2018年10月25日木曜日

社会主義への意識が極端に低い日本 マルクス生誕200年(世に倦む日々)

 ブログ「世に倦む日々」が、イプソスという調査会社が世界28カ国で調査を行った結果を紹介しました。

 それによると「社会が進歩するために、社会主義的な理念は重要な価値を持つ」かどうか質問に対し、価値を持つとの回答比率が高い順に、中国84%、インド72%、マレーシア68%、トルコ62%、南アフリカ57%、ブラジル57%、ロシア55%等々で、先進国で見てみると高い順に、スペイン54%、スウェーデン51%、カナダ49%、英国49%、豪州49%、韓国48%、イタリア47%、ドイツ45%等々ですが、それに対して日本最も低21%した。
「世に倦む日々」氏は世界で最も右寄りな国が日本で、日本は右翼大国だと言断定決して大袈裟でも不正確でもない事実がこの統計で証明されている」としています。
 そして「日本の右傾化は世界の中でも突出した極端な現象で、日本は特別に社会主義を嫌悪しているという現実を知るべきだし、世界の中で日本がどのようなイデオロギー的状態にあるか、正面から真摯に向き合って自分自身を見つめるべきだろう」と述べています
 衝撃的な事実です。
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マルクス生誕200年 - 世界での社会主義の意識調査結果と日本 
世に倦む日々 2018年10月23日
今年はマルクス生誕200年の年で、一昨日(21日)は専修大学で「カール・マルクス、その現代的意義を問う」と題されたシンポジウムが催された。五つの分科会が企画され、各4時間の報告と討論が行われていて、それぞれ内容豊かな議論がされていたことが窺われる。12月には法政大学でも国際シンポジウムが開かれるらしい。欧州各国でも記念事業が行われ、出版物のラッシュが続いていると伝えられている。昨年、米国の意識調査に関する記事があり、米国の若者の4割が米国の経済システムを変えるべきだと考えていて、社会主義・共産主義を肯定的に受け止めている割合が半数近くに上っている事実に接して驚かされた。マルクスに対して32%が好意的だという数字が出ている。この調査はVCMHという機関によるものだ。それと重なるものとして、2016年にハーバード大学政治研究所が行った調査があり、18-29歳の若者3183人に質問して回答を得たところ、51%が「もう資本主義は支持しない」と答え、「資本主義を支持する」の42%を上回る結果が出たとある。社会主義を支持すると答えた者が33%もいたらしく、この数字にも驚かされる。 
 
米国の若者の意識が変わっていることは、最近のNHK-NW9の報道でも痛感させられた。サンダースやオカシオ・コルテスの選挙運動に加わったある若者を取材していたが、言葉が左翼活動家そのもので、米国の現在がこんなになっているのかと衝撃を受けた。彼はもともとITのシステムエンジニアで、リーマンショック後の不況とリストラ禍で職を転々とする日々を送り、米国の経済社会をラディカルに変革する必要を訴えていた。その言葉が知的で明解で、聞きながら米国の前途の明るさを感じさせられた。上の調査結果を証明するサンプルと考えてよい。もう一つ、今年9月に出た英国の情報にも注目させられる。コービンが党首になって左寄りに旋回した英国労働党は、19万人だった党員を56万人にまで増やし、その原動力となっているのがジョン・マクドネルの新社会主義の路線だとある。9月下旬にリバプールで行われた党大会には、欧州各国から若い社会主義者が多数参加して、会場が熱気で充満していた様子が伝えられている。左に路線を変えた労働党の党員になったのは、新自由主義経済の低賃金の下で苦境に喘ぎ、未来の希望を奪われている若者たちだろう。これが社会の自然の動きというもので、存在が意識を規定する姿である。
 
新自由主義に反発し、資本主義の矛盾を正面から受け止め、問題解決の方向性として社会主義に目を向け始めた若者が、米国と英国で顕著に増えている。米国にはサンダースがいて、英国にはマクドネルがいて、カリスマの存在がこのムーブメントを牽引しているのは事実だが、それだけが米英の意識変化の要因ではなくて、米国と英国の新自由主義の弊害が甚だしく、格差の困窮が耐えられないレベルに達している現実があるのだろう。米国と英国こそ、新自由主義のお膝元であり、世界を新自由主義の経済社会に染め上げていった本源地だった。フランスとドイツで、ここまでの左の波が起きないのは、フランスとドイツで社会民主主義的な公共政策がそれなりに機能し、英国や米国のようなドラスティックな格差社会になってないからだろうか。マルクス生誕200年は、本来、もっとフランスやドイツで賑やかに祝賀されるべきで、壮麗なイベントが挙行され耳目を集めてよいと私は思うが、残念ながらやや物足りない。パリ・コミューンの歴史を持つフランス人こそが、最もラディカルでプログレッシブな資本主義批判の旗手となって世界の先頭に立つべきだし、ドイツ人こそが弁証法哲学の何たるかを世界に教え、資本主義の将来の運命を弁証法的に説明し予言するべきなのだ。
 
関連して、ここにもう一つ、興味深い統計データがあるので紹介したい。イプソスというマーケティング・リサーチの会社が世界28か国で調査を行った結果で、「社会が進歩するために、社会主義的な理念は重要な価値を持つ」かどうかを質問して得た回答が出ている。社会主義を肯定するかどうかを問うた世論調査だ。それによると、高い順番に並べて、中国84%、インド72%、マレーシア68%、トルコ62%、南アフリカ57%、ブラジル57%、ロシア55%、アルゼンチン52%、メキシコ51%の人々が「同意する」と答えている。新興国に暮らす人々は社会主義の思想と理念への共感の程度が高い。先進国を見てみよう。高い順に並べて、スペイン54%、スウェーデン51%、カナダ49%、英国49%、豪州49%、韓国48%、イタリア47%、ドイツ45%、米国39%、フランス31%となっている。そして、最も低いのが日本の21%で、この調査全体で異様で例外的な位置にあることが分かる。私は、世界で最も右寄りな国が日本で、日本は右翼大国だと言っているけれど、その断定が決して大袈裟でも不正確でもない事実がこの統計で証明されている。日本の右傾化は、世界の中でも突出した極端な現象なのだ。日本は特別に社会主義を嫌悪している
 
私たちは、まずこの現実を知るべきだし、世界の中で日本がどのようなイデオロギー的状態にあるか、正面から真摯に向き合って自分自身を見つめるべきだろう。無知なしばき隊の連中が、韓国のようにデモをせいと扇動し、デモをする文化のある韓国人が羨ましいと嘆き、韓国の民主主義を美化し日本の民主主義の未発達を自虐するツイート三昧に耽っているが、デモの政治的伝統が云々と言う前に、社会主義に対する認識と評価が日韓でこれほど違うのであり、日本は世界の最下位で、社会主義の理念に肯定的な者の割合が韓国の半分以下なのだ。世界最強の反共国家なのであり、反共主義の信念が国民全体に骨の髄まで染みこんでいて、デフォルトで反共思想に共鳴するのが日本なのである。毒々しい極右の政権が6年続き、高支持率を維持し、公共放送がその日本会議の指導者をニュース番組で礼賛し続けている。親米の反共極右国家であることに満足し、テレビもネットも中国憎悪のプロパガンダばかりやっている。そんな国でどうやって反資本主義や反安倍の大規模デモが起きるのだろう。せいぜい起きるとすれば、反中国の戦争扇動デモだろう。そして、この反共意識を支えている主役は若者層なのである。英国や米国とは全く逆のイデオロギー現象が起きている。
 
さて、もし、このイプソスの意識調査が40年前に行われていたらどうだっただろう。そのことを想像していただきたいし、その仮定と考察が、日本がここまで極右国家になってしまっている真実の意味と理由を知る通路になると思われる。おそらく、60%が「同意する」と答えただろう。先進国の中で最も高かったに違いない。根拠を挙げよう。当時、野党は悉く社会主義を党の理念として掲げていた。日本社会党は「社会主義」、日本共産党は「科学的社会主義」、公明党は「人間的社会主義」、民社党は「民主的社会主義」。それぞれの政党が掲げる社会主義の中身は違うが、しかし看板の理念として社会主義を掲げていたのであり、それだけ社会主義は世間に評判のいい言葉だった。自民党政権を総選挙で倒して政権交代した暁には、社会主義者の政党が連携して政権を担うという想定と展望になっていた。そうした過去の事実を正しく確認した上で、この20年ほどの過程を振り返ることを促したい。田原総一朗の「朝まで生テレビ」とか、ビートたけしの「TVタックル」で、共産党や社民党の議員が幾度も幾度も悪質な吊し上げに遭い、生番組で出演者や司会者から侮辱と罵倒の暴言を受け、公共敵のレッテルを貼られて排斥される場面が横行した。それは横行から横溢になり、視聴者の感覚が麻痺して当然の常識の範疇になった。
社会主義は有無を言わせず迫害され排除された。山口二郎が主導した小選挙区二大政党制の政治システムの下で、社会主義政党はゴミ箱行きの不要物にされた。社会主義は、無前提に、説明なしに絶対悪と決めつけられて袋叩きの目に遭った。