元外交官の天木直人氏がブログに、安倍外交は全て破綻していると手厳しく批判する記事を載せました。
対露外交、北朝鮮拉致問題、対韓外交の全てで失敗し、翁長知事の国連人権委での沖縄差別アピール演説で醜態を晒し、中国からは相手にもされず、残る対米外交でも徹底した従属外交によって国民生活が苦しめられているとしています。
なかでも21日に行われた岸田外相とラブロフ外相との会談後の記者会見の様子は異様でした。
岸田外相が領土交渉について話し合ったと述べたのに対して、ラブロフ外相はその直後に領土問題など一言も話し合わなかったと否定しました。
そして外務次官級での平和条約交渉を再開することについて、「両国の立場には大きな食い違いがあり、交渉は容易ではない」とし、交渉を続ける前提として、「日本が戦後の歴史の現実を受け入れて初めて、問題を前に進めることができる」と述べました。
その意味は、第2次世界大戦の結果、ポツダム宣言に従って北方4島がロシアの領土になった事実を、日本側が認めることが不可欠だというものです。
ポツダム宣言は日本の領土に関しては「カイロ」宣言に従って定めるとして、本州、北海道、九州及四国並びに連合国が決定する島々に限定されるとしています。
そして1946年1月に出された連合国の決定で、「竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島は日本に帰属しない」とされました(国後・択捉の2島は千島列島に属すので、日本には帰属しない)。(⇒後掲:櫻井ジャーナルの記事を参照)
そうでありながらも、かつては日本がOKすれば歯舞・色丹の2島が返還されるその一歩手前のところまで来たこともありました。しかし今回のロシアの対応はそれからは最大限後退したものになっています。
日本はこれまでロシアに対する経済制裁に加わり、5月9日にロシアで行われた「対独戦勝70周年」を祝う記念式典にも参列を拒否し(首脳が参加しなかった他の国はそれぞれ大使を代理出席させましたが、日本がそうしたかは不明です)、ラブロフ氏がいうように「最近の日ロ関係は好意的とは言いにくい」状況でした。
仮にロシアが北方4島の問題で譲歩することが望めるとすれば、それは両国の友好関係が深まった中でしかあり得ないことです。それなのに散々ロシアを踏みつけにしておきながら、北方4島の返還という実だけは求めようという考え方が土台無理というものです。
ラブロフ外相はまた、「プーチン大統領の訪日は、ホスト国である日本が決めるのが前提で、具体的な提案があれば検討する」、日本で可決した安全保障関連法案については「周辺国で懸念が高まっている」と指摘し、米国のミサイル防衛(MD)システムに日本が参加していることも批判しました。いずれも筋の通った話です。
安倍政権の身勝手と非常識 ― それが浮き彫りにされた日露外相交渉でした。
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外交破綻が安倍首相を倒すことになる
天木直人2015年9月23日
日本の政治の不甲斐なさが安倍首相の暴政を許すとしても、安倍首相は自らの失政によって倒される事になる。そう私は繰り返して書いてきた。いま我々はその事を目の当たりにしている。
アベノミクスの行き詰まりについていまや皆が公然と語り出したから、いまさら私がここで繰り返す必要はない。ここでは、どうにもならなくなった外交の行き詰まりについて、元外務官僚がである私が断言する。
安倍首相と安倍首相のご機嫌伺いを繰り返してきた斎木外務事務次官、谷内NSC事務局長の外交は、戦後70年の日本の外交史上、かつてない行き詰まりに直面している。きょうの各紙の報道を見るがいい。
安倍首相が無理をして実現させた岸田外相とラブロフ外相との外相会談は北方領土交渉の完全な破綻を露呈した。外相会談後に行われた記者会見はこれ以上ない衝撃的なものだ。
領土交渉について話し合ったと述べた岸田外相の発言をラブロフ外相は真っ向から否定した。領土問題など一言も話し合わなかったと。
そしてラブロフ外相は安倍首相がこだわった安保法案を批判した。しかも日本が対米従属外交を続けているかぎり世界は不安定になるとまで言った。
こんな発言を世界の前でロシアの外相に言われるようでは日本はお終いだ。
きょう9月23日の朝日新聞は一面トップで書いた。北朝鮮は拉致問題の再調査で、「8人は既に死亡、4人は北朝鮮に入国していない」という当初の調査結果を北朝鮮は日本政府に繰り返していたことが複数の日本政府関係者の証言で明らかになったと。まさしく私が繰り返し書き続けて来たことだ。
一年前のストックホルム合意ははじめから八百長合意だったのだ。
安倍・菅政権は、拉致解決の努力をしている振りをして被害者家族や国民を騙し続けてきたのだ。
翁長沖縄県知事は国連人権理事会で辺野古移設を強行する安倍・菅政権を批判する演説をした。しかも日本政府は沖縄の自己決定権、人権をないがしろにしているとまで表現して批判したのだ。これに対し、日本政府代表の嘉治美佐子大使は、反論した。
世界の目の前で、県知事と政府が、日本は人権違反の国かどうかで応酬し合う演説を行うなどという事は、それ自体が国の体をなしていないということだ。
きょう9月23日の各紙が一斉に書いている。ついに韓国で慰安婦問題が小学生から高校生に至るまでの教科書に使われるようになったと。この事は、慰安婦少女銅像の設置とあわせて、慰安婦問題が日韓関係の負の遺産としてもはや固定してしまったということだ。
すべては安倍首相の対韓外交の失敗である。習近平の中国が安倍首相の日本を相手にしないことは、もはや誰の目にも明らかだ。
残るは対米従属だけであるが、その対米従属外交のつけが、基地問題からTPPに至るまで、あらゆる面で国民生活を苦しめているのであるから、何をかいわんやである。もはや安倍首相は外交で打つ手はない。国民や野党が安倍首相を倒せなくても、政策の行き詰まりが安倍政権を倒すことになる。
外交政策だけでも安倍首相は倒れる(了)
岸田外相に対し、ラブロフ外相は南千島を議題にすることを拒否、歴史的事実を認めるよう求めた
櫻井ジャーナル 2015年9月22日
ロシアを訪問した岸田文雄外相に対し、セルゲイ・ラブロフ露外相は平和条約締結の前提として、日本政府が歴史的な事実を認めることを求めた。日本は歴史を直視していないと言われたわけだ。南千島を議題にすることも拒否された。今回、岸田がこれまでと同じような話を繰り返したとするならば、ロシア訪問という事実が欲しかっただけで、端から交渉する意思はなかったと言われても仕方がない。日本のマスコミはロシア訪問の「成果」を宣伝しているように見える。
今年、ロシアは5月9日に「対独戦勝70周年」を祝う記念式典を、また中国は9月3日には「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年」を祝う記念式典を開催した。ロシアはドイツの降伏、中国は日本の降伏を祝っているのだが、いずれも日本を含む西側の首脳は出席を断った。アメリカ政府の意向が影響しているのだろうが、日本の支配層としても行きたくはなかっただろう。
日本では8月15日を「終戦記念日」だとして式典が開かれているが、実際に降伏したのは1945年9月2日。この日、政府全権の重光葵と軍全権の梅津美治郎が東京湾内に停泊していたアメリカの戦艦、ミズーリで降伏文書に調印したのだ。降伏したということはポツダム宣言を受け入れたことを意味する。ポツダム宣言が発表されたのは7月26日。アメリカ、イギリス、中国の共同声明という形だった。
ポツダム宣言は「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」と定めている。「カイロ宣言」の条項を履行し、日本の主権は本州、北海道、九州、四国と連合国が決める周辺の小さな島々に限定するとしているのだ。確定しているのは本州、北海道、九州、四国だけである。
そのカイロ宣言には「千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国ガ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト竝ニ満洲、台湾及膨湖島ノ如キ日本国ガ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコト」とある。
1946年1月に出された連合軍最高司令部訓令によって、連合国は日本に帰属する小さな島々を決めた。その小島は「対馬諸島、北緯三〇度以北の琉球諸島等を含む約一千の島」で、「竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島を除く」とされている。国後島と択捉島は千島列島の一部であり、ポツダム宣言に従うと、「北方領土」という主張はできない。
(以後はテーマが変わるので省略)