丸山穂高衆院議員は先の通常国会で、国後島へのビザなし渡航の際に戦争による北方領土奪回に言及したことなどに関し衆院から糾弾決議を受け、「国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない」と事実上の辞職勧告を出されました。
丸山氏は衆院議院運営委員会による事情聴取の求めに対しては病気を理由に拒否しました。現在はN国に入党し居座っています。
その丸山議員が、韓国が実効支配し領有権を主張する島根県の竹島について、ツイッターでまたもや「本当に交渉で返ってくるんですかね? 戦争で取り返すしかないんじゃないですか」と発信しました。反省するどころか、開き直ったような暴論の繰り返しで、憲法9条にも抵触するものです。
多くの新聞が社説で取り上げ、看過できない・辞職するのが筋だと指摘しました。
三つの社説を紹介します(一部、導入部分について省略しました)。
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社説 また「戦争発言」 議員辞職を重ねて求める
新潟日報 2019/09/04
糾弾決議を受けながら、またもや言語道断の「戦争発言」である。国会議員の資質を欠いているのは明らかだ。改めて議員を辞職するよう求める。
NHKから国民を守る党の丸山穂高衆院議員が、韓国の国会議員団が上陸した島根県・竹島(韓国名・独島)に関して、「戦争で取り返すしかないんじゃないですか」と自身のツイッターに投稿した。
丸山氏は5月、ロシアが実効支配する北方領土に関して、戦争で取り返すことの是非に言及し、衆院から異例の糾弾決議を受けている。
国後島の元島民に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」などと迫ったのに続く今回の投稿だ。
投稿では「『我が国固有の領土』において自衛隊が出動し、不法占拠者を追い出すことを含めたあらゆる選択肢を排除すべきではないのでは」とも記載している。
竹島は日本の領土だが、現状は韓国が実効支配している。韓国の議員団は竹島が韓国領だと主張し、日本の輸出規制強化措置に抗議すると訴えた。
日本としては受け入れられる主張ではないが、領土を戦争で取り返そうという丸山氏の投稿は問題外だ。日本国憲法が掲げる平和主義をないがしろにするもので、決して許されない。
元徴用工問題に端を発し、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄を決定するに至った日韓関係は、戦後最悪の事態となっている。
そうした中で飛び出した今回のツイートである。国会議員はあくまでも話し合いによる外交努力を求めることが責務だろう。国同士の関係悪化を助長し、戦争を肯定するような言説を弄(ろう)することは、理解に苦しむ。
衆院が6月に全会一致で可決した糾弾決議は丸山氏に対し、「国会議員の資格はない」「直ちに、自ら進退について判断するよう促す」と非難した。
しかし丸山氏は辞職を拒み、さらに今回、衆院の権威を無視するかのように確信的に戦争に言及した。
与野党問わず、多くの議員が「論外だ」「直ちに議員辞職を迫る必要がある」「懲罰委員会で聴取すべきだ」などと批判の声を上げている。
丸山氏はこれにも反発し、「問題提起であって憲法上も法律上もなんら問題ない。言論封殺の圧力には屈しない」とツイッターで反論した。
だが、事は言論封殺などではない。身勝手なすり替えにすぎない。戦争で領土を取り返すという考えを持つ人物が国会議員である事実に慄然(りつぜん)とする。
丸山氏は日本維新の会から除名され、その後、要請を受けてN国に入党した。N国は、元秘書への暴行疑惑が浮上した石崎徹衆院議員(比例北陸信越)に対しても、自民党を離党し入党するよう呼び掛けていた。
党の議席を増やすため問題のある議員を集めるようなやり方は、政治不信を深めるだけだ。
社説 丸山氏戦争発言 やはり議員の資格なし
北海道新聞 2019/09/04
(前 略)
竹島には先月末、韓国の国会議員団が上陸し、日本政府が抗議した。丸山氏は抗議を「またまた遺憾砲」とやゆした。
「朝鮮半島有事時を含め、『我が国固有の領土』において自衛隊が出動し、不法占拠者を追い出すことを含めたあらゆる選択肢を排除すべきではないのでは?」とも書き込んでいる。
憲法は武力による国際紛争の解決を禁じている。
その憲法を順守すべき国会議員が、日韓関係が極度に悪化している時に公然と「戦争」を口にする。双方の国民感情をあおり、解決を一層困難にするだけだ。そんな道理すら分からないのだろうか。
国後島で、酒に酔い「女を買いたい」などと騒ぐ醜態をさらしたことも忘れるわけにはいかない。糾弾決議は「人間としての品位を疑わせる」とまで非難した。
丸山氏は当時、衆院議院運営委員会による事情聴取の求めに対し病気を理由に拒否、弁明文書提出にとどめた。その後、参院選で立花孝志党首が議席を得た「NHKから国民を守る党」に入党した。
日本維新の会を除名され「1人でできることに限りがある」からだと言う。体調が回復したのなら、国会の品位を傷つけた言動について、国会に直接の説明と謝罪を進んで申し出るのが筋だろう。
N国入党も解せない。NHK受信料を支払った人のみが視聴できるスクランブル放送導入を掲げ、受信料の不払いを勧める党だ。
だが丸山氏は以前にツイッターで「見ないから受信料を払わないというのは法令上通らない」との見解を発信している。丸山氏、立花氏の双方とも、ご都合主義の数合わせとのそしりを免れまい
<社説>「戦争」語る国会議員 不問に付してはならない
琉球新報 2019年9月5日
(前 略)
今回のツイッターでの発言は、日本と韓国の関係が悪化している中、自ら「炎上」を誘うことで存在感を示す狙いがあったのだろう。
相次ぐ丸山氏の不適切な発言を、非常識な一国会議員の妄言として片付けるわけにはいかない。
現行の憲法は悲惨な戦争を二度と起こしてはならないという深い反省の上に生まれた。9条は戦争の放棄を定め、武力行使をほのめかして威嚇することも禁じる。
さらに99条は天皇、国務大臣、国会議員、裁判官、全ての公務員に、憲法を尊重し擁護する義務を課している。
丸山氏は竹島を巡る発言への批判に、「問題提起であって憲法上も法律上もなんら問題ない。言論封殺の圧力には屈しない」と反論した。
再び戦争の惨禍が起きることのないように全力を尽くすのは、国政に関わる全ての政治家の務めだ。たとえ問題提起であっても、領土問題を解決する手段として「戦争」を持ち出すなど、論外である。
発言が不問に付されるのなら、今後、武力行使を公然と主張する国会議員が次々と現れる恐れがある。その結果、憲法の平和主義の理念がなし崩しにされ、戦前、戦中のような軍国主義体制へと逆戻りしかねない。
日中戦争から敗戦までの日本人の戦没者は310万人。沖縄では全国で唯一、おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦が繰り広げられ、住民の4人に1人が亡くなった。
人々に地獄の苦しみをもたらす戦争の実相に思いを巡らせるなら、「戦争で領土を取り返すしかない」などと軽々しく口にできるものではない。
N国の立花党首は「問題提起という意味では、何も発言しない国会議員よりいいと思う」と丸山氏を擁護した。「戦争」への言及に拒否感を抱かないのか。見識が問われる。
怖いのは、戦争を容認するような国会議員の発言に、国民が鈍感になってしまうことだ。国権の最高機関である国会が事態を傍観することは許されない。丸山氏の発言に対し、国会としての意思を明確に示すべきだ。