2018年10月12日金曜日

改憲を急ぐ理由はどこにもない(沖縄タイムス)/ 来年の憲法改正は無理(小泉氏)

 安倍首相は10月末に開かれる臨時国会で、憲法審査会に改憲案を提示することを必死に目指しています。次の国会で改憲を審議することを支持する国民は10%にも満たないなかで、どうしてそんなに急ぐ必要があるのでしょうか。勿論どこにもありません。
 しかも肝心の改憲案は自民党の中ですらまとまっていないし、いまある私案はとても専門家の審議に堪えるものではありません。
 沖縄タイムスが「臨時国会と改憲 急ぐ理由どこにもない」とする社説を掲げました。
 
 また、小泉元首相は10日夜、自民党の山崎元副総裁、武部元幹事長、中谷元防衛大臣と会合を開き、憲法改正国民の幅広い理解を得る必要があり、野党側の協力がなければ実現できないという認識で一致しました。
 小泉氏はその後記者団に「来年、憲法改正なんて無理だ。野党と協力してやるべきもので、選挙の争点にしないほうがいい」と述べました。
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社説[臨時国会と改憲]急ぐ理由どこにもない
沖縄タイムス 2018年10月11日
 内閣改造後初めての臨時国会が今月下旬、召集される。 政府は、西日本豪雨や北海道地震などに対応するため、補正予算案を提出し、早期成立をめざす方針だ。
 自民党総裁選で憲法改正への意欲を繰り返し明らかにしてきた安倍晋三首相が執着しているのは、自民党がまとめた憲法改正案の提出である。
 首相本人が前のめりになればなるほど野党は反発し、国民は警戒する。与党の中でさえ合意形成は進んでいない
 自民党総裁選では、石破茂・元幹事長との考え方の違いが表面化した。衆院憲法調査会の幹事を務める船田元氏は首相の姿勢に「同調できない」として総裁選で白票を投じた。
 自民党は当初、公明党と事前調整を進める意向だったが、山口那津男代表は「憲法審査会での議論が基本」だと主張し、与党協議を否定した。
 創価学会の中には9条改憲に対する警戒心が強い。沖縄県知事選で問われたのも「平和の党」としての存在意義だった。
 
 各種世論調査でも憲法改正の優先度は極めて低い。共同通信社が9月に実施した世論調査では、臨時国会への党改憲案提出に51%が「反対」と回答した。
 安倍首相の姿勢が改憲の「私物化」だと批判されるのは、こうした状況を無視して強引に改憲を進めようとしているからである。
 改憲を発議するのは国会であって首相ではない。首相が気負って旗を振れば振るほど「安倍改憲」への疑問と懸念は深まるばかりだ。
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 一体、どのような深謀遠慮が働いているのか。
 安倍首相は、臨時国会に自民党の憲法改正案を提出し、来夏の参院選前に国会発議するスケジュールを描いていたといわれる。
 党役員人事で安倍首相は、側近の下村博文・元文部科学相を党改憲本部長に起用するなど改憲シフトを敷いた。
 だが、憲法改正原案を臨時国会に提出するのは現状では不可能である。
 首相が考えているのは、衆参両院の憲法審査会に4項目の自民党改憲案を提示し、その中で与野党が協議し、必要があれば一部修正をした上で、憲法改正原案を策定する、という流れだ。だが、立憲民主党などの野党は、こうした手順にも反対している。
 間違っても、来年の参院選前に発議したり、参院選と同時に国民投票を実施するというような、強引な改憲が行われてはならない。
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 臨時国会では、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案をめぐっても、激しい議論が展開されそうだ。
 現行法は、投票日の2週間前まではテレビやラジオの広告・宣伝のためにいくら金を使っても構わない仕組みになっている。資金量を誇る改憲派が有利なのは明らかだ。
 憲法9条の1項、2項を維持した上で新たに自衛隊を明記する改憲案は、成立したあと、憲法解釈がとめどなく広がっていく可能性が高い。
 
 改憲をめぐる問題はあまりにも多く、首相の意向で改憲を急ぐのは極めて危うい。
 
 
小泉元首相「来年の憲法改正は無理だ」
NHK NEWS WEB 2018年10月11日 5時
小泉元総理大臣は、10日夜、東京都内で、自民党の山崎元副総裁らと会合を開き、安倍総理大臣が強い意欲を示す憲法改正について、野党の協力が不可欠だとして来年の実現は無理だと指摘しました。
 
会合には、小泉元総理大臣のほか、自民党の山崎元副総裁や、武部元幹事長、それに、中谷元防衛大臣が出席しました。
この中では、安倍総理大臣が強い意欲を示している憲法改正について、国民の幅広い理解を得る必要があり、野党側の協力がなければ実現できないという認識で一致しました。
 
このあと、小泉氏は記者団に対し「来年、憲法改正なんて無理だ。3分の2の国会議員の賛成がなければ発議できないのだから、過半数の賛成でできる問題とわけが違う。野党と協力してやるべきもので、選挙の争点にしないほうがいい」と指摘しました。
そのうえで、「野党の反対があるのに自民党だけで進めていい問題ではない。自民党の党是だから主張はいいが現実の国会で通すのは別問題だ」と述べました。