西日本新聞のシリーズ「始動 菅政権」の第4弾は「財源争い 地方分断に懸念」です。コロナ禍対応でも 権限と財源の役割分担が曖昧なことから国と地方の関係はきしみました。緊急的に必要なPCR検査(抗原検査含む)拡充一つをとっても莫大な費用を要するので単に地方に任せるということでは解決しません。地方に渡した方がいい権限と、国が統一して責任を持つ方が望ましい権限を整理することが肝要で、抽象的なスローバガンだけでは解決しません。本シリーズは今回で終了です。
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財源争い 地方分断に懸念…ばらまき「創生」継承か?
西日本新聞 2020/9/21
始動 菅政権(4)
インターネットの「AbemaNewsチャンネル」で19日夜、菅義偉首相とそれぞれ関係がある元職、現職の改革派首長が54分間、「地方と国の在り方」をテーマに熱論を交わした。
橋下徹元大阪市長「菅さんは『大胆な規制改革』と言うが、政府が全部やるのは無理がある。新型コロナウイルス対策も同じ。全国のやる気のある首長に改革を任せ、切磋琢磨(せっさたくま)していく仕組みが良い」
高島宗一郎福岡市長「例えば病床数にしても、地方ごとに状況は違う。地方に渡した方がいい権限と、国が統一して責任を持つ方が望ましい権限をいま一度、整理することが必要。『最適化ボタン』を押すということだ」
2人が一致を見たように、新型コロナ特措法が定める権限と財源の役割分担が曖昧なことから、国と地方の関係はきしんだ。国が全国一律の緊急事態宣言を発出した第1波の際の、休業要請と補償を巡る両者の綱引きが象徴していた。
6月以降、知事たちが“第2波”が来ていると警告を発しても、社会経済活動の回復を重視する国は「強い措置」に慎重な構えを崩さなかった。しびれを切らした地方は戦術を練る。例えば、鳥取県が9月1日施行した全国初の条例はクラスター(感染者集団)発生時、知事が独自に施設の営業停止を勧告できるというもの。「特措法の『穴』を埋める」(同県幹部)取り組みと言えた。迷走した印象を否めないウイルス対応に携わり、今後は国のトップとして「最優先課題」に位置付け指揮を執る菅氏。全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は「コロナ対策強化と地方経済の支援などわれわれの政策提言をしっかり具現化してほしい」とくぎを刺す。
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「日本のすべての地方を元気にしたい」。秋田の農村出身、横浜市議の経験もある菅氏は16日の首相就任会見で地方重視を宣言した。もっとも、官房長官を務めた安倍政権のスローガン「地方創生」は道半ばにとどまっている。人口減少緩和と東京一極集中是正を目指し、国はこれまでに地方への移住や観光振興支援などで約1兆円を投じた。インバウンド(訪日外国人客)がコロナ禍前の2019年に約3190万人に上るなど成果もあった。一方、地方側が国のお眼鏡にかなう創生計画をつくり補助金にあずかろうと、東京のコンサルタント企業に依存する皮肉な「バブル」も。「上から目線の中央集権的政策に終始し、真の地方の主体性を生み出すには至らなかった」と中央大名誉教授の佐々木信夫氏は指摘する。
17日には、政府の本気度が疑われるこんな場面も。新旧閣僚の引き継ぎ式で、北村誠吾前地方創生担当相は全都道府県を視察したことに触れ「47(都道府県?)回って相当ほら吹いてきましたから。後の始末をよろしくお願いします」と軽口を放った。
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菅氏が理想とする社会像は「自助、共助、公助。そして絆」-。自立を尊ぶ心は大切ではあるが、極端に行き過ぎれば自己責任と弱肉強食論の薄ら寒い社会に着地してしまう。地方に置き換えると、かつて菅氏が総務相時代に創設した「ふるさと納税」に似た両面を見いだせる。貴重な地方自主財源ツールとなった「功」と、自治体が恥も外聞もない返礼品競争に明け暮れるようになった「罪」だ。
九州大大学院法学研究院の嶋田暁文教授は「前政権は金のばらまきを背景に、都市と農村間、地方同士の競い合いを促し『分断』を生んだ。菅内閣もその分断統治を引き継ぐだろう。より悪化させる方向に走る恐れもある」と話す。新宰相の枕ことばとなりつつある「土のにおい」が本物か、地方側も観察眼を問われる。 (郷達也) =おわり