2019年9月30日月曜日

「多次元」の大軍拡を謳った防衛白書

 27日の閣議で報告された19年版防衛白書は、「真に実効的な防衛力として多次元統合防衛力を構築する」として、従来の陸・海・空用兵器の拡充に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域も含めた大軍拡路線を強調するものでした。
 
 「いずも」型護衛艦の事実上の空母改修をはじめ、ステルス戦闘機F35B・長距離巡航ミサイル導入など、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有・強化をうたいました。
 またすでにミサイル迎撃能力が否定されているにもかかわらず、「イージス・アショア整備推進本部」を設置し配備強行しようとしています。
 中国などが宇宙・サイバー・電磁波といった新たな戦闘領域を組み合わせた「領域横断」作戦能力獲得を追求しているとして、日本もそれに対処するためにその方面の能力を強化することも謳いました。
 
 憲法違反でほとんど役に立たない米国の兵器を大々的に導入することに加えて、「領域横断」作戦能力獲得を目指すのでは、どんなに金があっても足りません。
 なぜ中国と張り合わなければならないのか。この先、際限のない軍拡競争を続けるのでは、軍需産業にとっては願ってもないことですが、国民はこのさき貧困化の一途をたどるだけです。
 
 北朝鮮は20年以上前に日本を射程圏内に収めるミサイル「ノドン」を完成させ、2009年には320基を配備しましたが、それで日本を攻撃することはありませんでした(攻撃された場合、イージス艦などのパトリオット迎撃ミサイルでは全く対応できないことは、先のサウジアラビアの産油施設破被爆事件で証明されました)。
 中国の近隣国家で、一体どこが中国の宇宙作戦への対抗策に走っているというのでしょうか。そんな国はないし、それでも現実に攻撃もされることはありません。
 要するに国を防衛するのに必要なことは、こけおどしの兵器を買い揃えるのではなく、近隣諸国との善隣友好を目指すことです。子供じみた軍拡競争は国家を破綻に導くもので即刻止めるべきです。
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大軍拡 「多次元」で 防衛白書 辺野古・陸上イージス推進
 しんぶん赤旗 2019年9月28日
 河野太郎防衛相は27日の閣議で、2019年版防衛白書を報告しました。昨年末に決定した新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を踏まえ、「真に実効的な防衛力として多次元統合防衛力を構築する」として、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域も含めた大軍拡路線を強調しました。
 
 北朝鮮の核開発について、18年版の白書は「実現に至っている可能性」と評価していましたが、19年度版は「核兵器の小型化・弾頭化を既に実現しているとみられる」と明記。北朝鮮の核・ミサイル能力は「本質的な変化は生じていない」と警戒しました。
 中国については「軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している」とし、宇宙・サイバー・電磁波領域の能力強化にも取り組んでいると指摘して、西太平洋で米軍の介入や展開を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」能力の強化につながるとしました。
 
 「いずも」型護衛艦の事実上の空母への改修をはじめ、最新鋭ステルス戦闘機F35B、長距離巡航ミサイル導入など、敵基地攻撃能力の保有・強化をうたっています。
 陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」導入をめぐって、配備候補地の秋田・山口両県への説明資料の誤りなどに関し「極めて不適切な対応があった」として「真摯(しんし)に反省している」としましたが、「イージス・アショア整備推進本部」を設置したとして、民意を無視しての配備強行をにじませています。
 
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、軟弱地盤の改良工事は「一般的で施工実績が豊富な工法」によって安定性を確保して工事が可能だと主張。圧倒的な新基地反対の民意が示された2月の県民投票の結果を「真摯に受け止め(る)」といいながら、新基地推進の強行姿勢を崩していません。
 
 
「領域横断」で戦場拡大 2019年防衛白書 宇宙から地上まで
 しんぶん赤旗 2019年9月28日
 27日公表された2019年版防衛白書は、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな戦闘領域を組み合わせた「領域横断」(クロス・ドメイン)作戦能力を獲得するとして、大軍拡路線を示しています。
 
中国を名指しで
 19年版防衛白書では、「領域横断作戦に必要な能力」の優先事項を整理(表)。これらの項目を実現するため、軍事費は過去最高を更新し続け、膨張の一途をたどっています。
 白書は、各国が「全般的な軍事能力において優勢にある敵の戦力発揮を効果的に阻害する非対称的な軍事能力の獲得のため、新たな領域における能力を裏付ける技術の優位を追求している」と指摘。とりわけ、この中で名指ししているのが中国です。
 これに対処するためとして、宇宙状況監視(SSA)体制構築、サイバー防衛隊の体制拡充、さらに電磁波領域では、相手方のレーダーや通信などを無力化するための能力を強化するとしました。相手の射程圏外から敵のレーダーや通信に電波妨害をかける「スタンド・オフ電子戦機」や、大量の電磁波を発生させ、地上の都市機能を破壊する電磁パルス(EMP)兵器などの導入に向けた研究開発を迅速に進めるとしています。違憲の敵基地攻撃能力につながります。
 
“夢の機体”
 同時に、陸・海・空の伝統的な領域でも一大強化を掲げています。
 敵の射程外から発射できる長距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の導入や、最新鋭ステルス戦闘機F35Aの増勢、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)能力をもつF35Bの導入などを示しました。「いずも」型護衛艦の改修の必要性について詳しく解説し、護衛艦でのSTOVL機の運用実現によって「戦闘機の運用の柔軟性をいっそう向上させ(る)」として、空母化の狙いを示しています。
 
 “自衛隊版海兵隊”水陸機動団の能力向上、陸上自衛隊V22オスプレイ導入による機動・展開能力の向上を強調。オスプレイについては、米国での訓練状況を伝える自衛官のコラムを掲載。「自衛隊全般の作戦様相を大きく変える能力を有する『夢の機体』」などと持ち上げています。
 
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