かつての「ハマコー王国」の中心地:君津市長選(14日投開票)でも自・公候補が敗れ、現行ではただ一人の女性市長が誕生したということです。
現在の国会において自民党が圧倒的な大勢力を築けたのは、一にかかって公明党の協力があったからで、接戦区のほとんどで創価学会の組織票が自民候補を勝たせたことによるものです。
もともと平和の党を標榜した公明党が、改憲勢力である自民党を必死に応援するのは実に解せない話で、特定秘密保護法、自衛隊の海外派兵を可能にした新安保法制、そして戦前の治安維持法に通じる共謀罪法などの成立にすべて協力しながら、与党内に留まることで悪政に歯止めをかけていると言われても国民は納得しません。
先の沖縄知事選で、公明党と創価学会の幹部たちが「基地のない沖縄」が悲願である沖縄の創価学会員に自民党候補への投票を強制したことが、こうした欺瞞的な構造に破綻をもたらしました。
安倍首相は先の公明党大会で「山口那津男代表は私にとっての必勝のパートナー」と持ち上げましたが、それは決して「お世辞」ではありません。しかしその「自公必勝パターン」は沖縄から崩れ始め、沖縄・那覇市長選(21日投開票)と新潟市長選(28日投開票)でも公明党(創価学会)は自主投票の構えです。もしも二つの選挙で、連続して自民候補が敗れることになればその影響は甚大です。早くも雪崩現象が始まっているのかどうか注目されます。
高野孟氏の連載記事「永田町の裏を読む」を紹介します。
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永田町の裏を読む
沖縄の「自公必勝パターン」粉砕が全国の地方選に波及か
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年10月18日
ローカルな話題で恐縮ながら、私の居住する房総半島・鴨川市の隣の君津市で14日に市長選挙が行われ、連合千葉の推薦を受けた市民派の石井宏子前県議が勝利した。
当日有権者数7万2292人、投票率50%余りというこの小さな選挙が注目されるのは、第1に、この君津市を中心に富津市、木更津市は、かつての「ハマコー王国」の中心地で、東京湾岸の埋め立てや、それに伴う漁業権の調整、アクアラインの建設などを取り仕切った故・浜田幸一が作り上げたガチンガチンの保守地盤であること。第2に、これまで3期を務めて今回引退した鈴木洋邦前市長は、祖父が町長、父が市長という申し分のない地元名門で、その後継として地盤をそっくり引き継いだ保守系無所属の渡辺吉郎元県議会事務局長は断然有利とみられていた。そして第3に、渡辺は鈴木から「自公推薦」による選挙態勢も受け継いでいた。が、蓋を開ければ渡辺の1万4736票に対し、1万6084票を得て県下54市町村で現職唯一の女性首長の誕生となったのである。
14日にはもう一つ、沖縄県の豊見城市でも市長選があり、「オール沖縄」の山川仁前市議が20年続いた保守市政を転覆した。
私の直感は、沖縄県知事選で玉城デニーを支えた「オール沖縄」が自公一体の選挙協力態勢を打ち砕いたことが、全国の地方選、ひいては来夏の参院選にまでボディーブローのように効いていくというものである。本欄でも触れたように、自公ともに全国総動員のように運動員を沖縄に投入して総力戦を挑んだにもかかわらず、肝心の地元で特に創価学会員の造反が激しく、デニーの街頭演説で学会三色旗を打ち振って応援する学会員の姿が何度もテレビに映し出された。
これが刺激となって、安保法制の強行採決への不満から始まった学会底辺部の発熱状態が、あちらこちらで発火現象を引き起こすことが予感される。つまり、安倍晋三首相が先の公明党大会で「山口那津男代表は私にとっての必勝のパートナー」とお世辞たっぷりに持ち上げてみせたその「自公必勝パターン」が、明らかに沖縄から崩れ始めたのである。
そういう観点から、21日投開票の那覇市長選でのオール沖縄の現職=城間幹子と自公などが推す翁長政俊前県議の対決、28日の新潟市長選での共産、社民、自由、立憲民主、国民民主の「オール野党」が支持する小柳聡の戦いぶりに目を向けていきたい。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。