安倍内閣は15日、消費増税(⇒10%)を予定通り19年10月から行うことを明言しました。ただ、それを発表したのはなぜか菅官房長官で、安倍氏本人は敵前逃亡(天木直人氏)しました。
1年も前に宣言したのは、増税による影響を和らげるための対策が必要だからということですが、日刊ゲンダイは「1年も前から、全省庁を挙げて対策の準備が必要になるような悪手段なら、消費税増税なんてやめればいい」と述べました。
逆進性のある大衆課税:消費税の増税を今の様な状況の中で実施すれば、甚大な影響が広がり日本経済は完全に撃墜されます(植草一秀氏)。安倍内閣は2014年度に消費税率を8%に引き上げて窮地に追い込まれましたが、その時の状況から何も変わっていないどころか、より悪くなっています。
植草一秀氏は7日のブログ「安倍内閣は消費税増税再々々延期し選挙に臨む」の中で、
「19年度予算編成では、19年10月の消費税増税実施を組み込むが、通常国会が終了した段階で、安倍首相は、19年夏の参院選を乗り切るために、三たび消費税増税の延期を発表するだろう。その場合は ‟衆参ダブル選”に突き進む可能性が高い」と予測しています。
天木直人氏も、増税実施の説明を菅氏にさせて安倍首相が「お得意の敵前逃亡」をしたのは、消費税増税を直前になって延期して解散・総選挙になだれ込むための段取りだとして、来年7月の衆参同一選挙の可能性が高くなったという見方を示しました。
安倍首相の唯一の取り柄はたった一つ、野田内閣時代の3党合意である消費増税を2度まで延期したことでした。
そもそも消費税で国の財政を賄うとしたら税率を20%以上にしないとバランスしないということです。それこそが、如何に消費税依存のシステムがデタラメであるかを端的に示すものです。
「消費増税」が如何にデタラメなものであるかについて、日刊ゲンダイが詳細に述べています。
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「消費増税」「小手先対応」何から何までデタラメの極み
日刊ゲンダイ 2018/10/16
(阿修羅 文字起こし より転載)
この政権に任せていたら、どれだけ増税しても足りやしない。バラマキと公務員の昇給、米国のご機嫌取りに使われるのがオチだ。
安倍首相が15日、臨時閣議で消費税を19年10月から予定通り10%に引き上げると表明。増税による影響を和らげるための対策を各省庁に指示したというが、景気が悪化すると分かっていながら、なぜ消費税率アップを強行するのか。1年も前から、全省庁を挙げて対策の準備が必要になるような悪手なら、消費税増税なんてやめればいいのだ。
「消費税を8%に引き上げた時も景気は落ち込みました。何兆円もの購買力を奪うのだから当たり前です。しかも、安倍政権の6年間で実質賃金は下がり、社会保険料の負担増や所得税の控除縮小で可処分所得は減り続けている。家計支出が低下している中で、消費税を上げればどうなるか。庶民生活は破綻してしまいます。どんな対策を講じたところで、小手先対応ではどうにもならない。ただでさえ、世界同時株安などで景気が底割れの懸念もあるのです。今はまだ2020年の東京五輪需要で持っていますが、五輪後の大不況は避けられません。そんな時に消費税を上げるなんて、狂気の沙汰です」(政治学者の五十嵐仁氏)
安倍は「引き上げによる税収のうち半分を国民に還元する」とエラソーに言っているが、そもそも税金は、国民に再配分するために徴収しているのだ。消費税8%への増税だって、社会保障制度を充実させるためというから、国民もシブシブながら受け入れた。それが、実態はどうだ。少しでも社会保障が拡充されたか? 年金カットに支給先送り、生活保護カット、介護保険料アップ……。0なのだ。
庶民から召し上げて大企業を優遇
「今回の増税も、『全世代型社会保障制度』への転換とのセットとされていますが、社会保障を持ち出すのは、国民をごまかすための方便でしかありません。消費税を8%に増税してから、肝心の社会保障費を削って軍拡予算を増やしてきたのが安倍政権です。しかも消費税を上げる一方で、法人税はどんどん下げている。消費税は低所得者ほど逆進性に苦しめられるのに、庶民から召し上げて、大企業を優遇し、格差を広げてきた。これはもう詐欺というレベルではなく、国民生活を破壊する行為です」(経済アナリスト・菊池英博氏)
法人税をいくら引き下げても経済効果がないことは、大企業の内部留保が証明している。6年連続で過去最高額を更新し、17年度には446兆4884億円に達した。安倍政権発足前の11年度末から160兆円以上も積み上がったことになるが、これが賃上げに回ることはない。庶民生活は貧しくなる一方だ。
大企業が儲かっているなら、法人税を上げたらどうなのか。所得税で富裕層から取る方法もある。だいたい、アベノミクスで空前の好景気とうたいながら、庶民の給料が上がらず、負担が増える一方なのはなぜなのか。
経済学者のスティーブン・ランズバーグは「政府が新たな歳入を再分配せず、無益なプロジェクトに支出すれば、社会はそれだけ貧しくなる」と指摘した。増税分がどこに消えているのか、きっちり説明してもらいたい。
■金持ちほどメリットが大きい軽減税率のいかがわしさ
この消費税増税は、何から何までデタラメの極みだ。そもそも消費税が弱者いじめの金持ち優遇策であるというだけでなく、増税対策とされるメニューがまたヒドイ。酒と外食を除く飲食料品に軽減税率を適用するというが、こんなのインチキもいいところだ。
「軽減税率と聞くと、税負担が軽くなるように錯覚しそうになりますが、現行8%に据え置くというだけの話で、軽減ではなく“継続税率”です。負担軽減策でも何でもない。生活必需品は非課税にするなら分かりますが、1000円の食料品を買って、支払いが1100円か1080円かの違いしかありません」(五十嵐仁氏=前出)
何もないよりはマシとはいえ、8%据え置きの軽減税率では低所得者の痛税感を緩和する効果はほとんどない。メリットが大きいのは高級食材で自炊できる富裕層だ。庶民にも恩恵があるかのように書く新聞報道にだまされてはいけない。
「軽減税率がいかがわしいのは、恣意的に特定の業界・業種を優遇できるところで、ワイロの温床になるのです。適用を求める業界は自民党に献金し、役人に天下りポストを用意する。大新聞はカネではなく論調を差し出す。メディアがまともに機能していれば、安倍政権はとっくに退陣に追い込まれていました。ところが軽減税率にあやかりたい大新聞は、時々批判するフリだけで、本質的な問題には切り込まない。ヤクザ者にケンカの仲裁を頼んだら、骨の髄までしゃぶられるに決まっています。権力にオネダリしてしまった新聞は、民主主義社会の必要条件である権力を監視する機能を果たせなくなった。だいたい、社会保障制度を維持するために消費税増税が必要だといって国民に痛みを強いておきながら、自分たちだけ特別扱いしてもらおうなんて、おかしいのです。これで、いざ軽減税率の適用が確定するまで大新聞は政権批判をできなくなったし、今後さらに消費税を上げる段にも、軽減税率を8%のままにするか10%にするかの攻防がある。未来永劫、政権には逆らえないということです。そんな大新聞が書く政府の増税対策なんて、デタラメばかりと思った方がいいでしょう」(消費税問題に詳しいジャーナリストの斎藤貴男氏)
増税実施を1年も前に表明したのは、憲法改正に向けてメディアを飼いならしておく魂胆もあるのだろう。
■消費者のための対策ではない
軽減税率の他に挙がっている増税対策も、住宅や自動車を購入する人を税制と財政で支援する、幼児教育や低所得者の大学無償化を着実に実施、中小の小売店でキャッシュレス決済すれば2%分をポイント還元など、効果が疑わしいものばかりだ。
住宅や自動車は庶民がそう頻繁に買うものではないし、幼児教育の無償化にしたって、生活保護世帯や非課税世帯はすでに無料もしくは低額だから、恩恵を受けるのは、むしろ高所得世帯だ。
「いま政府が増税対策と称しているものは、すべて大企業と富裕層のための対策です。消費税増税で苦しむ消費者や中小企業のためではない。住宅や自動車購入の優遇措置は、その業界が困らないようにということです。2%のポイント還元なんて、中小イジメとしか思えません。現金商売でやっているところは、キャッシュレス決済のための設備を導入しなければならないし、カード決済では手数料も取られる。クレジットカードを持っていない人には還元されないのかという問題もある。要は増税対策を名目にして、政府がキャッシュレス化を進めようとしているだけなのです。誰がいつどこで何を買ったか把握できて、マイナンバーと連動させれば、あっという間に監視社会の出来上がりです。消費税そのものが、弱者がより多く負担する汚い税ですが、その対策も腐りきっています」(斎藤貴男氏=前出)
この増税にも、対策にも、一分の理もないことが分かる。だいたい、消費税増税の前提だった議員定数削減はどうなったのか。学校建設や武器輸入で安倍のお友達を喜ばせるために、税金を納めているわけではないのである。
ハッキリしているのは、この人でなし政権が続くかぎり、増税しても社会保障の充実は望めないということだ。人生100年時代などと言って死ぬまで働かせ、病気になれば自助を強いる。なけなしの税金は、安倍のバラマキ外遊やバカ高いだけで役立たずのイージス・アショア代に消えてしまう。それでも国民は黙っていられるのか。
今回の安倍の増税表明で、さすがに政権の醜悪な正体に気づいたはずだ。