2018年10月6日土曜日

イラン原油の輸入 アメリカの禁輸要求を拒否したEU

 EUは、トランプ米大統領によるイラン原油輸入禁止措置を拒否し、アメリカが関与できない決済システムを構築しました。
 
 トランプ米大統領は5月8日、核計画に関するイランとの合意から米政府が離脱すると宣言し、イランに対する全ての制裁の復活を発表しました。その一環として6月、日本を含む世界各国にイラン産原油の輸入を11月4日までにゼロにするよう求めました。それは「適用除外はない」とする強硬なもので、理不尽を絵に描いたような話でした。
 いずれアメリカの外交的孤立化を招くと言われた無謀なものですが、同じようにしてアメリカが課した対露経済制裁は整然と行われている(アメリカの作戦がより巧妙であった)ので、アメリカの要求を跳ね付けることが果たして可能なのかと懸念されました。
 
 そもそもアメリカがそうした横暴な行為ができるのは、(石油)貿易の決済がドルで行われているからです。
 EUは、新たな法的枠組み特別目的事業体SPV)を設立し、ヨーロッパ企業がEUの法律に従って、イランとの貿易を続けることが可能になる・・イラン石油の輸入を継続し、イランの巨大市場を有利に開拓することが可能になるようにしました。
 2018年8月にEUで施行された新たな規則によれば、ヨーロッパ企業、特にイランと貿易をしていてアメリカによって制裁されたものは、ヨーロッパの裁判所で、アメリカ経済制裁に異議申し立てし、アメリカ政府やアメリカ企業からの補償を要求する権利があるとされました。
 
 こうした構想は、既にロシア・中国・その他で行われている独自の貿易決済方式に共通するもので、アメリカの外交的孤立化を進めることになります。
 それにしても日本はアメリカの要求に対して一体どう対応するのでしょうか
 文中のJCPOAは「イラン原子力委員会」
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イランとの貿易を巡り、アメリカを殴ったEU
マスコミに載らない海外記事 2018年10月 5日
Salman Rafi Sheikh New Eastern Outlook 2018年10月3日
 NEOのこのコラム記事で、以前分析した通り、対イラン経済制裁というアメリカ政策は、アメリカの外交的孤立化を招き、第二次世界大戦以来、最も信頼できる同盟者、ヨーロッパを、敵対的な立場に追いやった。この地政学的距離の理由は、トランプ政権が行った、一連の離脱と、政策逆転にあるが、イランが突出しているのは、主にアメリカ中東政策全体が、今やイランに集中していること、つまり、イスラエルとサウド家に有利なように、イランの全面降伏を強いる命令だ。だがEUは、イランの条約違反に関するアメリカ-イスラエルの言説を信じていないためだけでなく、イランとの生産的な関係を維持したいこともあって、アメリカ単独覇権主義の流れを止めようとしているのだ。イラン石油の輸入と、イランの巨大市場を有利に開拓することだ。そこで、EUは貿易を促進し、イランがアメリカ経済制裁を回避するのを支援する新たな法的枠組みを設定すると決定したのだ。
 
 ニューヨークでの国連年次総会に合わせて、欧州連合外務・安全保障政策上級代表フェデリカ・モゲリーニとイラン外務大臣モハンマド・ジャヴァード・ザリーフが“特別目的事業体”(SPV)を発表して、この画期的進展が起きた。EU代表はSPVについてこう説明した。“実際には、これは、EU加盟諸国が、イランとの合法的な金融取り引きを促進するための法人を設立することを意味し、これでヨーロッパ企業が欧州連合の法律に従って、イランとの貿易を続けることが可能になり、世界の他のパートナーに対しても開放される可能性がある。” 極めて重要なことは、この事業体が、石油を含むイラン輸出に関する支払いを促進することだ”とモゲリーニは述べた。
 
 言うまでもなく、この仕組みの創設で、JCPOAも損なわれずに維持される。より大規模な地政学的領域で、今やEUは、イランとのあらゆる取り引きや貿易のためのアメリカ経済制裁を回避する必要性に関し、ロシアと中国と完全に一致することになった。ここで、法的な枠組みを実施することで、今やEUが、常にアメリカの脇役を演じる、これまでの立場から変わり、自立した当事者として、グローバル地政学に、しっかり復帰したことはいくら強調してもし過ぎることはない。
 
 そこで、アメリカ経済制裁政策に対する態度を明確にするということになると、EUはもはや歯に衣を着せない。欧州委員会は、アメリカがヨーロッパ企業に対して課する‘二次的経済制裁’は違法と見なすと既に発言している。2018年8月に施行された新たな規則によれば、ヨーロッパ企業、特にイランと貿易をしていて、アメリカによって制裁されたものは、ヨーロッパの裁判所で、アメリカ経済制裁に異議申し立てし、アメリカ政府やアメリカ企業からの補償を要求する権利があるのだ。障壁規則、EU企業を保護する枠組みが、ここで初めて登場したわけではないことを忘れてはならない。1996年、アメリカが、イランとキューバに対し、二次的経済制裁をした際、この法律が発令された。当時は、この法律の発令だけで、アメリカが経済制裁をやめるよう強いたのだ。イランを制裁し、イラン経済を損なわせるサウジアラビアとイスラエルの圧倒的な圧力からして、トランプ政権に、そのような逆転が期待できるかどうか推測するのは困難ではない。我々が予想できるのは、イランを巡るEU-アメリカ間のはっきり目に見える制度的分裂だ。
 
 だがSPVによ、この締めつけも、イランを激しく攻撃するのにもはや十分強いものには見えない。これで、イランは、EU市場向けに、少なくとも40%の石油輸出を維持することが可能になり、EUの巨大エネルギー企業はイラン経済に投資できるのだ。インドなどの、イランとの貿易は継続したいが、アメリカの圧力に屈している国々にとっても容易な逃げ道を切り開くことになる。
 
 同様に重要なのは、SPVが、ベルギーを本拠とするSWIFTシステムを回避し、アメリカの干渉を阻止する可能性と、相応しいと考えられる時期に、最終的に、ドルの威力を失わせる結果になるだろうことだ。
 
 この制度は、もし十分早く、完全に機能するようになれば、アメリカの影響力や干渉から独立した金融システムの構築を目指しているロシアと中国の施策とぴったり一致する。このシステムの成功は、それゆえ、ロシアと中国をその軌道に誘いこむ可能性が高く、EUと、ロシアや中国や地域の他の消極的な国々との間の金融協調という新時代の下地を作ることになる。一つは、SPVがドルの代わりに、ユーロを主要貿易・準備通貨とすることで、もう一つは、それがユーロがグローバル金融システムにおいて、より積極的な役割を演じる下地を作ることにもなる。EUが、こうして自分たちの通貨を兵器化した以上、通貨戦争は、もはや中国とアメリカ間でのみ演じられるものではなくなろう。
 
 そう、これはアメリカが、ヨーロッパから予想できたはずのものだ。イランと事業を行うEU企業が経済制裁から免除されるのを、ワシントンが認めるのを拒否した後の全面的反撃だ。この反撃は極めて巨大で、EUのアメリカとの合意や、アメリカの主要競争相手、ロシアや中国を含む他の国々に、EUがどう対処するかを完全に書き換える可能性がある。既に中国との貿易戦争の真っ只中にあるアメリカとEUとの間の‘消耗戦’は反米諸国を結束させるに違いない。
 
 サルマン・ラフィ・シェイフは国際関係とパキスタンの外交と内政評論家、オンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事。
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