2019年9月26日木曜日

大企業の現金・預金66・6兆円 バブル期超え過去最高に

 資本金10億円以上の大企業が保有する現金・預金が2018年度に666兆円となり、バブル期を超えて最高となりました。
 バブル絶頂期の1989年度65兆円でバブル崩壊後には取り崩しが進み、2007年度には315兆円りましたが、第2次安倍晋三政権が発足した12年度からは一路増加に転じました。大企業における内部留保の増加に歩調を合わせたものです。
 その一方で労働者の賃金は低迷しています。07年度に593・2万円だった大企業の労働者1人当たりの年間賃金は、18年度は578万円へと15万円以上も減少しました。
 この間格差が拡大するとともに労働分配率が悪化の一途をたどったということです。
 
 参考までに、1997年~2018年の主要各国における労働者の賃金(時間当たり)の推移は図の通りです(「日本、続く賃金低迷 97年比 先進国で唯一減」 東京新聞 19年8月29日より)。
 トップの韓国が170%上昇したのをはじめ、主要各国では労働者の賃金は上昇の一途をたどっていますが、日本だけはこの間82%減少しています。 
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 LITERAの記事「~実質賃金大幅マイナス、企業の内部留保最大でも安倍忖度マスコミ~」を併せて紹介します。
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大企業現金・預金66.6兆円 バブル期超え過去最高
 しんぶん赤旗 2019年9月25日
 資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を除く)が保有する現金・預金が2018年度に66・6兆円となり、バブル期を超えて統計を比較できる1960年度以降で最高となりました。財務省の法人企業統計で分かりました。
 大企業の現金・預金はバブル絶頂期の1989年度に65兆円でした。しかしバブル崩壊後、取り崩しが進み、2007年度には31・5兆円まで減らしています。第2次安倍晋三政権が発足した12年度からは一路増加に転じました
 大企業における現金・預金の増加は、内部留保の増加に歩調を合わせたものです。大企業の内部留保は07年度の228・4兆円から18年度は368・6兆円と、1・6倍にふくれあがっています。
 
 大企業の現金・預金と内部留保が増える一方で、労働者の賃金は低迷しています。07年度に593・2万円だった大企業の労働者1人当たりの年間賃金は、18年度は578万円へと15万円以上も減少しました。1989年の賃金、525・8万円と比較しても1割未満しか賃金は上昇していません。
 大企業が利益を上げても、有効な投資先を見つけられず、社内にためこんでいることを反映しています。大企業がそのもうけを賃金や設備投資に回してこそ、日本経済の健全な発展につながります。

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日経が消費増税対策で「ニンジンの皮を」…実質賃金大幅マイナス、企業の内部留保最大でも安倍忖度マスコミは国民に我慢を要求
LITERA 2019.09.25
 消費税の税率10%への引き上げまでついに1週間を切ったが、そんななか、ネット上である記事が話題を呼んでいる。
 「ニンジンの皮もおいしく! 増税に勝つ食べ切り術」
 
 これ、「オレンジページ」や「レタスクラブ」といった料理雑誌の記事ではない。なんと日本を代表する経済紙である日本経済新聞の記事(電子版21日付)なのだ。
 記事では〈食べられるにもかかわらず、捨ててしまう食品ロス。消費増税を前に、無駄なく、賢く食材を使い切る工夫を共有しよう〉とし、食品ロス対策に取り組む男女1000人に調査した結果として「ダイコンの葉 いためて」「ブロッコリーは茎や葉も使う」「ニンジンは皮ごと料理」といった提唱をおこなっているのだ。
 食品ロスを出さないようにすることは大事だ。でも、その理由が「増税に勝つ」って……。戦時中、「ぜいたくは敵だ!」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」といったスローガンで国民に国家への自己犠牲を強いた国民精神総動員のようではないか。
 だが、ネット民が騒然とするなかで、日経は「NIKKEI STYLE」というサイトでも23日付で「消費増税に節約で勝つ 日常生活品にこそ削る余地あり」なる記事を配信。「日常生活費を削減するため、まずは買わない生活を」「コンビニやスーパーで「買わない」に挑戦」などといった“マネーハック”お金の賢明な使い方を伝えている。
 
 しかし、これは日経だけの問題ではない。テレビをつければ「駆け込みで買ったほうがいい商品は?」だの「キャッシュレス決済でここまでお得に!」だのといった情報に終始し、せいぜい「軽減税率が複雑すぎる」といったツッコミが入るくらい。新聞も似たようなもので、消費増税が大前提の話題しか取り上げず、報じるべき肝心の問題にはふれないのだ。
 肝心の問題──それは言うまでもなく、この国のいまの経済はとても増税に耐えられる状態ではない、ということだ。
 実際、20日に厚労省が発表した7月の毎月勤労統計調査の確報値では、実質賃金が前年同月比マイナス1.7%を記録。マイナスとなったのは7カ月連続で、つまり今年に入ってずっとマイナスの状態なのだ。しかも、マイナス1.7%というのは3月のマイナス1.9%に次ぐ減少で、その上、7カ月中5カ月分でマイナス1.0%を超えている。
 
 さらに、景気動向指数の基調判断でも3・4月分で5段階ある判断のうちもっとも悪い「悪化」となった。5〜7月分では「下げ止まり」になったが、これも10月7日に発表される8月分では景気の現状を示す一致指数が前月比で0.1ポイントでも下落した場合、〈「悪化」に下方修正する条件がそろう〉という(共同通信9月6日付)。
 景気が「悪化」していると判断される可能性が高いなかで消費税を引き上げるなど、とてもまともな判断とは思えないが、その一方でまたしても「過去最大」を記録したのが、企業の内部留保だ。9月3日に財務省が発表した2018年度の法人企業統計によると、その額はなんと463兆1308億円で、過去最高を記録した前年度よりもさらに16兆6464億円も増加した。
 
テレビは消費増税の問題点に触れず、プレミアム商品券とポイント還元制度を宣伝
 安倍政権下で非正規雇用が増加し、実質賃金が減る一方で、企業は法人税の引き下げといった優遇を受け、内部留保は過去最高を更新しつづける──。消費増税というのは法人税を減税した分の穴埋めでしかないと指摘されているが、所得格差が改善せず高水準で横ばい状態のいま、よりにもよって低所得者ほど負担が大きくなる消費税を増税すれば、格差拡大はより深刻な問題になってゆくだろう。
 
 しかし、テレビはそもそも消費税の使途や、現在の経済状況で増税が実施されれば国民生活にどれほどの打撃を与えるかといった問題を掘り下げることもせず、前述したように「お得に買物ができるプレミアム付き商品券を活用しよう」だの「キャッシュレス・ポイント還元をおさらい」だのといった報道に終始している。本サイトは昨日の記事で、安倍政権がプレミアム商品券とポイント還元制度に74億円の「広報・宣伝費」をつぎ込んでいたことを指摘したが、この金がテレビに回っている結果ではないか、と疑いたくなるほどだ。新聞にしても同様だ。軽減税率の対象となったことで筆を完全に鈍らせ、消費増税をおこなうことの危険性を問い直すこともしない
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 こうした「消費増税は決定事項・不可避」という大前提に立った報道によって、国民も「仕方がないこと」だと擦り込まれ、景気が悪化していると示されても増税実施に大きな批判も起こらず、ついにここまできてしまった。まさしく安倍政権とメディアが一体となって正当化し、反対の声が大きくなることを封じ込めたのだ。
 そして、大手新聞が「増税に勝つ食べ切り術」「消費増税に節約で勝つ」などと書き立て、生活の苦しさは自分の工夫で乗り切れと追い打ちをかける──。国民に痛みを押し付けようとしているという意味では、安倍政権もメディアも同罪なのである。(編集部)