2020年9月23日水曜日

ヒトラー政権を継承するゲッペルス(植草一秀氏)

  植草一秀氏は安倍政権について次のように考察しています。

 安倍内閣の大きな特徴は警察出身者を内閣の中枢に配置したことで、杉田和博官房副長官北村滋国家安全保障局長の他、警察庁中村格(現次長)を内閣府に配した。そして黒川弘務検事を検事総長に据えて政権の安泰を図るべく手を尽くたが、それは黒川氏が賭け麻雀で辞任に追い込まれて挫折した。それらの実務を行ったのが菅義偉氏で、彼はこの秘密警察国家機構と密接に関わってきた。もう一つの特徴は、マスメディアを徹底的に統制したことで、その実務もすべて菅氏が行った。この刑事司法の不正支配とマスメディアの不正支配により安倍政権は安定性を獲得し、選挙にも勝って長期政権を達成できた。
 安倍内閣の裏側でこの活動を指揮した菅氏が今度は首相として表に出ることになったので、陰湿で暗い政権運営が展開されることは間違いない」と。

 因みに題名に出ているゲッベルスとは、ナチスドイツの国民啓蒙・宣伝相のパウル・ヨーゼフ・ゲッベルスのことで、彼は国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)における左派の中心人物の一人でした。当初は思想的・戦術的にアドルフ・ヒトラーと対立しましたが、ヒトラーは彼の能力を高く評価していて独裁者になった後は宣伝相に引き立てました。ヒトラーは第二次大戦に敗れ自死するに当たりゲッベルスを後継首相に指名しました。ゲッペルスは短期間その任についたものの家族と共にヒトラーの跡を追いました。
 植草氏の記事を紹介します。

 併せて同氏の記事「人の移動爆発が感染拡大促進する可能性」を紹介します。

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ヒトラー政権を継承するゲッペルス

植草一秀の「知られざる真実」 2020年9月21日

安倍内閣が長期化した三つの理由を挙げてきた。 1.刑事司法の不正支配 2.マスメディアの不正支配 3.国民のゆるさ だ。

三つ目の「国民のゆるさ」が本質的な問題だが、「国民のゆるさ」を生み出す背景になったのが、1の刑事司法不正支配と2のマスメディア不正支配である。そして、この1と2の背景を生み出す原動力となったのが菅義偉氏であると言える。

安倍内閣が関与した不祥事は多数にのぼる。下村博文氏事案、甘利明氏事案はいずれも刑事事件として立件するべきものであった。安倍首相が深く関与した森友、加計、桜の三つの疑惑も刑事事件として立件するべき事案である。秋元司、河井克行、河井案里各氏の3名については逮捕、勾留、起訴されている。

河井克行・案里両氏の事案では公選法違反事案の資金拠出源が明らかにされる必要がある。2019年の参院選において河井案里氏を当選させ、溝手顕正氏を落選させることが,どのような意味を持つのかを明確に認識する必要がある。溝手氏は岸田派の重鎮議員である。溝手氏が当選した場合、溝手氏は次期参院議長の最有力候補に浮上するはずだった。溝手氏が落選することは派閥領袖である岸田文雄氏に与えるダメージが極めて大きい。溝手氏を落選させることは、次期首相を狙う菅義偉氏にとって極めてメリットの大きい事象だった

河井陣営に流れた1億5000万円の資金が官房機密費からのものであったとするなら、極めて重大である。安倍内閣は河井克行・案里氏事件の捜査を早期に終結させる意向を有していたと見られる。そのために、菅義偉氏と深い関係にある黒川弘務氏の検事総長就任を安倍内閣が切望したと見られている。

河井氏事件捜査は広島地検、広島高検を舞台に展開された。黒川弘務氏は東京高検検事長の職にあり、広島高検管内の事件捜査には影響力を行使し得なかった。検察が安倍内閣による検察支配に示した懸命の抵抗だった。結局、黒川氏のチョンボによって黒川氏の検事総長就任は挫折した。その結果として、河合氏夫妻逮捕が実現した。さらに、捜査を進行させるかどうか。官邸と検察の神経戦が続いている。

検察は林真琴氏の検事総長就任を獲得したため、官邸と手打ちをしたとの見方もあるが、菅義偉首相は林検事総長を牽制するために上川陽子氏を法相に就任させたと見られている。いずれにせよ、安倍内閣による刑事司法不正支配の中核を担ったのが菅義偉氏であることは間違いない。準強姦容疑で山口敬之氏に対して発付された逮捕状は警視庁刑事部長の中村格氏によって握り潰された。中村格氏は菅義偉官房長官の秘書官を務めていた人物である。文部科学省事務次官であった前川喜平氏に対する攻撃は内閣調査室が収集した情報に基づく可能性が高い。

安倍内閣の大きな特徴は警察出身者を内閣の中枢に配置したことである。杉田和博官房副長官、北村滋国家安全保障局長、中村格警察庁次長などの警察官僚が内閣の用心棒として秘密警察国家の骨格をなしている。この秘密警察国家機構と密接に関わってきたのが菅義偉氏である。

他方、安倍内閣のメディア締め付けを実践した中核人物が菅義偉氏なのだ。安倍首相記者会見は官僚が用意した台本を読むだけのショーと化した。質疑応答の質問は事前に提出させられ、その回答を官僚が台本にして用意する。質問は予定した者にしか当てない。記者クラブ制度をフル活用して台本に基づく三文芝居が演じられてきた。

この「台本営」制度を構築したのも菅義偉氏であると見られる。テレビ報道番組で内閣に不都合な放送があれば、直ちに直接クレームを突き付ける。悪質な情報統制が繰り広げられてきた。

安倍内閣の裏側でこの活動を指揮した人物が表に出ることになった。陰湿で暗い政権運営が展開されることは間違いない。

(以下は有料ブログのため非公開)

 

人の移動爆発が感染拡大促進する可能性

植草一秀の「知られざる真実」 2020年9月20日

安倍コロナミス(改定版)は 1.検査抑制 2.対応の遅れ 3.第2類指定への固執 だった。安倍内閣が新型コロナ感染症を第2類相当感染症に指定したのは1月28日。この時点ではコロナの実態がまだよく分かっていなかった。しかし、安倍内閣は5段階ある感染症分類のなかで極めて危険性の高い感染症であるとの指定を行った。この第2類相当指定がその後の混乱の主因になった。

しかし、この指定とその後の安倍内閣の対応は完全に矛盾する。安倍内閣が緊急事態宣言を発出したのは4月7日。それまでは五輪開催優先の対応を示した。3月1日には東京マラソンまで実施している。中国政府が武漢市を封鎖したのは1月23日。台湾政府は昨年末に武漢市の異変を把握してWHOに警告メッセージを送った。1月23日には武漢市からの入境禁止の措置を取った。安倍首相は1月24日に在中国日本大使館HPで中国国民に対して2月の春節休暇を利用しての訪日を呼びかけた。コロナ危機感ゼロの対応が示され、日本のコロナ対応は丸2ヵ月遅れたのだ。

コロナの実態を把握するには徹底的な検査実施が必要不可欠だ。安倍内閣は1月28日に第2類相当指定を行っている。極めて危険性の高い感染症であるとの指定を行った。この認識に立つなら、検査を徹底的に拡充し、「検査と隔離」措置を取ることが必要だった。ところが、安倍内閣は徹底的に検査を抑制する行政運営を実行した。その陣頭指揮を執ったのが加藤勝信・現官房長官だ。そのために、コロナ感染症の実態を掴めないという致命的な過ちが生じた。

日本のコロナ致死率は9月19日段階で1.9%。決して低い水準でない。2009年の新型インフルエンザ致死率が0.5%程度と推定されている。新型インフルエンザの4倍の致死率は重大だ。しかし、この致死率は過大推計だ。検査が十分に行われてこなかったために陽性者数が過少推計になっている。東アジアで検査をもっとも実施しているのがシンガポール。人口100人当たり43人に検査を実施している。日本の検査数は人口100人当たり1人にとどまっている。シンガポールのコロナ致死率は0.05%。これが東アジアのコロナ致死率の実態と考えられる。

欧州でもっとも検査を実施しているのは英国。100人当たり31人に検査を実施している。

この英国のコロナ致死率は10.7%。圧倒的に高い。したがって、欧米や南米でコロナ対応が厳格になるのは順当だ。

「コロナはただの風邪」は全世界では成り立たない。欧米や南米,東アジア以外のアジアの現況はコロナに対する厳戒態勢を正当化するものだ。しかし、東アジアでコロナ被害は軽微にとどまっている。日本における第2類相当の指定は過大だ。日本政府がPCR検査を徹底的に抑制したことでコロナの実態を掴むことが完全に遅れた。そのために第2類相当指定への固執が続き、経済悪化を加速させた。

これらの反動もあり、菅新内閣がGOTOキャンペーンの対象を東京にも拡大する方針を示している。その結果として人の移動が急激な拡大を示す兆候が現れている。

                アップル社 人の移動指数と東京都新規陽性者数推移

 人の移動指数の変化が4週間後の新規陽性者数に反映される。

10月下旬にかけて新規陽性者数が再び増加する懸念が高まっている。

(以下は有料ブログのため非公開)