2020年9月29日火曜日

菅氏は官邸で何をしてきたか 首相菅義偉氏の実像(前川 喜平氏)

  元科事務次官川喜平さんがしんぶん赤旗のインタビューに登場し、在職中に垣間見た「菅氏が官邸でしてきたこと」を語りました。

 安倍政権は官僚を支配したことで知られていますが、実際に官僚人事を握ったのは菅氏でした。元総務省官僚の平嶋彰英さんが左遷された例からも分かる様に、菅氏は所菅の大臣が行った官僚人事でも気に入らなければ変えさせました。文化庁長官人事で前川氏はそれを経験しました。そして菅氏のお気に入りの新長官が「あいちトリエンナー」への補助金交付決定をしたのでした
 前川氏は政権は安倍政権以上に危険であると断言しました。それは長く官房長官を務めている間に各省庁にはすでに子飼いの次官、局長が配置されたので、官邸官僚が政策立案を独占しなくても菅首相の言うことをきく官僚ぱかりになっているからと述べています。
 また菅氏には経済政策のビジョンも理念もなく、竹中平蔵氏などプレーンにして新自由主義的な政策を強めるだろうとし、今さらながら「規制改革」を主張していることについては、「規制改革が経済成長の原動力になるというのは『神話』」だと批判しました。
 そして菅氏は早期の解散・総選挙を狙っているように感じるとし、「野党で一つの政権を作ってほしい、市民と野党の共闘を応援します。政権交代をこれ以上待っていられません」と述べました。
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菅氏は官邸で何をしてきたか 首相菅義偉氏の実像 行政私物化を隠蔽した
政権交代もう待てない 元文科省事務次官 前川 喜平さん
                       しんぶん赤旗 2020年9月27日
 菅義偉首相は約8年にわたり官房長官として、安倍政権を支えてきました。官邸で菅氏はどんな役割を果たし、何をしてきたのか部科学省事務次官として政権中枢の端を垣間見てきた前川喜平さんに聞きました。(三浦誠)

 ―官僚として官房長官の菅氏をどのように見ていましたか。
 菅氏は安倍晋三政権を支えるため、権力基盤を維持強化しました。安倍政権は「官僚を支配した」といわれますが、担当したのは菅氏です。
 官僚人事を握ったのが番大きい。私は文部科学審議官と次官をした2年弱の聞、大臣の了解を得た人事を官邸に覆されたことがあります。2016年4月に就任した文化庁長官の人事です。
 時は文化庁の京都移転という課題があったので、行政出身の長官がいいと考え、ある女性官僚を候補にしました。任命権者である馳浩文科相(当時)の了解をとって邸に報告すると、田和博・官房長官の感触もよかった。それが菅氏に上がってだめになった。その後、菅氏は東京芸術大学の宮田亮平学長がいいと言っている」という話が伝わってきました。宮田氏で提案すると、すんなり通ったのです。
 宮田長官のもとで文化庁は昨年、日本「慰安婦」を象微する「平和の少女像など展示した「あいちトリエンナー2019」への補助金を交付しない決定をしました不交付決定に先立って菅氏は、「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を精査して適切に対応したい」と述べています。宮田長官が政権の意に沿う人であることがはからずもトリエンナーレで明らかになりました。
 ふるざと納税の問題点を菅氏に指摘した総務官僚(当時)の平嶋彰英さんが左遷されたことも霞が関では有名す。菅氏に楯突くと飛ばされる、お眼鏡に適わないと出世できない、というのが霞が関の常識になりました。

 ―安倍氏による「行政の私物化」も菅氏が支えたといえるのではないでしょうか。
 私は次官退任後、当時の安倍首相にまつわる加計学園疑惑で証言しました。安倍氏の腹心の友」が理事長の加計学園が特例で獣医学部を般立できるよう政府が便宜を図た疑惑です。
 メディアの記事が出そうになっころ、官邸の和泉洋人首相補佐官からの働きかけがありました。文科省の藤原誠初等中等教育局長(現、事務次官)から「和泉さんから話を聞きたいと言われたら、対応される意向はありますか?」とショートメールが送られてきのです。
 これ以上話すなという警告だったのでしょうか。面会に応じなかったら官邸は私が「信頼ならない人物」と人格攻撃にかじを切ってきた。私は文科省の違法天下り問題の責任をとって17年1月に自ら杉田官房副長官に辞任を申し出また。ところが茸氏は会見や国会答弁で私が次官の地位に「恋々とがみついた」と批判したのです。事実を知りながら事実を曲げて発言したとしか考えられない。名誉毀損です
 加計学園疑惑ひとつとっても本来なら内閣が吹飛ぶ話です。菅氏は政権のスキャンダルを握りつぶしてきた。そのだめに官僚機構を思うままに動かした。人事で「アメとムチ」をふるうだけでなく、人格攻撃を平気でする公正でも公平でもない行政の私物化を隠蔽させた。それが菅氏です。菅氏がいないと安倍政権はこれほどの長期政権にはならなかったでしょう。  

 ―安倍政権から菅政権になって何が変わるのでしょうか。
 安倍政権以上に危険です。安倍氏の場合は経済産業省出身の「官邸官僚」と呼ばれる官僚が政策立案の中心でした
 菅氏の場合はすでに子飼いの次官、局長が各省庁にいる官房長官時代に各省庁の幹部を「私兵」として使える状態をつくっています。官邸官僚が政策立案を独占しなくても、すでに菅氏の言うことをきく官僚ぱかりになっています。省庁が官邸に組み込まれて安倍政権以上に官邸を頂点として一体化するでしょう
 官邸官僚でも一体化が進みます。安倍政権では安倍側近と菅側近という二種類の官邸官僚がいました。これからは官邸内も菅側近だけで一元化します。「安倍・菅政権」から「菅・菅政権」になったといえます。
 経済政策では、菅氏はビジョンも理念もない。ただ元総務相の竹中平蔵氏などプレーンがおり、新自由主義的な政策を強めるでしょう
 私は安倍政権を継承した菅政権に対して、野党ははっきりと対立軸をつくることができると思っています。
 野党のスタンスは、一人ひとりの国民の生活を大切にするごとが結果的に経済をよくするという方法論です。ワーキングプアになったり、路上生活したり、一家心中に追い詰められない、社会全体でセーフティネットを張る。安心して暮らせる条件を整えれば消費も伸び経済が拡大します。内需中心の経済菰大になります。弱肉強食ではなく、格差をなくすことが経済菰大につながります。
 他方、菅政権は大企業に便宜をはかれぼ「トリクルダウン」で人々の生活にも恩恵が及ぶという考えです。しかしアベノミクスの8年間で国民の暮らしはよくなっていません。
 菅氏は今さらながら「規制改革」を主張しています規制改革が経済成長の原動力になるというのは「神話」です。むしろ必要な規制をかけることの方が、新しい産業を生むと思います。人類にとって害になるものぱ規制しないといけない。そうすると人類にとって役立つものが新しい座業になっていきます。
 たとえば原発とか石炭火力は規制しないといけない。脱原発、脱石炭火力にしていけば、自然エネルギーは新しい成長産業になるはずです。

 菅氏は早期の解散・総選挙を狙っているように感じます。野党で一つの政権をつくってほしい。今度は初めて日本共産党が入る形の政権交代になります。ただ日本社会には共産党アレルギ―がまだ残っていますこ安倍氏が国会で立憲民主党の議員に対して「共産党」と侮蔑の言葉としてヤジをとぱしましたが、ああいう感覚は非常に危ない。
 私はいまの野党状況のなかで共産党はよく頑張っている、よく辛抱していると思っています。民主勢力が細かい対立は脇に置いて、大きな目標のために一つになるのは大切です。違いを乗り越えて手を結ぶ。そうしないと数と力と利権で一緒になっている相手に勝てない。市民と野党の共闘を応援します。政権交代を、これ以上待っていられません。