2020年9月5日土曜日

05- ナワリヌイ氏が昏睡状態になったのは低血糖のためでは

 2020年8月20日、ロシア反体制派の政治活動家であるアレクセイ・ナワリヌイが、ロシアの空港で毒物が混入した紅茶を飲み意識不明の重体となりました。その後ロシアの病院で回復したのですが、ドイツが原因を調査するということでナワリヌイ氏を空路ドイツのベルリンの病院に運び、そこで猛毒のノビチョク系の毒物が検出されたと発表しまし
 当然西側の論調はロシア(プーチン)非難の一色となりました。

 それでなくとも14年にウクライナでクーデターが起こされた時、ロシアがクリミヤ半島に進出してそこに居直ったと、米国が大批判して世界中に対露経済封鎖を呼びかけて以来、ロシアを非難することは余りにも当たり前のことになっていました。
 しかし、そもそもウクライナのクーデターは米国がロシアオリンピックの終了に合せて引き起こしたものであり、クリミアの軍港についても元々ロシアがウクライナから借用していたもので、軍港の警備のために軍隊が常駐していたのでした。
 非はむしろ米国の側にあったのでした。

 それはともかくとして、ナリヌワイ氏の件ではおかしい点がいくつもあって、ドイツの発表もとても鵜呑みには出来ません。
 Moon of Alabama紙は、なぜもっと真実味のあるおとぎ話を思いつくことはできなかったのかと述べ、「ロシア国家、あるいはプーチンがナワリヌイを毒殺しようとしたのなら、なぜ国外に彼を飛行機で連れ出すことが許されたのだろう」としています。
 これは子供にもすぐに分かる話で、同紙はその他にも4つの疑問点を挙げています。

 ところで文中にスクリパリ親子(娘)の話が出てきますが、それは英国に亡命していた親子が18年3月に公園でノビチョクのガスを浴びせられたとされる事件ですが、犯人は不明で、親子は猛毒ガスを浴びたにもかかわらず健在が伝えられました。これも謎に満ちた事件でした。
 因みにセルゲイ・スクリパリは元ロシア軍情報総局幹部です。

「マスコミに載らない海外記事」の記事を紹介します。
 併せて櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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スクリパリ化されたナワリヌイ
マスコミに載らない海外記事 2020年9月 4日
Moon of Alabama 2020年9月2日
 私がこれを読んだ時の最初の反応は、あくび!だった。彼らは、もっと真実味のあるおとぎ話を思いつくことはできなかったのだろうか?
ドイツ政府は、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイから採取された試料に行なわれた検査で、ソ連時代の神経ガス、ノビチョクが存在していたと主張している。
水曜、アンゲラ・メルケル首相報道官シュテフェン・ザイベルトは、特別なドイツ軍研究所で検査したところ「ノビチョク・グループの化学神経ガス」の証拠を示したと声明で述べた。

ソ連時代の神経ガス、ノビチョクは、イギリスで、元ロシア・スパイセルゲイ・スクリパリと彼の娘を毒殺するために使われた。それはコリン・エステラーゼ阻害薬、シャリテー大学病院の医者が、初めにナワリヌイで確認した物質のクラスの一種だ。

「軍用」「最も致命的な」毒物ノビチョクが、どうして誰も殺さないのか奇妙だ。
 ちなみに、スクリパリ親子はどこにいるのだろう? 今度はナワリヌイが彼らがそうだったのと全く同様に消えるのだろうか?
 問いたい他の疑問はこれだ(そして決して答えられるいものだ)。

ロシア国家、あるいはプーチンがナワリヌイを毒殺しようとしたのなら、なぜ国外に彼を飛行機で連れ出すことが許されたのだろう?
病んだアレクセイ・ナワリヌイの血液を分析した2つのロシア研究所には、いかなる異常な物質の痕跡も見いだされなかった。なぜだろう?
ナワリヌイが、この毒物にさらされたとされているのに、周囲の誰も被害を受けなかったのはなぜだろう
ドイツ政府は、なぜナワリヌイをベルリンに連れて行くのをそれほど熱心に望んだのか
この反ロシア情報工作は誰が先導しているのだろう? MI6、CIA、それともドイツ連邦情報局BND

 ナワリヌイ事件、少なくとも、それが巻き起こしたことは、ベラルーシで、アメリカが実行したカラー革命失敗への反応だと私は思う。そのためにロシア罰しなくてはならないのだ。
 オムスクの病院は、まだナワリヌイの本物の血液試料を持っている。
 それを再検査できる中立の国際研究所はあるのだろうか?



反プーチンのナワリヌイの妻の父親はロンドンで資産を管理する元KGBの銀行家
櫻井ジャーナル 2020.09.04
 空港のバーで同行していた人物が運んできた紅茶の中に入れられていた毒でアレクセイ・ナワリヌイは昏睡状態になったと彼の広報担当者は主張、西側の有力メディアはウラジミル・プーチンが毒を盛った可能性が高いと宣伝している。ちなみに、紅茶を運んだ人物に異常はない。
 本ブログでも指摘したが、ナワリヌイを診察した病院の医師は昏睡状態になった原因は低血糖だとしている。彼は糖尿病を患っていることから、糖尿病性ショックとも呼ばれる重度の低血糖が原因だと見るのが常識的。相変わらず、西側の有力メディアは証拠、根拠を示すことなく「プーチンの陰謀」を宣伝している。

 2010年にアメリカのエール大学で行われているエール・ワールド・フェローズにナワリヌイは参加した経験がある。毎年、同大学では世界各地からエリート16名を集め、4カ月間一緒に生活させ、訓練するのだという。西側の支配者に選ばれた人物ということだ。
 ナワリヌイの妻も興味深い人物だと言われている。彼女の父親、ボリス・アブロシモフはロンドンにおけるロシア人の財産を管理している銀行家で、元KGB。ロシアの富豪で元KGBのアレクサンダー・レベデフの同僚だという。

 ソ連最後の書記長はミハイル・ゴルバチョフ。ペレストロイカ(建て直し)を彼は打ち出すが、それを考え出したのはKGBの頭脳と言われ、政治警察局を指揮していたフィリップ・ボブコフだとされている。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018)
 このボブコフを含むKGBの中枢にいた一部幹部はジョージ・H・W・ブッシュをはじめとするCIA人脈と連携していたとも言われている。そしてCIA人脈とKGBの中枢が手を組んでソ連を消滅させ、その資産を盗んだというのだ。ハンマー作戦である。そうしたKGBの腐敗勢力の下で活動した若者も富豪となり、オリガルヒと呼ばれるようになった

 ゴルバチョフは1990年に東西ドイツの統一を認めたが、それにはNATOを東へ拡大させないという条件がついていた。国務長官だったジェームズ・ベイカーはこの約束を否定していたが、ドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っている。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 またドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にエドゥアルド・シェワルナゼ外相と会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 1991年8月にゴルバチョフを排除する出来事があったが、その工作をしたのも同じチームだ。そして登場してくるのがボリス・エリツィン。勿論、アメリカの支配者は約束を守らない。NATOは東へ拡大し続けてロシアへ迫っている。

 エリツィンは自分の忠実な部下と考えていたKGB出身のウラジミル・プーチンを1998年7月にFSB(KGBの後身)の長官に任命、99年8月には第一副首相、そして首相代理、同年12月には大統領代理になった。
 プーチンは米英金融資本の操り人形になるはずだったのだが、大統領に就任した2000年5月から彼はロシアを再独立させる政策を打ち出していく。クレムリンを支配していた米英金融資本の手先、オリガルヒの粛清を始めたのだ。エリツィンも金融資本もKGB出身のプーチンに騙されたわけである。西側では腹立ち紛れに「偽者説」を流す人もいる。
 クレムリンへの従属を誓ったオリガルヒもいるが、少なからぬ富豪はロンドンやイスラエルへ逃げた。ウォール街と並ぶ金融の中心地、ロンドンのシティへロシア・マネーが流れ込むのは必然だが。その額の多さからロンドンは「ロンドングラード」と呼ばれたほどだ。
 そのロンドンでナワリヌイの妻の父親はロシア人富豪の資産を管理している。