削減されてきたじゃないですか。『1対4』とか『1対1』というのもレトリックに過ぎず、国民をだましているのです」
「全世代型社会保障」も毎度の“印象操作”
確かに増税の一方で社会保障費の削減は半端ない。つい最近も、生活保護受給者が「ジェネリック(後発医薬品)」しか使えなくなったのをご存じか。生活保護法の改正でジェネリック使用が原則化され、今月1日、施行されたのだ。
理由はもちろん薬価が安いから。ジェネリックは特許切れの先発医薬品と同じ有効成分で作られた後発品で、薬価は先発品の3~7割に抑えられている。ただ、同じ有効成分をうたっているとはいえ、「同一品ではない」とみる医師も少なくない。不安だから先発品を使いたいという患者もいるだろうに、社会保障費を減らすためには有無を言わせぬ措置なのである。
生活保護受給者でなくとも、薬局で処方箋を出した際、最近はまず、「ジェネリックでもいいですか?」と聞かれる。医療費削減のため、厚労省が薬局にそう説明するよう指導しているからだ。
結局、政府は社会保障を減らすことしか眼中にないのだ。国民の健康や生活など後回し。「全世代型社会保障」と、毎度のごとくスローガンが躍るだけで、その内実はお寒い限りなのである。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「国民は『消費増税は社会保障のためだから仕方ない』と思わされてきましたが、これは安倍政権お得意の“印象操作”です。消費税は逆進性が強く、庶民から集めた税金が結局、富裕層に逆分配されているのが現実。『全世代型社会保障』にしても、若年層や子供向けの政策を増やす一方で高齢者向け福祉は削減されるわけで、世代間対立を利用したパイの奪い合いです。むしろ『全世代型社会不安』ですよ」
■もう国民は信用しない
やらずブッタクリ――。安倍政権の悪辣なペテンに、もう国民は感づいてきている。
朝日新聞が13、14日実施した世論調査。政権に力を入れて欲しい政策のトップが「社会保障」なのに、安倍の掲げる「全世代型社会保障」について「期待できない」が57%で、「期待できる」は32%にとどまったのだ。
嘘と欺瞞で塗り固められた安倍政権の5年10カ月で、トリクルダウンは起きず、賃金が上がらず、アベノミクスの正体がすっかり割れた。来年の消費増税時はまさに景気後退局面に入ると予測されているのに、小手先の景気対策で乗り切れるわけなどなく、日本経済は奈落の底に落ちて行く恐れが高い。
増税だけして、社会保障は削減の一途。所得は増えず、生活は苦しくなる一方。これでは国民の怒りが爆発してもおかしくない。大政局に発展する予兆もあると、政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「消費税で社会保障を充実させると、安倍政権はその場しのぎの説明でしのいできましたが、さすがにもう通用しなくなってきた。モリカケ問題もあり、安倍首相という人物が、もはや国民の信用を失っていることもある。増税は来年10月です。近づけば近づくほど、国民の反発は強くなる。来春の統一地方選、来夏の参院選への影響は避けられないでしょう。安倍首相がやけっぱちになって衆参ダブル選挙なんて打ったら、裏目に出て、自民党はガタガタになるかもしれませんよ」
安倍政権のままなら、庶民は消費増税でむしり取られるばかりで、社会保障の充実などあり得ない。税収は、富裕層、そして兵器爆買いなどでトランプ米国に移転されるだけだ。
一度火が付いた庶民の反乱は簡単には鎮まらない。安倍は覚悟した方がいい。