2015年9月4日金曜日

日本体育大学・山梨大学有志の会 安保法案反対声明文

 「安保法制の強行に反対する日本体育大学有志の会」1日、声明を出しました。
 また、「安全保障関連法案に反対する山梨学者・大学人の会」が28日、声明を出しました。
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安保法制の強行に反対する日本体育大学有志の会
  
 
 私たちは,現在国会で審議されている安保法制(安全保障関連法案)について,審議をすればするほど,日本が戦争に参加することになるのではないかという恐れが高まっていくにもかかわらず,衆議院で審議を打ち切って採決が強行され,参議院でも同じことになるのではないかという事態の進行に,強い憂慮の念を抱いています.
 
 わが国のスポーツ界は,15年戦争の中で,1940年に開催が決まっていたオリンピック東京大会の返上をはじめとして,約15年間もの間,世界のスポーツ界から隔絶した時を過ごしました.また本学の前身である日本体育専門学校は,この戦争に繰り上げ卒業・学徒動員で千数百余名の学生を戦地に送り出し,そのうち数百名を超える者が還らぬ人となりました.
 学徒動員から50年を数える1993年には,日本中の数多くの大学の学長が「再び学園から学生を戦争へと出陣させない」という決意をこめた署名をしました.この中に,当時の学長であった綿井永寿先生の名があったのも,こうした本学の歴史があったからでした.
 また,1980年に開催されたモスクワオリンピックは,その前年に起きた当時のソ連によるアフガニスタン侵攻の影響を受け,日本を含む多くの国がボイコットすることとなり,出場を目指して練習に励んでいた本学の選手も涙を呑みました.
 こうしたスポーツと戦争の歴史をふまえて,本学では大学のミッションに「スポーツの『力』を基軸に,国際平和の実現に寄与する」ことを掲げています.このミッションのもとに働く私たちは,「スポーツは平和とともに!」との思いを,今,強くしています.
 私たちは,この法案を国民の理解と納得のいくまで審議し尽くすこと,そして数の力をかりて参議院で採決を強行しないことを強く訴えます.
2015年9月1日
呼びかけ人・賛同人の名簿は省略します
 
 
安全保障関連法案に反対する山梨学者・大学人の会
  
 
「今回法案の前提としての日米ガイドライン」
昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定を受け、安倍内閣は5月14日、自衛隊法等安全保障に関わる10の法律を一括改正する「平和安全法制整備法案」と国際安全保障に関わる恒久法としての「国際平和支援法案」を閣議決定し、翌15日国会に提出、26日から衆議院での審議に入りました。その内容は約1か月前の4月27日に日米合意した「日米防衛協力の指針」(所謂新々ガイドライン)の内容を見事に先取りしたものでした。ところでガイドラインの内容で特徴的なことは、次の3点です。<1>「日本の平和及び安全の確保」と「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の安定」がストレートに結びつけられ(Ⅰ「防衛協力の指針と目的」)、<2>その関係が日米の常置の機関である同盟調整メカニズムを介して関連づけられ(Ⅱ「強化された同盟内の調整」)、<3>さらに時系列的に様々な段階の軍・軍間の協力体制が同じ調整メカニズムの下で展開されていることです(Ⅳ「日本の平和及び安全の切れ目のない確保」)。
 
「集団的自衛権の行使と海外での武力の行使」
そして今回法案の最大の問題である存立危機事態における集団的自衛権に基づく武力の行使は、このうちDの「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」に新3要件のうちの第1要件とともに書き込まれています(注1)。
この点で留意すべきことは、そこではわが国が従来憲法9条の下で禁じられてきた海外での武力の行使が可能となる経路が、いくつも用意されていることです。即ち、ひとつはわが国に対する武力攻撃事態よりもはるかに前で生起したとされる「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」をわが国と国民にとっての「存立危機武力攻撃」とみなして武力の行使へと向かう道(これが本来の意味での集団的自衛権の行使)(注2)、第2に「日本の平和と安全のため」あるいは「国際社会の平和と安全のために」海外で展開する米軍等または国連決議を受けた外国の軍隊に戦闘地域にまで行って後方支援する道(後方支援から「武力の行使との一体化」へ)、第3に、国連以外の国際機関や当事国の要請に基づいて「停戦」後の主として治安活動の中で行われる武器の使用を介して戦闘行為へと至る道。そしてこれらはグローバルに展開した場合、同時併行的に実行されることもあるとされます (6月5日、12日中谷防衛相答弁)。
 
 
「違憲の法案を追いつめる国民の力」
以上のような内容をもった安保関連法案であることから、従来わが国は「個別的自衛権を行使するための自衛力の保持は禁じられておらず合憲である」としてきた専門家からもすべてにわたって「違憲である」との強い主張が出されたのです(6月4日衆院憲法審査会での3人の学者による意見)。これは正に「密接な関係にある」強力な力をもった他国の要請により、わが国が「他国のために戦う国」に変わり、次代を担う若者を「国際協力と他国のために」、“殺し、殺される者”にすることを意味しているといえます。
従って、このような内容をもった法案だからこそ安倍政権はガイドライン締結時のアメリカとの約束(「本年夏までには必ず成立させる」との国会審議も飛び越えての約束)にも拘らず6月22日、国会を9月27日まで95日間延長し(戦後最大)、その上で7月16日衆議院での強行採決に打って出たわけです。
ここで考えるべきことは、昨年の閣議決定をはじめとして政権が立憲主義の手続きをこのように再三にわたって無視・蹂躙するのは、その内容における問題点がそれだけ国民に明らかにになってきているからだということです。言葉をかえれば、現在の状況は、国民の側の日本国憲法に基づく平和主義を理解し、それを自らの立ち位置に基づき歴史的に深め思想としてわがものとしようとする努力とたたかいにかかっていると言えます。そしてそのたたかいの力が政権に対する「立憲主義と民主主義を守れ」という声をかくも大きく上げさせる基盤となっているということです。即ち「格差をなくし」「差別をなくし」「貧困をなくすこと」、それは平和であればこそ叶えられる人々の希望であり目標であるということが十分社会のコンセンサスになりつつあるということです(注3)。
 
「皆様への訴え」
戦後70年、激動する世界情勢の下で多くの国際紛争に直面しながらも、まがりなりにも現在のような社会を構築できたのは、世界に誇れる平和憲法の精神が国民に根付いてきた証しでもあると言えます。全国の大学では人間の多様性と異文化を理解し、過去から積み上げられてきた人類の叡智を、次世代を担う若者たちに教授し、よりよい民主主義社会の構築に貢献できる人材を育成してきました。大学で学んだ若者たちが紛争解決に武力を行使し、また武力の犠牲になることは絶対にあってはならないことです。
従って、このような意味で今ほどこの点での大きな世代を越えた国民の連帯の輪の広がりが強く求められているときはないといえましょう。
われわれ山梨県下の学者・大学人も、このような声に応えるべく今日ここに本会を立ち上げ、若者、女性、労働者をはじめ広く各層・各界の人々に連帯のメッセージを届けようとするものです。「戦後70年を戦争元年にしないためにも!」
 
(注1)新3要件のうちの第1要件とは次のようなものです。「わが国に対してする武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」とするものです。またこれを法案は2条第4号で「存立危機事態」と定義しています。
(注2)この点について、武力攻撃事態法改正案はその3条4項で、「存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。」そのための「武力の行使は、…・合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」としています。しかし存立危機武力攻撃とはあくまで攻撃を受けたとされる対象国(最も多くはアメリカとその同盟国)の要請を受けての判断であることを考えると、その場合の「速やかな終結」とはどのレベルを言うのか、また「合理的に必要」との判断とはどの程度のものを言うのか等、は結局日米同盟調整メカニズムを通して判断されることにのなるでしょう。その場合わが国の自立性がほとんど保障されてないということは、結局、政府の言う「集団的自衛権の限定行使」なるものは成り立たないということになります。
(注3)今日わが国では、不安定雇用の拡大と社会保障の相次ぐ後退によって全世代を通して国民年金、国民健康保険等の社会保険からの給付を受けられず、また度重なる制度の後退によって公的扶助の対象からも排除されている人々が1000万から1500万人も存在しています。この方々は正に国家の政策によって「意図的に作り出された貧困層」ということができ、この点から見ても安倍首相が安保関連法案を進めるにあったてつとに強調する「国民の生命、自由及び幸福追求権」と「幸福な生活を守るため」との立法の目的は全くの虚言であるといえましょう。
2015年8月28日
『安全保障関連法案に反対する山梨学者・大学人の会』呼びかけ人一同
 
呼びかけ人・賛同人の名簿は省略します