9日、宇都宮大学教員有志が安全保障関連法案に反対する声明を出しました。
また12日、三重短期大学の教員有志が三重県庁で記者会見し、安全保障関連法案に反対する声明を発表しました。声明文は今後インターネットなどを利用して紹介し賛同者を集めるとしています
宇都宮大学教員有志の声明文と三重短大の会見の記事を紹介します。
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「安保法制」に反対する宇都宮大学教員有志による声明
2015 年 9 月 9 日
現在国会で審議が続けられている「安全保障関連法案(「安保法制」)」に、私たちは以下の理由から反対し、安倍政権とすべての国会議員にその廃案を強く求めます。
1. 憲法違反と法治国家の危機
本法案が容認する集団的自衛権の行使は、憲法違反です。圧倒的多数の憲法学者たちがそのことを指摘しています。国の最高規範としての憲法に違反する法案を成立させることは、法治国家の土台を壊すことを意味しています。
2. 一括提案の問題性と不十分な議論・説明
安倍政権は、従来の政策を根本から変える内容をもつ複雑な法案を、11 件まとめて提案するというずさんな政治手法をとりました。このため、各法案の内容について十分に議論を深めることができておらず、手続き的に問題があると言わざるをえません。主権者である国民に対し、日本の自衛をどうするかという重い案件について、十分に説明することなく立法しようとする政権の姿勢は、それだけで民主主義のあるべき姿に違背しています。
3. 国民の多数の反対に反する強行採決
各紙の世論調査によれば、国民の多数が「安保法制」に反対を表明しています。それにもかかわらず、安倍政権は 7 月に衆議院において強行採決を行いました。日本全体に関わる重い案件について、主権者である国民の多くが異論を示していることを、政府はあからさまに無視しました。このような政治のあり方そのものが、民主主義の根幹を揺るがしかねない危機的な事態です。
4. 武力紛争の当事者化
本法案が成立すれば、従来は専守防衛に限定されていた自衛隊の活動が拡大し、「後方支援」という名目での兵站活動が可能となります。このことは、日本が武力紛争の当事者となる可能性が増すことを意味しています。敗戦後 70 年間、まがりなりにも維持されてきた「平和国家」としての国のあり方を、十分に議論をしないまま、憲法違反の手段で変更し、国内外に犠牲者を生みかねない事態を招くことに、強く抗議します。
5. 学生と学問への影響
本法案が成立すれば、自衛隊員のリスクが高まることに加えて、経済的に不利な立場の若者を対象とした「経済的徴兵制」が導入される可能性が指摘されています。学生たちを含めた将来の社会を担う若者が、再び戦場で加害者または被害者となる可能性のある本法案を、容認することはできません。また、戦争を行う国家において、学者と学問による軍事協力が行われた歴史を踏まえれば、再び大学や学問が軍事利用される流れを強める本法案に、強い懸念を表明します。
6. 地域と世界における武力に頼らない平和づくり
集団的自衛権の思想は、「仮想敵」を前提として成り立ち、武力による脅しに依存しています。歴史的に見ても、一度間違った判断が下されることで、取り返しのつかない犠牲が発生したり、またその濫用によって武力紛争や軍事介入が何度も発生しており、この思想には多くの疑問が残ります。武力による脅しに頼るだけでは、地域と世界における平和と共生の実現は遠のくばかりです。関係諸国との対話を深め、外交努力による問題解決を強く求めます。
「憲法違反は明らか」 三重短大の教員有志 安保法案に反対声明
伊勢新聞 2015年9月12日
三重短期大学(津市一身田中野)の教員有志が十一日、参院で審議中の安全保障関連法案に反対する声明を発表した。同短大に在席する教員三十人のうち、二十五人の連名。法案を「憲法違反であることは明らか」などと批判し、撤回や廃案を求めている。
声明は法案に盛り込まれた集団的自衛権の行使について「圧倒的多数の憲法学者が違憲と判断している」と指摘。「目的がアメリカが始めた戦争に日本の若者を差し出すことにあるのは明白」「再び戦争の時代が始まろうとしている」などと訴えている。
教授と准教授の八人が呼び掛け人となり、今月七日から学内の教員に賛同を求めていた。二十五人のほかに二人の非常勤講師も賛同している。教員らは今後、インターネットなどを通じて声明を紹介し、卒業生などにも賛同を求めていくという。
県庁で記者会見した同短大の茂木陽一教授(歴史学)は「若者を戦場に駆り立てた歴史を繰り返させないよう声明をアピールしたい」と強調。三宅裕一郎教授(憲法学)は「法案が成立すれば、反対の勢いがついえてしまうのではないかとの危機感を抱いている。今後の状況も見据えて行動したい」と語った。