2018年10月20日土曜日

消費増税は法人税と所得税を減税するため/低所得者層ほど負担率が上がる

 植草一秀氏は、安倍政権下で国民の購買力が減衰の一路をたどっているなか、消費増税などはとても無理なので、いまはそれを謳っておいて、選挙直前消費税増税を再々再延期するカードを切る筈だとするブログを発表しました。
 増税を既定路線化しておいて、選挙直前に増税延期のカードを切れば、選挙においてプラスに作用するという見え透いた作戦で、安倍政権は1411166選挙でそれを行って、選挙を有利に展開できたという成功体験を持っています。
 
 そしてこれまで消費増税が強行されてきた理由は、社会保障制度維持のためでも、財政健全化のためでもなく、「ただひたすら、法人税と所得税を減税するためだった」ことを、数字で分かりやすく説明しました。
 メディアは何故か消費税の問題になると著しく腰が引けて、反対は愚か、そうした実態を報じることがありません。植草氏は、この何よりも重要な「知られざる真実」をすべての主権者に正確に伝えなければならないと述べています
 
 それとは別に、しんぶん赤旗(19日付)は、消費増税に当たり、食料品などを8%に据え置く「複数税率」を導入しても、貧富の格差がさらに拡大することを試算により明らかにしました。
 消費税率8%の段階で、年収2000万円以上の世帯における消費税負担率は1・5%であるのに対して、年収200万円未満の世帯では8・9%と7・4ポイントの差がありました。
 消費税率を10%(複数税率適用)にした場合、年収2000万円以上の世帯では1・8%、年収200万円未満の世帯では10・8%となり。その差は8・7ポイントに開きます。
 
 植草一秀氏のブログとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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メディアが伝えぬ税制改悪の知られざる真実
植草一秀の「知られざる真実」 2018年10月19日
10月15日の臨時閣議で安倍首相は、2019年10月に消費税を予定通り10%に引き上げる考えを改めて示したうえで、経済に影響を及ぼさないように対応することを指示した。
菅官房長官は
「消費税率については、法律に定められたとおり、来年10月1日に現行の8%から10%に引き上げる予定であります。今回の引き上げ幅は2%ですが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応いたしてまいります」
と述べた。
年内に予算編成があり、税制を固めることが必要である。この時点で消費税増税を凍結する決定を行う可能性はない。したがって、年内の予算編成、税制改正大綱を固めるためには、この段階での方針確定が必要である。
 
しかし、このことは、2019年10月の消費税増税が必ず実施されることを意味しない。
安倍首相はこれまで消費税を選挙に利用してきた。このことが今後においても踏襲されるだろう。菅官房長官は10月7日のNHK番組で
「消費税引き上げは「リーマンショックのようなことがない限り実施する」
と述べている。「ただし書き付きの言い回し」がミソである。
 
消費税増税を再々再延期するなら、そのカードをもっとも高く売りたい。これが安倍内閣の考え方だ。
いまから消費税増税延期を言ってしまえば、このカードを選挙の切り札に使えなくなる。したがって、カードを切るタイミングは選挙直前になる。
2014年11月、2016年6月に、選挙直前にカードを切って、安倍内閣は選挙を有利に展開した。今回も同じことを考えていると見られる。
2019年10月の消費税率10%はあり得ない選択である。消費税増税を強行実施すれば、日本経済は確実に崩壊する。5%や8%とはインパクトが異なる。しかし、それ以上に重大な問題がある。それが、これまでの日本の税収構造の変化が示している「知られざる真実」だ。
 
1989年度と2016年度の税収構造を比較してみよう。
税収規模は1989年度が54.9兆円、2016年度が55.5兆円である。
税収規模はほぼ同一である。しかし、税収の構成比が激変した。
所得税 21.4兆円 → 17.6兆円
法人税 19.0兆円 → 10.3兆円
消費税  3.3兆円 → 17.2兆円    これが税制改悪の実態なのだ。
この27年間の変化は法人税が9兆円減り、所得税が4兆円減り、消費税が14兆円増えたことだけなのだ。
     国税収入:1989年度と2016年度の比較(単位:兆円)
 
 
1989年度
2016年度
増 減
 
税収合計
54
55
+ 0.6
 
所得税
21
17
- 38
 
法人税
19
10
- 87
 
消費税
3
17
139
 
多くの国民は騙されている。日本の財政状況が危機的で、社会保障制度を維持するためには消費税増税が必要であると聞かされてきた。しかし、現実はまったく違う。
法人税減税と所得税減税を実施するために消費税増税が行われてきただけなのだ。
政府は消費税収を社会保障支出に充てるというが、社会保障支出の国庫負担金額は33兆円程度あり、消費税収がこの金額に達するまでは、「消費税収はすべて社会保障支出に充当する」と言うことができる。
 
目的税でない限り、一般財源の税収を特定の支出費目に充てるとの「言い回し」は何の意味をも持たない。
消費税増税が強行実施されてきた理由は、社会保障制度維持のためでも、財政健全化のためでもなかった。ただひたすら、法人税と所得税を減税するためだけのものだった。
何よりも重要なこの「知られざる真実」をすべての主権者に正確に伝えなければならない。
 
 
消費税増税 「低所得者に配慮」と言うが 複数税率でも格差拡大
       本紙試算
しんぶん赤旗 2018年10月19日
 安倍晋三首相が改めて表明した来年10月の消費税増税で、食料品などを8%に据え置く「複数税率」を導入しても、貧富の格差がさらに拡大することが、本紙の試算で明らかになりました。
 
 消費税率8%の段階で、年収2000万円以上の世帯における消費税負担率は1・5%、同200万円未満の世帯では8・9%と7・4ポイントの差でした。一方、消費税率を10%(複数税率適用)にした場合、年収2000万円以上の世帯では1・8%、同200万円未満の世帯では10・5%でその差は8・7ポイントと開きます。
 試算は総務省「全国消費実態調査」(2014年)を使い、2人以上の世帯について年収に対する消費税の負担率を算出しました。
 なお、年収200万円未満の世帯で消費税負担率が消費税率を超えるのは、貯蓄を取り崩して生活しているためです。
 
 政府は消費税率10%への増税を強行するにあたって、「低所得者に配慮する」ために「複数税率」を導入するとしていますが、収入の低い世帯ほど高負担となる「逆進性」がさらに悪化することは明白です。
 


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