2019年9月26日木曜日

「表現の不自由展・その後」再開へ 検証委が中間報告まとめる

 愛知県で開催中の「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題で、県が設置した検証委員会は25日、「条件が整い次第、すみやかに再開すべきだ」とする中間報告をまとめました。
 芸術祭の実行委会長を務める大村秀章知事は、「しっかり踏まえて条件を整えた上で再開を目指したい」と表明しました。
 検証委員会は、実際の展示再開に向けては、「脅迫や電凸(電話による攻撃)等のリスク回避策を十分に講じること」「展示方法や解説プログラムの改善・追加」「写真撮影とSNSによる拡散を防ぐルールを徹底する」が必要としています。
 この間、名古屋市長や大阪市長が論外の反対行動を取りましたが、それらに対して的確に反論してここに漕ぎつけた大村秀章知事の健闘を讃えたいと思います。
 
 中日新聞と美術手帳編集部の記事を紹介します。
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「表現の不自由展・その後」再開へ 検証委が中間報告まとめる
中日新聞 2019年9月25日
 愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題で、県が設置した検証委員会は25日、「条件が整い次第、すみやかに再開すべきだ」とする中間報告をまとめた。芸術祭の実行委会長を務める同県の大村秀章知事は、「しっかり踏まえて条件を整えた上で再開を目指したい」と表明した。
 
 中間報告では、問題となった旧日本軍の慰安婦を象徴する少女像と昭和天皇を題材にした映像作品に関し、「作者の意図に照らすと展示すること自体に問題はない。制作の背景や内容の説明不足、展示の場所や方法が不適切」などと指摘した。
 その上で「来場していない人たちがネット上の断片映像や誤った情報に接して混乱を招いた」と分析し、映像作品は別会場で上映して作家に思いを語ってもらう機会をつくるなど、展示方法を再検討するよう提案。中止の原因となった脅迫や1カ月で1万件に上った電話やメールなどでの抗議に十分な対策を講じることも求めた。
 
 検証委は8月中旬から2回の会合で事実関係や問題点を洗い出し、今月21日に出品作家らを交えた公開フォーラムを開催。大村知事は24日の記者会見で「会期終了まで1カ月を切っている。速やかに対応を考えていきたい」と述べ、中間報告を踏まえて再開可否を判断する考えを示していた。
 
 
「表現の不自由展・その後」、展示再開の方向性定まる。検証委員会が中間報告
美術手帳編集部 2019.5.25
 あいちトリエンナーレのあり方検証委員会は9月25日、第3回会合を開き、中間報告として「表現の不自由展・その後」を再開すべきだとする方向性を示した。
 あいちトリエンナーレのあり方検証委員会は9月25日に第3回会合を行い、そのなかで委員会としての中間報告案を発表。「表現の不自由展・その後」について、「条件が整い次第、速やかに再開すべきである」との方向性が示された。
 
 実際の展示再開に向けては、「脅迫や電凸(電話による攻撃)等のリスク回避策を十分に講じること」「展示方法や解説プログラムの改善・追加」「写真撮影とSNSによる拡散を防ぐルールを徹底する」などの条件を提示
 具体的な展示方法の改善については、例えば大浦信行の映像作品《遠近を抱えてPartⅡ》については「今の場所では作家の真意が理解されにくい」としたうえで、別途会場での上映や、作家自身に作品への思いも語ってもらう機会をつくることなどを提案。また《平和の少女像》背景の説明をしたうえで、ガイドツアー方式の鑑賞を取り入れることなども提案された。
 
 この再開条件について、金井直委員は「鑑賞に必要な情報をさらに十分に提供する仕組みがないと展示は成り立たない」とし、「鑑賞者の意見には幅があり、多様な意見をいかに掬い取るかが重要」だと指摘。また岩渕潤子委員も「鑑賞者の受け止め方は広く受け入れるべき」だとし、対話的なやりとりを展覧会に組み込んでいくことが重要だと提言した。
 加えて、海外作家については「一部の作家はこれまでの海外事例に照らし、今回の中止判断がテロ対策や安全管理を表面上の理由とする実質的検閲と認識」しているとの見解が示されたうえで、「作家からの意見聴取とその分析、的確なコミュニケーション体制が必須」との考えが示された。
 また次回以降のあいちトリエンナーレについては、現在の体制はもはや機能しないとし、新体制の構築と継続開催の必要性を説いた。
 
 この中間報告を受け、大村秀章愛知県知事は「私としても条件を整えたうえで再開を目指したいと考えている」と展示再開への意欲を示している。
 なお中間報告の完全版は、10月半ば過ぎをめどに作成予定。検証委員会は9月25日付けで終了したうえで「検討委員会」に名称を変更し、今後に向けた活動に入るとしている。