NHKは公共放送の使命を忘れてひたすら政権追従の態度を貫いていますが、8・30の国民大行動についてもその姿勢は遺憾なく発揮されました。
基本的に政権寄りで知られている日本テレビでも、この日の大行動の意味するところはキチンと伝えていただけに、あまりにも異常で情けない態度です。
しんぶん赤旗が取り上げました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
テレビ時評 安倍政権の顔色うかがう
8・30大行動 NHK報道の異常
しんぶん赤旗 2015年9月2日
「安保法案反対最大デモ」と注目された8月30日の戦争法案反対「国会10万人、全国100万人大行動」。この歴史的大事件をテレビ、とくにNHKはどう報じたか。参加者ならずとも関心を持つところです。際立ったのは、NHKの他メディアと比べて異常なまでの「安倍政権の顔色うかがい」ぶりでした。
当日夕、日本テレビ系の「真相報道バンキシャ!」は「安保法案成立阻止を 国会周辺で大規模な集会」というタイトル。集会そのものを若者の声を軸にストレートに報じました。「30日、この日の大きな出来事は何か」というオーソドックスな視点といえました。
思惑ありあり
一方、NHK「ニュース7」は、当日の番組表では「安保法案反対の集会」をトップに掲げてはいました。ところが番組での集会の扱いは、タイのテロ事件、スズキ自動車の経営動向に続いて3番目。しかもタイトルは「安保法制」というくくり方でした。
まず衆参両院での法案審議時間を並べ、政府自民の「採決日程」展望、それから東京や全国の集会・デモの紹介という順序でした。その後再び政府・与党に話を転じて「今国会成立」という意向を伝えた後、8分間の放送の最後を、自民・谷垣幹事長の「野党の言い分はためにするひぼうだ」「この国会でなんとしても成立を」という発言で締めくくりました。“この日の集会そのものをストレートに伝えたくない”“政府・与党の顔を立てなければ”という思惑がありありとにじみ出る報道ぶりでした。
NHKの「安倍政権の顔色うかがい」ぶりは翌31日も露骨でした。朝、昼のニュースでは8・30大行動はまったく放送せず。夕方の情報番組「ニュースシブ5時」では、集会参加の40代、50代女性の思いに触れたものの、そのあとに解説委員が登場しました。
政府の言い分
解説委員は「私も昨日の集会をのぞいてみた」と前置き。「この法案の見方は立場によって百八十度変わる」と一般論を口にしつつ、アナウンサーからの「不安の声が強いようですが」の問いかけに、政府はこう言っているという説明を長々と述べました。多くの視聴者は、“集会をのぞいたというなら、そこで見聞きしたことと、あなたのとらえ方を伝えてよ。それがジャーナリストの責務でしょ”と言いたくなったことでしょう。
ちなみに31日TBS「NEWS23」の膳場貴子キャスターは、自ら集会会場を回って何人もの参加者にインタビューしていました。
NHKの「政府の顔を立てる」姿勢は、31日夜の「ニュースウオッチ9」でも顕著でした。集会場面は一瞬で、あとは「今国会で成立を」という自民役員会、自民と次世代の党などとの「修正協議」報道に時間をついやしました。
同夜のテレビ朝日「報道ステーション」、TBS「NEWS23」はいずれも海外メディアの報道ぶりも伝え、参加者の声をリアルに紹介していました。民放との対比も含め、NHKニュース報道の特異な立ち位置が改めて浮き彫りになりました。(小寺松雄)