2019年9月8日日曜日

嫌韓ファシズムの元凶立憲民主を批判しない共産も同罪(世に倦む日々)

 このところ「世に倦む日々」氏が、日韓対立の問題に関し頻繁にブログを書いており、かつてのエネルギーが戻ってきたようです(尤もその後はツイッターを主戦場にしたようで、そこでは相変わらす鋭い意見・考察を旺盛に発表しています)。
 
 同氏によれば、立憲民主党は、韓国がGSOMIA破棄決定したとき、「今回の決定は極めて遺憾」で「決して容認でき」ないとする声明逢坂誠二 )を出し、亀井亜紀子党国際局長、「両国政府の合意を韓国が破り、信頼関係を損ねたことは残念」「党の見解政府と異なるわけではない」として、徴用工問題についても「日韓請求権協定で解決済み」「補償は韓国側の責任と断じたということです
 GSOMIA破棄への批判は、いわば米国の極東戦略に無条件で賛同する『日米軍事同盟(安保条約)至上主義』に立脚したものでした。
 
 野党第1党の立憲民主がそうした立場を表明し、それとは見解が異なる筈の日本共産党がそれに対して何の批判もしないのであれば、壇蜜氏のような良心派の国民も拠って立つところの「立つ瀬」がないので政府の見解に倣う発言しかできなくなる  、「世に倦む日々」氏はそう述べて、共産党も同罪であるとしました。
 しんぶん赤旗の読者であれば共産党の見解は十分に承知している訳ですが、国民一般に対しては「しんぶん赤旗に書いてある」では通用しません。野党共闘を重視するあまり立憲民主を批判しなかったというのであれば、それはやはり公党として間違っています。たとえ共闘すべき仲間であったとしても、必要な批判は時期を失せずに適宜に行わないことには、国民は真の姿を理解しません。そうしたことを指摘するブログです。
 
 韓国紙・京郷新聞の志位委員長インタビュー記事(しんぶん赤旗7日付)を併せて紹介します。
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嫌韓ファシズムの元凶は野党だ - 立憲民主を批判しない共産も同罪
世に倦む日々 2019-09-06
先週(9/1)のTBSサンジャポでの壇蜜の発言が気になった。通常なら、テレビでの政治発言の影響を気にして、控えめなスタンスを心掛け、事務所から睨まれないよう、タレント生命が危うくならないようにお茶濁しのコメントに徹する壇蜜が、この日は口汚い過激な言葉で文在寅を罵倒していた。強烈な文在寅叩きの口上を並べて太田光を歓ばせていた。政治発言においては、事務所と番組の意向を忖度し、テレビ局の思惑と視聴者の期待に上手に合わせつつ、慎重に言葉を選んで個性を出すのが壇蜜の身上だ。一般のマスコミ右翼論者と異なり、多少ともライト・リベラルでニュートラルな芸能人表象の壇蜜が、毒々しい悪意を文在寅に叩きつけ、火を吐くような嫌韓の嘲罵で生放送の意見を終始させたのを見て、テレビの前で些か狼狽させられた。壇蜜は、なぜこのような極端で凄絶な文在寅叩きのプロパガンダを吠えたのだろう。 
 
無論、番組と事務所の意向に沿って役割演技したからだが、視聴者が壇蜜に期待するライト・リベラル(light liberal)で穏健な立場性というイメージに対して、今回、壇蜜が全く配慮する必要がなく、その前提を破り、むしろ視聴者が唖然とするほど強硬な口調で文在寅に罵倒を浴びせたことについては、理由と背景を考えなければならないだろう。答えは簡単で、国内に文在寅を擁護する政治勢力がないからである。また、本人の生き残りのためだ。立憲民主党がこの問題で政府と立場を一致させていて、韓国政府を厳しく批判しているからで、いわば右から左まで文在寅叩きで一色に染まっているからだ。芸能人が韓国側を擁護する足場がない。あの関口宏が文在寅叩きの急先鋒になっている。もし誰かタレントが文在寅を支持する発言をしたら、その者は二度とテレビの仕事をもらえなくなるだろう。壇蜜は関口宏を見て右へ倣えしたのに違いない。
 
GSOMIA破棄の決定が出た後、立憲民主党は逢坂誠二の名前で声明を出し、「決して容認できるものではない」とか「今回の決定は極めて遺憾であると断ぜざるを得ない」と言っている。上から目線が顕著な表現だ。また、党国際局長の亀井亜紀子は、「両国政府の合意を韓国が破り、信頼関係を損ねたことは残念だ、という見解をこれまで来日した韓国議員団には伝えており、政府と異なるわけではありません」と平然と言っている。要するに安倍政権と同じなのであり、この問題についての認識と対応に差がなく、韓国側が一方的に不当だと糾弾しているのだ。徴用工問題については日韓請求権協定で解決済みだと言っていて、補償は韓国側の責任だと断じている。立憲民主党の左には共産党しかなく、そんな位置にタレントが立つのは完全に無謀な自殺行為だ。芸能界で静かに仕事にありつきたい壇蜜が、立憲民主党より左の異端に身を置けるわけがない。
 
立憲民主がどういう理念の党かということは、この韓国問題がまさにリトマス試験紙の役割を果たしていて、党の反動的本質を照らし出している。基本理念は自民党と同じであり、外交と安全保障の政策において自民党と差はない。問題なのは、むしろ、外交と安保で自民党と根本的に対立しているはずの共産党が、「野党共闘」の手前、立憲民主に忖度し、この問題で立場を濁していて、文在寅叩きの空気に結果的に同調していることだ。もし、共産党が元徴用工の人権を尊重する態度を明確にし、日韓請求権協定の神聖化と不可侵から離れた本来の立場に立つなら、立憲民主党の姿勢を鋭く批判しなくてはいけないだろう。徴用工問題と日韓請求権協定について、立憲民主党の主張が正しいのか、文在寅の主張が正しいのか、どちらが正しいのか。科学の党の共産党はどういう判断なのだ。「韓国に100%の理があり、日本に100%の非がある」とする浅井基文に、賛成なのか反対なのか。
 
共産党は今すぐ、この問題で立憲民主党への 忖度をやめないといけない。そうしないと、日本国内にこの問題で安倍晋三に対抗する世論を興すことができず、嫌韓で一色になったファシズムの状況を変えることができない。共産党はプロだから分かっているだろうが、文在寅への憎悪をマスコミが激しく煽れば煽るほど、安倍政権の支持率は自動的に上がる政治の生理現象となる。安倍政権の支持率が上がれば、安倍晋三の秋国会での改憲策動はスムーズな環境となり、憲法審査会での主導権を握られる展開となる。9条改憲を支持する世論も高まる。読売と日経で58%という安倍晋三の高支持率は、マスコミの韓国叩きの扇動が媒介しているのであり、この政治に歯止めをかけないと一気に改憲へと持って行かれてしまう。その情勢を理解しているはずの左翼に、なぜこれほど危機感がないのだろう。なぜ、マスコミのグロテスクな文在寅叩きを放置容認しているのか。「どっちもどっち」論で座視を決め込んでいるのか。
 
韓国側の言い分が正しいとする論理と根拠は、すでに浅井基文によって提供されている。明快で説得的な国際政治学のセオリーであり、理論武装として十分である。韓国国民にとっての日韓請求権協定は、われわれにとっての日米地位協定であり、すなわち、不平等な国家関係の押しつけと人権軽視の象徴なのであって、止揚の地平が求められていることを理解すべきである。95年の村山談話の精神に即けば、韓国国民が「65年体制」と呼んで忌み嫌う日韓請求権協定に拘泥すべきではなく、ここは日本側が譲歩を決断して、元徴用工の救済に踏み出せばよいのだ。ドイツのポーランドへの謝罪外交を見倣えばよい。2010年に菅談話を発表して、その認識を継承しているはずの立憲民主党が、今回の問題で極右安倍政権と方針を同じくしている点は腑に落ちない。韓国側が提案している「1+1+α」に乗るべきで、経団連の説得に動くべきだ。何より、経済戦争のために無用な被害を受け、損失を出して苦しんでいる地方や企業のために、大胆な旋回を決意すべきである。
 
よく考えてみれば、韓国の元徴用工は、あの戦争の被害者であり犠牲者ではないか。われわれは8月になると、『火垂るの墓』や『この世界の片隅に』に落涙して神妙な気分になる。戦争の犠牲者に寄り添い、その傷みを自らのものとして微かに追体験する。戦争への反省を若干ながら誓う倫理的な生きものになる。一年のうちで一瞬だけだが、戦争の被害者に内在して平和主義者になる。平成天皇夫妻は、その態度がとても深くて誠実さが際立っていた。その思いや眼差しを、韓国の元徴用工や元慰安婦にも送ることができないだろうか。同じように、日本国家が起こした戦争のために人生を奪われ、国家暴力によって人権を踏みにじられた者たちなのだ。庶民の弱者なのだ。なぜ、われわれは、日韓請求権協定と元徴用工について、岸信介や佐藤栄作や安倍晋三と同じ視線で判断しなくてはならないのだろうか。日韓請求権協定の経緯を直視し、正確に検証すれば、そこに瑕疵があり、不満が残り、未解決の権利救済が残っていることは明らかだ。
 
先の戦争の被害者に対して、未解決の権利救済を図ろうとする動きは国内にもある。空襲の被害者に対して補償を求める運動がそうだし、原爆の被爆者が「黒い雨」の認定区域を拡大するよう国に求めた運動がそうだ。われわれは、朝鮮人元徴用工の運動についても、国境を越えて、国境を越えた市民社会(坂本義和)の論理で、内在的に接して要求を汲み取ることはできないだろうか。朝鮮人元徴用工たちも、清太や節子の兄妹と同じ不幸な人たちだと、コンパッション共感の目で見ることができないだろうか。彼らのことを、櫻井よしこや宮家邦彦や反町理のように、恰も日本の脅威である敵国の赤色分子を睨んで侮蔑と警戒を言うような、そういう目で見てよいのだろうか。もうこれ以上、嫌韓ファシズムの毒素を蔓延させてはならない。隣国政権への敵意を煽ってはいけない。野党は、日韓請求権協定と元徴用工問題に対する認識と判断を変えるべきである。浅井基文の理論をベースに据え直し、対韓歴史外交の政策を変更するべきだ。個人の請求権の補償・弁済に向けて、韓国政府と協力する方針を打ち出すべきだ。
 
 
「慰安婦」・強制徴用問題―歴史修正主義を最優先した安倍政権
   韓国・京郷新聞が志位委員長インタビュー
しんぶん赤旗 2019年9月7日
 韓国の全国紙・京郷新聞は4日付に日本共産党の志位和夫委員長のインタビュー記事を掲載しました。「志位和夫日本共産党委員長『歴史修正主義を最優先した安倍政権、慰安婦・強制徴用問題を放置』」と題する記事で、志位氏は日韓関係悪化の原因や安倍政権による政経分離原則に反する対韓輸出規制強化の問題点や、植民地支配への反省が不十分な原因などを解明しているほか、安倍外交の相次ぐ失敗などについても解説しています。同記事のうち、一問一答部分の日本語訳は次の通りです。
 
日韓関係悪化の原因は
 ―韓日関係が悪化している。
 「安倍政権に原因がある。大法院の強制徴用判決を国際法違反だと言って、被害者の尊厳と名誉を回復する責任を放棄し、韓国に対する一方的な非難を続けた。対抗措置として輸出規制を使い、政経分離の原則に反する禁じ手を使った。そうしておきながら、安保上の輸出管理(体制の)再検討だと言った。欺瞞(ぎまん)的な態度だ。根本原因は安倍政権が植民地支配への反省を放置してきたことだ。1995年の村山談話、1998年の金大中・小渕宣言などは、1990年代後半に植民地支配への反省を語った。当時、安倍首相は歴史修正学派の若手旗手として(登場し)、歴史を書き換えること、戦争は正しかったのでありこれを遂行した日本は美しい国だと言うことに力を注いだ。2015年の安倍談話で、韓国の植民地化を進めた日露戦争が植民地支配に苦しんでいるアジアの人々に勇気を与えたとあべこべに語った。黒を白だと言って、侵略戦争を正当化した。歴史修正主義を繰り返しながら、慰安婦であれ徴用問題であれ、正直な対応をしなかったことが今の問題を生み出した
 
徴用工問題 どう解決
 ―日本国民の支持が高い。
 「政治が韓国蔑視と排外主義をあおり、メディアの多くも同調している。日本政府は、徴用問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだというが、(被害者の)個人請求権は消滅していない日本政府もこの点を認めている。日本の最高裁判所も2007年、中国の強制連行被害者の裁判で、個人請求権が実体的に消滅したものではないとして、西松建設が和解して賠償金を支払った。中国にできたことが、なぜ韓国にはできないのか。日韓の政府と最高裁判所が、個人請求権は消滅していないということで一致している。これを重視して、民間訴訟を政治問題に拡大せず、被害者の尊厳と名誉を回復する措置を取らなければならない」
 
安倍政権の狙いは
 ―他の目的があるのだろうか。
 「安倍政権は一貫して隣国を侮辱して、自らの支持層にアピールして、支持率を上げようとしている。たとえば、韓国に対する仲裁委員会の要請の回答期限を参院選(投票日の)直前に定めた。見え見えだ。そういうふうに自らの支持率を上げようとしているのであり、そういうやり方にメディアの多くが同調しているのが大きな問題だ。政治家としてやってはならないことだが、安倍首相はずっとそれをやってきた政治家だ。前回の総選挙では、北朝鮮(問題)を『国難』だとまで言って衆議院を解散した。北朝鮮問題をさんざん利用したが、トランプ大統領が対話路線に行ったので、今はそういうわけにはいかないので、ほかのところに矛先を向けている。ただし、それにとどまらない動きも生まれている。最近の(貿易規制拡大)行為は、日本が自ら首を絞めるものだ。韓国の観光客が急減するなど、経済にも悪影響が出ている。こういう過程のなかで、日本国内でも理性と良識の声が次第に広がっている」
 
「嫌韓」の雰囲気拡大しているが
 ―「嫌韓」雰囲気が広がっている。
 「日本にもまともな、理性的な声を出す人が多い。(嫌韓は)政治が意図的に拡散させている。多くの日本国民は侵略戦争への反省の気持ちをもっている。ただ、植民地支配に対する反省は、戦争に対する反省より弱い。36年間の朝鮮半島支配がどのように行われたのか、基本的な事実がちゃんと知られていない。戦争をしたことは悪いと考える日本人の中でも、植民地支配についてよく知らない人が少なくない。何が誤っていたのか、ひとつひとつ明らかにしなければならない。私たちの責任だと思う。ただし韓国も、安倍政権の政策に対して批判するのは当然だが、反日は困る」
 
安倍外交をどう評価する
 ―安倍外交を評価すると。
 「安倍外交にはうまくいったものが一つもないではないか。四方八方、行き詰まっている。トランプ米大統領の言いなりに兵器を大量購入し、農産物市場を開放するなど、米国従属外交が極みに達している。ロシアにおべっかを使うような(領土交渉)外交は失敗した。韓国に対するどう喝外交も破たんした。安倍首相は『地球儀を俯瞰(ふかん)する外交』だと言うが、地球儀の『蚊帳の外』外交だ。対北朝鮮外交も大失敗ではないか。今までは圧力一辺倒で、『対話のための対話はない』と言っていたではないか。それに対する反省なしに(北朝鮮に対して)対話しようと言うからうまくいかない。さらに、安倍首相が力を注いだ原発輸出もうまくいかなかった」