政府が参院特別委で安保法案の強行採決を目指していることに対して、17日の地方紙社説は、「強行採決は許されない」、「憲法破壊の暴走」、「憲政史上に汚点を残す」、「なぜ国民の声を聞かない」等々と、政府批判の一色となっています。
琉球新報と新潟日報の社説を紹介します。
新聞社説 タイトル(17日付) (クリックすると原記事にジャンプします)
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<社説>安保法制と採決 廃案の機こそ熟している
琉球新報 2015年9月17日
参議院で審議中の安全保障関連法案をめぐる16日の地方公聴会を終え、安倍政権と与党は17日未明に開かれる特別委員会を受け、同日中の本会議開催を決めた。同日中に法案を成立させる構えだ。
採決の環境づくりのための公聴会開催であり、国民の強い懸念を審議に反映させる姿勢はない。強引かつ国民に背を向けた採決ありきの対応だ。
戦後の平和国家の歩みを根底から覆し、安保政策を大転換させて「戦争ができる国」へと様変わりする法案に対する国民の反対の声は、デモや集会などの具体的行動を伴って燎原(りょうげん)の火のごとく広がっている。16日夜も国会前に数万人が押し寄せ、反対の声を上げた。
元最高裁長官や多くの法律専門家が違憲性を指摘、各種世論調査で過半数が成立に反対し、総じて8割が説明不足と指摘している。法案内容だけでなく、国民の多くが異論を封じて聞く耳を持たない安倍政権の独善的な手法と、安倍晋三首相らの暴走に歯止めをかけられない国会に不満を強めている。
採決を強行することは断じて認められない。立憲主義を崩し、法的安定性を損なう点、国民世論との乖離(かいり)などを踏まえれば、廃案にする機こそ熟しているのである。
「国会審議を延ばしても国民の理解を得られなかったのだから可決は無理だ」。中央公聴会で学生たちの団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基(あき)さんは冷静に指摘した。まさにその通りである。
衆参両院の審議が200時間を超えたのに国民の理解は一向に深まらない。中東のホルムズ海峡の機雷除去への参加の可否について、首相はずっと可能と説明してきた。しかし、14日になって首相は「現実問題として具体的に想定していない」と述べ、現実離れした事態と認めた。今までの議論は虚構だったことがはっきりした。
日本人母子を乗せた米艦を防護する状況があるかについて、中谷元・防衛相は「邦人が乗っているかは絶対的ではない」と修正した。集団的自衛権の行使要件の根幹がぐらつく政府を信用できるわけがない。
参院審議入り後、首相は中国の海洋進出への脅威を強調してばかりいたが、個別的自衛権で対処可能であることが明確になった。
首相は「(法案への)支持が広がっていない」と認めている。世論と離反して強引に成立を急ぐことは民主主義を壊す愚行である。
安保法案大詰め なぜ国民の声に耳傾けぬ
新潟日報 2015年9月17日
なぜ民意から目を背け続けるのか。もっと国民と向き合い、その声に耳を傾けるべきだ。
安全保障関連法案の審議が大詰めを迎え、与野党の激しい攻防が続いている。政府は週内の成立を目指す方針を変えていない。
衆院に続く強行色を薄めようと、与党は次世代の党など野党3党との修正協議で合意した。世論の批判をかわそうとの狙いがあるのは明らかだろう。
国民不在のまま、数の力を背景に、今国会成立ありきで突き進むことは許されない。あらためて廃案を求めたい。
与党側は、参院での審議時間が100時間となり、審議は尽くされたと強調する。
法案は、国際紛争に対処する他国軍を後方支援できる「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」の2本ある。
しかし、後者は周辺事態法などの改正する10法案を1本にまとめたものだ。
憲法の根幹に関わるような極めて重要な法案が実質的に11本あるというのに、100時間程度で熟議が重ねられたと判断するのは無理があろう。
政府の答弁も以前と食い違うなど、むしろ矛盾が明らかになってきている。
国民の理解も、進んでいるとは到底言えない状況にある。
共同通信社が8月に行った電話世論調査では、安倍政権が安保法案を「十分に説明しているとは思わない」との回答が8割を超えたことが、それを裏付ける。法案に「反対」も6割近くに上った。
今月14日の参院特別委で首相は「法案に支持が広がっていないのは事実だが、成立した暁には間違いなく理解が広がっていく」と言い切った。
あまりにも無責任で乱暴な発言と言わざるを得ない。
首相は衆院での採決強行前に「国民に十分な理解を得られていない」と追認したはずだ。それ以降、どれだけ国民の理解を得られたのか。むしろ不安は高まっていると言っていい。
集団的自衛権の行使に道を開く法案は、政府が都合の良いように理屈付けした解釈改憲であり、違憲との懸念が強い。
憲法学者や内閣法制局の元長官、「憲法の番人」である最高裁の元長官も違憲と断じた。
そうした動きは、抗議行動という形で全国に広がりを見せ、高校生や大学生といった若者から、子を持つ母親、戦争を体験した高齢者まで世代や地域を超えた大きなうねりとなっている。
15日の中央公聴会には、公述人を希望する95人の応募があった。過去10年に参院の委員会が実施した公聴会での最高17人を大幅に上回った。全員が法案反対との意見を付けていたのである。
確かに日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。しかし、個別的自衛権で対応可能との指摘は多い。
日本に必要なのは武力ではなく、対話を重ねて理解し合う「外交力」ではないか。このままでは歴史に汚点を残すことになる。