政治運動「オールジャパン平和と共生」(15年6月設立)の創設者で、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)など 多数の著書がある植草一秀氏が、ブログ
安倍政治本質と政権維持目的の三大選挙戦術(9月2日)
動員・妨害・分断での自公政権持続の終焉(9月3日)
を発表しました。
はじめのブログは、安倍政治の本質が3つの偏向した要素で構成されていることと、絶対支持率25%の政府与党が長きにわたって70%もの議席を維持できているのは、「選挙で多数議席を獲得するための確固たる戦術を有している」からであるとして、その戦術が3つの要素から成っていることを解明しています。。
2番目のブログではその選挙戦術の詳細を説明し、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という孫氏の言葉にならって、主権者勢力がそれに打ち勝つ戦術を構築する必要があると述べています。
どちらも短い論文ですが説得力があります。
二つのブログを紹介します。
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安倍政治本質と政権維持目的の三大選挙戦術
植草一秀の「知られざる真実」 2019年9月 2日
安倍政治の本質とは何か。三つある。
第一はグローバリズム。
第二は対米隷属
第三は歪んだ歴史認識
その結果として安倍政治の基本方向が 戦争と弱肉強食 になっている。
現代の戦争は「必然」によって発生していない。現代の戦争は「必要」によって発生している。「必要」とは、軍産複合体存続の「必要」である。日本は率先して米国の軍産複合体の手先になっている。
「戦争」を実現するには「敵」が必要だ。かつては「東西」という対立があった。
しかし、冷戦が終焉して「東西」を戦争の口実にできなくなった。
そこで子ブッシュが始めたのが「テロとの戦い」だ。
その「テロとの戦い」の口実にされたのが911のツインタワー崩壊である。
このツインタワー崩壊は米国政府の自作自演であった疑いが濃厚になっている。
世界を動かしている支配勢力の中心は巨大資本である。巨大資本が利益を極大化するための方策が「グローバリズム」だ。
世界統一市場を形成し、巨大資本の利益を極大化すること。これがグローバリズムの究極の目的だ。現実の経済政策に置き換えると「市場原理主義」になる。市場原理に委ねて労働コストを最小化する。
他方で「民営化」という名の「営利化」によって公的事業を民間利権に転換することも推進されている。
1995年、村山首相は談話を発表した。日本が遠くない過去に植民地支配と侵略によって近隣諸国、地域に多大の損害と苦痛を与えたことを率直に認め、痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明した。日本が近隣諸国と歴史認識を共有した瞬間だった。
その歴史認識を歪めているのが安倍政治である。
日韓の対立も戦前の植民地支配の評価を日韓が確定していないことから生じている。
1965年の日韓請求権協定にどこまでを含むのかについて、両国の立場に隔たりがある。
このことによって両国の司法判断にずれが生じているのであって、どちらの解釈だけが全面的に正しいとは言い切れない。
この安倍政治が長期間続き、日本の基本構造が破壊されつつある。
安倍政治は日本の既得権者の既得権を守る政治であり、その既得権者が米・官・業のトライアングルである。
米官業の利権を守る政治は、当然のことながら、主権者国民に不利益をもたらす。
主権者は多数の数の力によって政治権力を刷新する必要があるが、安倍政権が権力を維持してしまっている。
彼らが既得権を守るために実行している基本方策が三つある。この三つの基本方策を見破り、政権維持を不可能にすることが必要だ。
彼らの基本方策は
1.利権に連なる主権者の「動員」
2.利権につながらない一般市民の政治への関心の「妨害」
3.反権力勢力の「分断」
である。
利権に連なる主権者が全体の25%存在する。かれらを国政選挙で全員動員する。岩盤の政権支持層を構築するのだ。
他方、一般市民が政治に関心を持たぬよう、情報工作する。究極の目標は超低投票率である。
そして、とどめを刺す方策が、反権力陣営の分断だ。一言で表現すると「共産党と共闘する勢力」と「共産党とは共闘しない勢力」に分断する。
こうして反権力陣営を二つに分断すると、当選者が1人の選挙では自公の与党サイドが圧倒的に有利になる。
この三方策を見破った上で、政治を刷新する戦術を実行しなければならない。
(以下は有料ブログのため非公開)
動員・妨害・分断での自公政権持続の終焉
植草一秀の「知られざる真実」 2019年9月 3日
昨日9月3日、鳩山元首相が主宰されている「新エネルギー研究会議」でお話をさせていただいた。
そのあとにU Iチャンネルに出演し、鳩山元首相と対談をさせていただいた。
である。
2015年6月に「オールジャパン平和と共生」という名の市民による政治運動を立ち上げた。
鳩山元首相、原中勝征前日本医師会会長が最高顧問を引き受けてくださっている。
山田正彦元農相は顧問と同時に運営委員も引き受けてくださっている。
運動の運営は10名の運営委員が担っている。私もその運営委員の一員である。
多くの賛同者、参画者に支えられて地道ではあるが意義の深い活動を継続している。
私たちが掲げている目標は、平和、脱原発、共生である。
さらに、TPPプラスからの離脱、辺野古米軍基地建設中止を訴えている。
目指しているのは、現在の「戦争と弱肉強食の政治」を「平和と共生の政治」に転換することである。
実現には政治のプロセスを通過する必要がある。選挙を通じて新しい政権を樹立して初めて目標とする政策を実現できる。
そのための戦略の基礎に置いている基本が三つある。政策基軸、超党派、主権者主導 だ。
現在の選挙制度では、当選者がただ一人の選挙区が基軸に置かれている。
この選挙制度の特性を踏まえて戦術を構築しなければならない。
第2次安倍内閣が発足して間もなく7年の時間が経過するが、安倍自公政権は選挙で多数議席を獲得するための確固たる戦術を有している。
「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という孫氏の言葉がある。この言葉を実践する必要がある。
既得権勢力の基本戦術は三つのキーワードで表現できる。動員・妨害・分断 である。
この三手法で自公の与党勢力が多数議席を占有し続けてきた。
この策謀を打破しなければならない。現在の政治状況を生み出している、策謀による構造を打破する必要がある。
国政選挙で自公に投票する者は全有権者の25%程度に過ぎない。政治利権のおこぼれを頂戴しようとする人々が選挙に動員される。
主権者の4人に1人しか自公に投票していない。自民党に投票する主権者は5人に1人、あるいは6人に1人しかいない。それにもかかわらず、この自公が国会議席の7割を占有している。
この多数議席をもたらしている原動力が25%の主権者の「動員」である。
既得権勢力の第二の戦術は「妨害」だ。
妨害とは、残りの75%の主権者が政治に関心を持つことを「妨害」する、あるいは選挙に足を運ぶ意欲を持つことを「妨害」するのだ。
主権者が政治に関心を持たない、主権者が選挙に行く意欲を削ぐための方策の中核は「情報操作」=「メディア・コントロール」である。テレビ・新聞・雑誌などのマスメディアを支配するとともに、インターネットのポータルサイトを政治権力によって支配している。
このことによって主権者の判断、意思、思想形成が特定の方向に誘導されている。
そして、最重要の戦術が「分断」だ。
反自公の革新勢力が大同団結することが最大の脅威になる。そのために、反自公革新勢力の大同団結を阻止することが最重視されている。具体的には旧民主党勢力の一部が「共産党とは共闘しない」と叫ぶことがもっとも有効な方策になっている。
野党勢力を分断することによって野党票を分散させ、自公候補が選挙区で勝利する環境を整える。
既得権勢力のこの戦術を踏まえて主権者勢力が戦術を構築することが鍵を握る。
(以下は有料ブログのため非公開)