内閣人事局が新設された14年に、自治税務局長を務めていた平嶋彰英氏は菅官房長官に対して、直接、ふるさと納税制度の問題点を指摘しました。ふるさと納税制度は07年5月第一次安倍内閣の総務相であった菅氏が創設したものですが、自治体に寄付した全額が税額から減額される一方で、寄付者にはその半額相当が自治体から返礼品として戻ってくるという異例なものだったので、自治税務局が問題視したのは当然のことでした。 しかし菅氏はその指摘を快く思わなかったようで、事務次官候補の一人であった平嶋氏を翌年7月、自治大学学長に左遷し、霞が関の官僚を震え上がらせました。以来5年余りが経ち、内閣人事局による官僚統制は完成し、官僚が官邸の意向を忖度する悪弊は既に全官庁に蔓延しています。
菅義偉官房長官は13日の総裁選立候補者が揃ったフジテレビ番組で、内閣人事局に見直すべき点はないと明言するとともに、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」とも強調しました。官僚掌握の中枢にいた人間としてその旨味はもはや手放せないという訳です。自分にとって都合が良ければそれでよいという身も蓋もない話なので、東京新聞はそのまま「菅氏、内閣人事局は変えず 『政策反対なら異動』」と報じました。石破、岸田の2候補が見直しが必要と指摘したのは当然のことです。
官僚組織が即 善であるとは言いませんが、官僚による是正機能を失った安倍内閣がどんなに国の姿を枉げたかは例を挙げるまでもありません。菅氏は、安倍政権の負の遺産である「モリ・カケ・桜」の問題についても「解明は不要」だとして、他の2候補との違いを鮮明にしました。それは国民の思いとの違いでもあります。
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菅氏、内閣人事局は変えず 「政策反対なら異動」
東京新聞 2020年9月13日
自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官は13日のフジテレビ番組で、中央省庁の幹部人事を決める内閣人事局に見直すべき点はないと明言した。政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」とも強調した。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長と出演したフジテレビ番組で発言した。
内閣人事局は2014年5月に内閣官房に新設された。幹部人事を掌握するため、官邸主導の意思決定を後押しする一方、官僚の忖度を生む要因と指摘される。 続くNHK番組でも、菅氏は、査証(ビザ)の要件緩和が訪日外国人増加につながったとして「官邸主導でなければできなかった」と語った。(共同通信)
人事局「功罪」菅氏防戦 2候補は運用見直し―自民総裁選
時事通信 2020年09月13日
「ポスト安倍」を選ぶ自民党総裁選で論戦のポイントの一つは、中央省庁の幹部人事を一元的に扱う内閣人事局の在り方だ。安倍政権下で誕生した同局は首相官邸による霞が関の掌握と政治主導の政策決定を可能にした。一方で、官邸の意向を忖度(そんたく)する空気を官僚の間に醸成したと指摘される。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長はそろって運用見直しを唱え、人事局を通じて各省庁ににらみを利かせてきた菅義偉官房長官は防戦に回っている。
◇色なした菅氏
「反論させてもらう。大臣を蹴飛ばして官邸で人事をやることはない。大臣の納得の上でなければ人事は行わない」。総裁選中も物静かな語り口を崩さない菅氏が、珍しく色をなす場面があった。8日のテレビ番組で、石破氏が「大臣を飛ばして官邸に駆け込む官僚がいないとは言わない」と人事局の運用を批判した時だ。
菅氏の反論に対し、石破氏は「それがきちんと行われていることが大事だ」と、菅氏の説明は実態とかけ離れていると言わんばかりに語った。
内閣人事局は第2次安倍政権下の2014年5月に発足。以来、安倍晋三首相と菅氏が各閣僚と協議し、審議官級以上の各府省庁幹部約600人の人事を差配してきた。この間、官邸に近いと当時目されていた黒川弘務元東京高検検事長の重用など、議論を呼んだ人事も少なくない。
官邸主導の人事は、次第に官邸の顔色をうかがう官僚を生んだ。森友学園問題での公文書改ざんの背景にも、財務省幹部の忖度があったと指摘される。
◇官邸主導の是正訴えも
菅氏は、こうした人事局への批判は「誤解されている部分がある」との立場だ。省庁の幹部人事は基本的に各閣僚が決めており、官邸は女性やノンキャリアを抜てきするなどのケースでしか口を挟んでこなかったと説明。人事局見直しは必要ないと強調する。
これに対し石破氏は、実際は官邸が忠誠度を基準に各府省庁の人事に介入してきたとの認識に立ち、「官邸に忠実であるより、国民にいい仕事をしたことを評価すべきだ」と主張。森友問題で「記録は廃棄した」などの答弁を繰り返した財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が国税庁長官に起用されたことを念頭に「公文書改ざんなどに関わった人がより高いポストに就くことは絶対にあってはならない」と批判する。
岸田氏は「官僚に省益を超えて働いてもらうシステム」と人事局自体は評価しつつも、「忖度などの弊害があるのではないかと疑念を挟まれないような工夫はしなければいけない」と人事プロセスの透明化を唱える。同時に「トップダウンとボトムアップをうまく使い分けるのが賢い政治」と、行き過ぎた官邸主導の是正も訴えている。
負の遺産「モリカケ桜」菅氏は「解明不要」 石破、岸田氏との違い鮮明
東京新聞 2020年9月13日
自民党総裁選に立候補した石破茂元幹事長、菅義偉すがよしひで官房長官、岸田文雄政調会長は12日、日本記者クラブ主催の公開討論会に出席した。森友、加計かけ学園や首相主催の「桜を見る会」など国民に疑惑を持たれた問題を巡り、安倍晋三首相からの継承を掲げる菅氏は、いずれも疑惑解明の必要がないと主張。石破、岸田両氏は再調査に柔軟な姿勢を示し、安倍政権の「負の遺産」への立場の違いが鮮明になった。(川田篤志)
◆菅氏「森友問題は結果出ている」
森友学園への国有地売却の公文書改ざん問題について、菅氏は「財務省で調査し、検察でも捜査した。結果は出ている」と強調。「再びこうしたことを起こしてはならない」と再発防止策が重要だと訴えた。 公文書改ざんを強いられて自殺した財務省職員の妻が求める第三者委員会による再調査も不要との見解を示して「結果として処分は行われた」と指摘。麻生太郎財務相らが政治責任を取っていないことへの見解を問われたが、明確な回答をしなかった。
首相の友人が優遇されたとの疑惑を持たれている加計学園の問題では「法令にのっとって、オープンなプロセスで検討が進められたことが明らかになっている」と回答。世論が納得しているか認識を聞かれたのに対しては「世論というよりも、やはり政府」と述べ、世論より政府としての判断が重要との認識を示した。桜を見る会を巡る問題は「国会でたびたび答弁している」として詳しい説明を避けた。
◆石破氏は政府対応批判「再調査すべき」
これに対して、石破氏は「必要ならば再調査すべきだ。国民が『納得した』と言うのが過半数にならなければいけない」と異議を唱えた。桜を見る会に関しては「不公平があったんじゃないですかということだ。記録を残すのは当たり前のことだ」とこれまでの政府の対応を批判した。
◆岸田氏も問題視「国民は納得しているか」
岸田氏も「説明が十分かどうかは、説明する側ではなく、説明を受ける側が納得しているかどうかだ」と問題視。「(首相の)立場に立ったなら対応は考えないといけない」と語った。