2019年9月15日日曜日

15- 日本完敗で達成された 安倍晋三の」戦後外交の総決算」(適菜 収氏)

 安倍首相は5日、極東ウラジオストクで開催された国際会議「東方経済フォーラム」で、「ポエム(詩)演説」と称されるものを行いました。
 
 日刊ゲンダイが7日付の記事領土返還は絶望的…安倍首相“ポエム演説”にネット民も呆然」で伝えたところによると、全体会合で行われた安倍首相の演説は、
「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。歴史に対する責任を、互いに果たしてまいりましょう。平和条約を結び、両国国民が持つ無限の可能性を、一気に解き放ちましょう。そのほとんど次の刹那、日本とロシアの連結は、地域を変える。世界を、大きく変え始めるでしょう」
というようなもので、
 それは「すがるような目をしながら」「同じ未来を見ている~2人の力で駆け抜けよう」と呼び掛ける「青年の主張」のような演説で、領土返還を迫る“迫力”はどこにもなかったとしています。
 1ミリの進展もなかった日ロ交渉に「空想の世界」に逃げるしかなかったと見え、元外交官の孫崎享氏も「(ポエム調は)交渉行き詰まりの証左とも言えるでしょう」と述べています。
 さすがのネトウヨも唖然呆然とするしかなかったようです。
 
 また14日付のLITERA記事「安倍首相がプーチンに贈った“失笑ポエム”「駆けて、駆け、駆け抜けよう」の元ネタはヘイト雑誌のタイトル?では、その「ポエム演説」について、元文科事務次官の前川喜平氏は「誰が書いたか知らないが、文学としてもお粗末と突っ込み、共産党・志位和夫委員長も「ウラジミール、君と僕は同じ未来を見ている」「ゴールまで、ウラジミール、2人の力で駆けて、駆け、駆け抜けよう」よくもこんな台本を書いたものだし、読めたものだと切って捨てたと書いています
 
 まさにそうした代物なのですが、その原稿は谷口智彦・内閣官房参与が書いたと言われています。そして谷口氏は安倍首相のこんな言葉を紹介しているということです。
「谷口さんのスピーチ原稿はうまいんだよ。外務省に書かせるとお役所的になっちゃうけど、谷口さんのは違う。練習で読み上げているときに、自分でも思わず涙ぐんでしまうんだ」
 練習中に自分でも思わず涙ぐんでしまうって。「ウラジーミル、君と僕は…」も涙ぐみながら練習したのだろうか・・・LITERAはそう書いています。なんとも、なんともな話です。
 
 前置きはこれくらいにして作家適菜 氏によるシリーズ「それでもバカとは戦え」の「日本完敗で達成された 安倍晋三の『戦後外交の総決算』」を紹介します。
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それでもバカとは戦え
日本完敗で達成された 安倍晋三の「戦後外交の総決算」
日刊ゲンダイ 2019/09/14
プーチンに全力恭順
 ロシア政府がウラジオストクで開いた「東方経済フォーラム」全体会合で安倍晋三が演説。プーチンに向かって、「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう、プーチン大統領」「ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」と発言。ネットでは「気色悪いポエム」「青年の主張」などと揶揄されていたが、恋をしているのかもしれない。これまでもプーチンに会えば、体をくねくねと動かし、瞳を潤ませ、全力で恭順の意を示してきた。
 
 一方、プーチンは安倍を「金づる」「ぱしり」くらいにしか思っていない。安倍がウラジオストクに到着した日には、色丹島に建設された水産加工場の稼働式典にテレビ中継で祝辞を述べ、実効支配をアピール。会合翌日には「(北方領土は)スターリンが全てを手に入れた。議論は終わりだ」と切り捨てた。要するに最初から1島たりとも返す気はない。
 安倍は演説でロシアの四行詩を紹介。
 
「ロシアは、頭ではわからない。並の尺度では測れない。何しろいろいろ、特別ゆえ。ただ信じる。それがロシアとの付き合い方だ」
 安倍がやっていることはこれだ。ホストに大金を貢ぐおばさんと同じ。プーチンが安倍と27回も会ったのはなぜか。「同じ未来を見ている」からではない。ボンクラが日本の総理をやっているうちに、むしり取れるものはむしり取るためだ。狡猾なプーチンが千載一遇のチャンスを見逃すわけがない。
 
 2018年9月12日、プーチンは、平和条約締結後に2島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言に言及した上で、「前提条件をつけずに年内に平和条約を締結し、すべての問題の議論を続けよう」と発言。これは日本とロシアが積み重ねてきた交渉のすべてを反故にするものだが、安倍は拒絶するどころか謎の満面の笑み。この態度が問題になると、「プーチンに対し直接反論した」と嘘までついている。ある意味で安倍の言う「戦後外交の総決算」は達成された。日本の完敗という形で。
 実際、政府は「北方四島は日本に帰属する」という記述を外交青書から削除している。この期に及んで安倍政権を支持する日本人がいるのだから、戦後の平和ボケもここに極まったと言うべきだろう。 
 
 適菜収 作家
1975年生まれ。作家。ニーチェの「アンチクリスト」を現代語訳した「キリスト教は邪教です!」、「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の正体 」など著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。