2018年10月25日木曜日

25- 内閣府統計 雇用者報酬の上振れを異例の修正へ

 政府は、毎月の雇用者報酬の調査で今年から意識的に高賃金グループを調査対象に加えた結果、過大な賃金上昇率を示すようになりました。
 エコノミストらから批判を受け、内閣府はようやく「雇用者報酬」の実績値を下方に修正する方針を固めました。
 
 今年になってからの公表値を、調査対象を変更する前に近いとされる「参考値」と比べたグラフが、8日付の西日本新聞に掲載されています。それを見れば一目瞭然、著しい上方偏位を示しています(「参考値」そのものが、従来の値よりも高い疑いもなくはありません)。これでは賃金上昇率の捏造と言われても仕方がなく、ここでも内閣の捏造体質が確認されました。。
  関係記事
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内閣府統計、異例の修正へ 雇用者報酬 厚労省調査の上振れ受け
西日本新聞 2018年10月24日
 厚生労働省の毎月勤労統計調査で今年に入って賃金上昇率が高めに出ている問題で、内閣府は同統計を基に算出している統計「雇用者報酬」の実績値を修正する方針を固めた。雇用者報酬の前年同期比上昇率も過大になっていると判断、名目ベースで今年1~3月期は3・1%から2・7%程度、4~6月期は4・1%から3・4%程度にそれぞれ引き下げる。基となる統計の異常による実績値の修正は極めて異例。内閣府は景気判断への影響は限定的とみているが、統計の作成経緯があらためて問われそうだ。
 内閣府によると、毎月勤労統計では算出に用いる労働者数データが1月に変更されるなどした影響で、実績値が上振れしていることを確認。雇用者報酬も連動する形で上振れしていると考えられるため、2009年7~9月期から18年4~6月期までの実績値を変更の影響を独自に加味し再計算する。修正値は11月14日に公表する予定。
 
 雇用者報酬は賃金動向を示す重要な経済指標で、政府がデフレ脱却の判断でも重視する指標。四半期ごとに国内総生産(GDP)と同時に公表され、今年に入っての名目ベースの上昇率は1~3月期が1997年4~6月期以来の高水準、4~6月期は現行の統計が始まった94年1~3月期以降で最大となり、専門家から過大推計を疑う声が上がっていた。
 一連の問題を巡っては、景気回復を急ぐ安倍政権への官僚の忖度(そんたく)や不作為を疑う見方もある。毎月勤労統計の上振れを厚労省が4月には把握していたのに修正作業がこの時期になったことについて、内閣府の担当者は「影響がすぐには分からず、厚労省からのデータ収集にも時間がかかった」と説明、そうした見方を否定した。
 
 
なぜ? 賃金統計“ゆがみ”放置 厚労省、対応遅れ認める
   エコノミストら批判
西日本新聞 2018年10月6日
 厚生労働省がようやく重い腰を上げた。毎月勤労統計調査で賃金上昇率が高めに出ている問題で、5日公表の8月分速報値から発表文の記載形式を変更。これでエコノミストやメディアの誤信を招きかねない状況はある程度改善されそうだ。ただ、アベノミクスの成否を占う重要な経済統計で、当初から認識していた数値の上振れをしっかり説明してこなかった「不作為」への批判は免れない。
 
 今回の変更で公表資料の前面に出した「参考値」は、数値が上振れする原因となった作成手法変更の影響を除いた数値で、実勢に近い。従来は公表資料の末尾に記載するだけで、上振れした公式値がそのままメディアに報じられてきた。
 メディア向けの「報道発表資料」では、公式統計値に作成手法変更の影響が出ていることも新たに記載した。厚生労働省の担当者は西日本新聞の取材に「もっと早く説明すべきだった」と対応の遅れを認めた
 
 参考値が前面に出ると、勢いがあったはずの賃金上昇率はなだらかになる。最も落差のあった6月の上昇率は、公式値よりも2・0ポイントも下がることになる。
 SMBC日興証券の宮前耕也氏は5日、参考値で賃金動向を分析したリポートを発表。「賃金の基調は変わっていない。正規労働におけるベースアップ率並みとみてよいだろう」とした。
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 厚労省が統計の作成手法を変えた1月分の確報値を公表したのは4月上旬。調査対象の入れ替えなどで数値が上振れしていることを認識していた。
 1月分の数値を分析した結果、前年同月比の賃金上昇率(賞与など除く)が0・8ポイント程度押し上げられているとの推計値も得ていた。しかし、こうした状況の説明資料をホームページ上で一般向けに公表したのは8月末だった。
 厚労省の担当者は「単月の数値では手法変更の影響がはっきり分からず、推移をしばらく見る必要があった」と釈明する。宮前氏は「これほどゆがみが大きい統計は問題であり、補正調整して公表すべきだった。なぜそれをしなかったのか」と首をかしげる。
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 毎月勤労統計の賃金上昇率は政府の景気判断にも使われる重要な経済指標だけに、公式値が高めに出ている影響は各方面に及ぶ。
 日銀は8月公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で参考値を重視して賃金情勢を分析、公式値は異常値として扱わざるを得なかった。一方、内閣府は公式値をそのまま使って別の統計「雇用者報酬」を算出しているため、推計値の下方修正を迫られそうな情勢だ。
 そもそも作成手法の変更は、麻生太郎副総理兼財務相の3年前の問題提起が発端だった。変更の説明に及び腰だったことを含め、政権への官僚組織の忖度(そんたく)や不作為があったのではないかとの疑念も浮かぶ。
 
 行政の情報管理に詳しい専修大の山田健太教授(言論学)は「統計の作成手法を変更し、継続性がない数値を使って国民に賃金情勢を誤認させようとしたと考えられる。統計にうそやごまかしがあってはならない」と指摘する。