2015年9月23日水曜日

安保法制は直ぐに始動するかも知れない

 思想家で神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、この度の安保法案の強行採決によって、「選挙で両院の多数派を占めれば、次の選挙まで政権党はどんな(民意と離れた)政策でも強権的に実行できてしまう」という、「民主主義欠点」を国民が改めて自覚させられたと述べています。
 
 同じ意味のことは植草一秀氏やあいば達也氏も指摘しています。
 植草一秀氏は、「総理は憲法を正しく理解し法の規範に従って行動する自制心を持たなくてはならないが、そうした自制心をもたない人物が間違ってその地位に就いてしまえば、起こり得ること憲法にはそれだけの隙間がある」(要旨)と述べ、「世相を斬る」のあいば達也は、「民主主義や資本主義と云うシステムは、道徳観を持って運用しようとする意識が必要」で、これまでこれほど非常識なことが行われなかったのは、「幸いにも堕落した人間がトップに就かなかったというだけのことで、「民主主義には本来的に独裁政権を生む要素が備わっている」(要旨)と述べています
※ 9月20日 民主政治の危機についての2人の著名ブロガーの考察 
 
 政府は20日、安全保障関連法の成立を受け、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣中の陸上自衛隊に「駆け付け警護」の任務を新たに与える検討に入り、来年2月末で派遣メンバーを交代する際に、「駆け付け警護」のための武装化を行う方針だということです(21日・読売新聞)。自衛隊の軍隊化が起き、一触即発の事態を常時「眼前にする」ことになります。
 
 元々米国当局は日本が法案成立のために行った国内的な“理屈”には配慮しない」という態度ですから、日本政府が自ら求めて制定した安保法制を“活用”しない筈はありません。唯々諾々とその指示に従うときに、安倍政権が行ってきた国内的な偽装はたちまち剥がれることになります。
 中東で米国が新たな戦争始めればその「後方支援」に自衛隊出動の要請が来るのは当然として、内田氏は、自衛隊の集団的自衛件行使の最初の事例は「南スーダンで、米軍の肩代わりをして中国軍を警護し、中国の権益を守る」ということになりそうだと述べています
 
 これまで「中国の脅威に対抗するための安保法制の整備だ」と説明してきた安倍政権はそのとき国民に一体どう説明するのでしょうか。安倍氏がそうしたときも「蛙の面に・・・」であることは目に見えていますが、問題は、死を眼前にしながらそれに従事させられる自衛隊員の悲劇です。言うまでもなくその責任は挙げて安倍政権にあります。
 内田氏は、そのときおそらく日本のメディアは死者を英霊にまつりあげ」、「死者を犬死にさせる気か」と国民を煽るだろうと述べています
 もしも国民がそれに洗脳されるようであれば、それこそが最大の悲劇です。
 
 「晴耕雨読」に転載された内田樹氏の主張を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国民が今一番感じているのは、「民主主義には欠点がある」ということでしょう          https://twitter.com/levinassien 
内田樹 晴耕雨読転載版 2015年9月22日 
 毎日新聞のインタビュー記事が昨日掲載されました大阪版
 古館さんが昨日の『報道ステーション』で言及してくれましたが、独裁の対立概念は民主制ではなく共和政であるというのはカントの『永遠平和のために』の言葉です。
 自衛隊の集団的自衛件行使の最初の事例は「南スーダンで、米軍の肩代わりをして中国軍を警護し、中国の権益を守る」ということになりそうです
「中国の脅威」論を押し立てて強行採決した法案の最初の適用が「中国権益の擁護」であるということから僕たちが知れるのは、この法案が最初から最後まで「アメリカの国益増大のためのもの」であり、当のアメリカは「どういう理屈で法案を通しても構わないが、わしらはそんなドメスティックな『理屈』には配慮しないから」という態度で一貫しているということです。
 こういうことをされて黙っているのを従属国と呼ぶのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
安保関連法:成立 若者の怒り恐れよ 限りなく「独裁」 内田樹さん
毎日新聞 2015年09月21日
 安全保障関連法が成立した。集団的自衛権の行使が認められ、自衛隊の海外での活動が拡大される。法案に対しては学生らが反対の声を上げ、抗議活動は全国に広がった。法成立で今後の日本社会はどうなるのか、神戸女学院大名誉教授で思想家の内田樹(たつる)さん(64)に聞いた。(3面に「平和国家の転換」)【聞き手・遠藤孝康】
 
  多くの国民が反対する中、政府・与党は採決を強行した。
 ◆国民が今一番感じているのは、「民主主義には欠点がある」ということでしょう。選挙で両院の多数派を占めれば、次の選挙まで、政権党はどんな政策でも強権的に実行できてしまう。政策が民意と離れていても、有権者には政権の暴走を止める手立てがない。
 私たちが忘れているのは「民主制と独裁は共生可能」という事実です。「独裁」の定義は「法の制定者と法の執行者が同一である」というものです。その反対概念は「民主制」ではなく、「法の制定者と執行者が別である」制度、「共和制」です。日本のように、立法府が事実上空洞化し、官邸が作った法律がほとんど自動的に国会で承認されている状態は、形式的には「民主主義的」ですが「共和的」ではありません。
 
 首相は委員会で「早く質問しろよ」というやじを飛ばしました。この言葉は首相自身が国会審議を単なる「アリバイ作り」のセレモニーに過ぎないと思っていることを露呈しました。法律を決めるのは官邸で、国会はそれを追認するだけなら、限りなく「独裁」に近い政体になっているということです。
 
  他国軍の後方支援など自衛隊の活動は大きく拡大する。
 ◆自衛隊員に後方支援の大義名分を納得させることができるでしょうか。大義名分を信じている兵士は強い。自分が何のためにそこにいるのか、その意味を理解している兵士は、どうしたらいいかわからない状況でも「最適解」を選択できる。でも自衛隊員が、たとえば中東で米国の始めた戦争の後方支援に送られた場合、とっさの判断で最適解を選び取れるでしょうか。難しいと思います。そこにいる大義名分がないからです。自衛隊員に死傷者が出れば、おそらく日本のメディアは死者を英霊にまつりあげるでしょう。そして、「派兵に大義はあったか」という責任論を「死者を犬死にさせる気か」というヒステリックな絶叫が黙らせることになるでしょう。米国のような言論の自由な国でさえ、9・11後は政権批判がほとんど不可能になりました。日本なら、その程度では済まないでしょう。
 
  学生の反対運動が全国に広がったことは、今後の政治にどんな影響を与えるのか。
 ◆運動が盛り上がってきたのは法案が衆院で強行採決された後でした。立憲政治の手続きが踏みにじられたことに対する怒りです。学生たちのスピーチを聞いていると、彼らが心から怒っていることがわかる。切実さに胸を打たれます。安倍政権の人権抑圧的な政策がこのまま次々施行されるなら、若者にとって耐え難く息苦しい社会になるということについて、彼らは身体的な違和感、恐怖感を感じていると思います。
 
 彼らは一法案についてだけではなく、民意をくみ上げ、異論との合意形成をはかることができなくなった今の政治システムそのものに対して「NO」と言っています。「デモの次は選挙」になると思います。来夏の参院選に向かって、彼らは「安保法案に賛成した議員は全員落とす」という運動に転換していくでしょう。6月に選挙権年齢を18歳以上に下げる法改正が成立し、参院選から240万人の新有権者が登場します。安倍政権はこの集団の政治性を低く見積もっていたと思いますが、今は後悔しているはずです。この240万人に今一番影響力を持つ組織は、「SEALDs(シールズ)」だからです。