韓国人徴用工に対する補償問題で、韓国政府が韓国大法院(最高裁)の判決を放置していることを不満として、安倍政権が対韓国輸出規制などの「韓国いじめ」の政策を発動したことに端を発した日韓対立は、どんどんエスカレートしいまや抜き差しのならない段階に達しました。
韓国の半導体製造に支障が生じればそれを使う日本の製品に影響が及ぶことは言うまでもありませんが、韓国が、それまで日本からの輸入に頼っていた重要材料の国内調達に舵を切った結果、高純度フッ化水素について、韓国の「LGディスプレー」が国産品代替に成功し今月中に生産工程に適用出来る見通しが立つなど、「日本離れ」が加速しています。そうなれば韓国への販路は将来も断たれます。規制3品目はいうまでもなく、日本への依存度が高い多くの工業材料が早晩そうなることは明らかです。
折しも中国の元安が加速しているので、昨年の来日客数が838万人とトップだった中国人が今後減る可能性は高いと見られています。2位の韓国人は7月の来日客数は約8%減に留まりましたが、来日抑制が厳しくなる8月以降は一桁上がると見られています。
こうして日本経済の頼みの綱である輸出とインバウンドが悪化の一途をたどるなかで、10月の消費増税が追い打ちをかけるわけです。
地道に稼ぐしかないのに韓国叩きという傲慢な方針を取った結果、日本の経済はこのさき光明が見いだせない事態となりました。
顧みて、中国人の徴用工問題では被害者と日本企業との間で和解が成立したのでした。それを安倍政権は韓国人相手では原告の元徴用工と被告の日本企業との和解を予め禁じたのでした。
2日の会見で、記者からそのことを質問されたのに対して、菅官房長官は答弁不能となりました(しんぶん赤旗)。
日韓の不毛な対立の責任は挙げて安倍政権にあります。
日刊ゲンダイとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
+「韓国、日本車販売57%減 8月前年比不買運動が影響(東京新聞記事)」追加
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自滅する日本経済“頼みの綱”の輸出とインバウンド崩壊危機
日刊ゲンダイ 2019/09/03
日本経済の頼みの綱である輸出とインバウンド。米中貿易戦争の激化と日韓関係の悪化で、その雲行きが怪しくなってきた。そこに、10月の消費増税が追い打ちをかける。日本経済は、どこにも光明が見いだせないトンネルに突入しようとしている。
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トランプ米政権は1日、制裁関税4弾を発動。テレビや衣服、靴など中国からの輸入品1120億ドル(約12兆円)分に追加関税率15%を課したが、中国は涼しい顔をしているという。
「先月、11年ぶりに1ドル=6元台から7元台に突入しました。現在は7.15元付近ですが、7.2~7.3元になれば、第4弾の関税はチャラにできるとの見方があります。これまでの米国の制裁関税は、元安が進んだため、中国にはそれほど打撃になっていない。米国の制裁が続けば、さらなる元安は避けられません。困るのは日本の輸出企業です」(金融ジャーナリスト・小林佳樹氏)
円に対する元安もすさまじい。2015年には1元=20円前後だったが、直近は14.8円。25%も下落している。これは、1ドル=110円が82円になるくらいのインパクトである。何と言っても、日本の輸出相手国1位は中国。これ以上の元安(円高)は、日本の輸出企業に痛手だ。
「さらに、元安は中国人訪日客を遠ざけ、日本での爆買いも抑えられるでしょう。昔は日本に来て100元出せば、2000円の商品が買えたのに、今は1500円ですよ」(小林佳樹氏)
昨年の訪日観光客3119万人のうち、中国は838万人でトップ。元安で中国人にソッポを向かれる日が近いかもしれない。
■内需も外需もメタメタ
日韓関係の悪化で、対韓ビジネスも厳しい。昨年の訪日客数で2位は韓国の753万人だったが、7月は前年同月比7・6%も減っている。
加えて輸出がヤバイ。韓国は輸出相手国3位の上客だ。安倍政権が7月に発動した対韓輸出規制を機に、韓国企業が国産化に猛進。早くも成果が出つつあるのだ。
韓国が対日輸入に頼っていた高純度フッ化水素について、韓国のパネルメーカー大手「LGディスプレー」が、国産品代替に成功したという。1日、複数の韓国メディアが報じた。今月中に生産工程に適用するとのことだ。
また、輸出規制の対象品ではないが、韓国の国家核融合研究所は8月29日、日本から全面的に輸入していた半導体コーティング素材「酸化イットリウム」を開発したと発表した。経済ジャーナリスト・井上学氏が言う。
「輸出規制を強化した3品目に限らず、日本への依存度が高いすべての材料について、韓国企業は躍起になって自社開発や他のサプライソースを開拓しているはずです。韓国政府も予算をつけているようですが、企業として、安定供給の観点からは“脱日本”に向かうのは当然の対応です」
頼みの輸出とインバウンドが下火になれば、これから日本は何で稼ぐのか。
徴用工問題 記者「中国とは和解、韓国とは?」
官房長官「政府の発言、控えたい」
しんぶん赤旗 2019年9月4日
菅義偉官房長官が2日の会見で、記者から、中国人の強制連行の場合には被害者と日本企業との間で和解が成立したのだから韓国の元徴用工の場合に同じ方法がとれないのかと質問されたのに対して、答弁不能となる場面がありました。
1990年代以降、中国や韓国からの強制連行問題では、日本鋼管(1999年)や不二越(2000年)、三菱マテリアル(16年)など、加害企業が被害者への謝罪と「見舞金」の支給などで和解した例もあります。中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判では、日本の最高裁が07年4月、裁判上の個人の請求権は日中共同声明により失われたとしながらも、「個人の実体的な請求権までは消滅していない」と判断。日本政府や企業による被害の回復に向けた自主的解決の期待を表明しました。その後、西松建設は被害者らと正式に和解。謝罪し、記念碑を建立、和解金を支払っています。
会見で、記者がこうした事実を指摘し、「政府間で勝ち負けを争うということではなく、原告・被告双方が受け入れ可能な解決策を模索することも一つの選択肢と思うが」と菅氏の見解をただしましたが、菅氏は「政府の立場で発言することは控えたい」と、答弁を拒否しました。
日本政府は、戦時中の徴用工に対する賠償を命じた韓国最高裁判決が出た直後、国内の商社やメーカーなどが参加する会合で、「問題は日韓請求権協定で完全に解決ずみ」との見解を示し、「官民が連携して本件に当たりたい」と強調。日本企業が被害者との和解に動かないようくぎを刺しました。
菅氏が会見で、中国の被害者とは和解したのに、韓国の被害者とは和解できない理由を説明できなかったことは、日本政府の対応がいかに理不尽であるかを示すものです。
+ 韓国、日本車販売57%減 8月前年比不買運動が影響
東京新聞 2019年9月5日
【ソウル=共同】日本政府による輸出規制強化への反発から韓国で拡大している日本製品の不買運動の影響で、八月の韓国での日本車の新車販売台数が前年同月比57%減少したことが四日、分かった。外国車に占める日本車の割合は8%で、昨年八月の17%から急落した。
日本政府が七月四日、半導体材料三品目で韓国向けの輸出規制を強化して以降、日本製のビールや乗用車、衣料などの売り上げは急減している。
韓国輸入自動車協会によると、八月に新規登録された日本車は千三百九十八台だった。昨年八月は三千二百四十七台だった。
ブランド別では、トヨタ自動車は59%減の五百四十二台、日産自動車は87%減の五十八台、日産の高級車ブランド「インフィニティ」は68%減の五十七台、ホンダは81%減の百三十八台だった。
トヨタの高級ブランド「レクサス」は八月の新規登録が六百三台で、前年八月からは8%増加したものの、今年七月から39%減った。七月に輸入車の中で三位の人気だったレクサスES300hは、八月には十位に転落した。
業界関係者は韓国メディアに「韓日関係が改善したとしても(日本車不人気の)残像は長く続く可能性がある。日本車の新規顧客の開拓は難しくなりそうだ」と語った。