2020年9月16日水曜日

16- 菅氏が圧勝 “世紀の茶番”総裁選を総括(上・中)(日刊ゲンダイ)

  日刊ゲンダイが14日の巻頭特集として「スッカラカンの菅氏が圧勝 “世紀の茶番”総裁選を総括 <上・中・下> 」を出しました。うち <中> と <下> は有料記事のため非公開でしたが、記事集約サイトの「阿修羅」に <中> 編の文字起こし版が載りましたので転載します。 <下> についても「阿修羅」に載りましたら紹介します。

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スッカラカンの菅氏が圧勝 “世紀の茶番”総裁選を総括<上>

 日刊ゲンダイ 2020/09/14

何の国家観もない薄っぺらに自民党議員が利害と打算で雪崩の異様

 何の期待も、高揚感もない。14日投開票の自民党総裁選は、自民党議員の異様な権力欲を国民に見せつけただけだった。病気を理由に再び政権をブン投げた安倍首相の「石破にだけは政権を渡さない」という意向をくんで、二階幹事長が担いだ菅官房長官に主要派閥があっという間に雪崩を打った醜悪な総裁選。下馬評通り、菅氏が377票(総数535票)をとって圧勝したが、この結果は8日の告示前から、決まっていた。わずか6日間の短い選挙戦でも、菅のスッカラカンぶりが日に日に露呈。それでも圧勝シナリオは揺るがなかった。今の権力構造を維持したいベテランと、ポストにありつきたい中堅・若手にとって、都合のいい存在が菅だったのだ。そういう利害と打算から生まれたおぞましい新政権が発足しようとしている。

 選挙戦終盤の12日、日本記者クラブ主催の公開討論会では、菅、石破元幹事長、岸田政調会長の3候補が冒頭に「目指す国家像」について書いたパネルを掲げて語る場面があった。石破は「一人一人に『居場所』があり、一人一人が『幸せ』を実感できる国」、岸田は渋沢栄一の著書から「論語と算盤」。そして菅が掲げたのは「自助、共助、公助、そして絆、規制改革」だった。

「規制改革は“国家像”なのでしょうか。選挙戦で何度か行われた討論会では、石破氏や岸田氏が歴史認識や社会観を語るのに対し、菅氏は目先の携帯料金やふるさと納税のことばかり。宰相にふさわしい思想や教養を培ってこなかったから、手元の分厚いファイルがないと何も語れない。現況では自民党総裁が首相になるというのに、何の国家観も持ち合わせていないのです」(政治評論家・本澤二郎氏)13日のNHK番組でも、憲法改正に「政府として挑戦したい」と発言し、直後に「党総裁の立場で」と訂正する場面があった。自衛隊についても「憲法で否定されている」と発言し、翌日に訂正。統治機構の基本も分かっていないのだ。こんな薄っぺらを新総裁に選んだ自民党には、呆れるほかない。

総選挙で際立った「原稿棒読み」に国民はア然、野党は手ぐすね

 見れば見るほど、聞けば聞くほどスッカスカ。連日の総裁選討論会で見せられた菅の振るわない弁舌にア然とした国民は少なくない。付箋だらけの想定問答集を常に注視し、口を開ければ棒読み。それでいて、「自衛隊は憲法の中で否定されている」と政府見解と真逆な見解を言い出したり、消費増税に踏み込み、釈明に追われる始末だ。「聞かせる演説」に定評のある石破と比べるまでもないが、場慣れして伸び伸びと語る岸田との差も開く一方だ。総裁選の中心人物が泡沫扱いの2人の足元にも及ばないとは「最強の官房長官」が聞いて呆れてしまう

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。「説明能力に欠け、スポークスマンに最もふさわしくない人物が歴代最長の官房長官だったことが浮き彫りになりました。国のトップとしての政策ビジョンはなく、政治手法は強権支配の安倍政権の継承。国民と内閣を遮断してきた実行役を国のトップに担ごうとする自民党が、いかに腐った政党なのかもよく分かった。もっとも、野党は腕の見せどころです。これほど分かりやすくアベ政治の醜悪さを凝縮し、独善的な政治家はいないでしょう。国会で正々堂々の議論になれば、アッという間にボロを出すことになる」

 菅は官房長官会見では都合の悪い質問を「全く問題ない」「批判は当たらないなどの常套句ではねつけ、露骨な嘲笑で批判を押さえつけてきたが、国会審議ではその手は通用しない。新生した立憲民主党の勢力は、旧民進党の分裂前の規模に迫る。野党がガッチリ共闘して憲法53条に基づく臨時国会召集を要求し、早々に追い込むしかない。

 

スッカラカンの菅氏が圧勝 “世紀の茶番”総裁選を総括<中>

 日刊ゲンダイ 2020/09/14(「阿修羅」より転載)

永田町で飛び交う安倍仮病説と菅禅譲への謀略

 持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由に政権を2度もブン投げた安倍の“健啖”ぶりが報じられ、臆測が広がっている。唐突な辞意表明から2週間。安倍は11日夜、公邸で谷口智彦内閣官房参与や鈴木浩外務審議官らと2時間ほど会食。その様子を朝日新聞(同日配信)が〈谷口参与によると、首相はコース料理を完食し、ワインも口にしていたという〉と報じた。安倍は辞任会見で「予断は許しません」とか言っていたが、早くも快方に向かっているのか。「安倍さんが再起を期して2度目の総裁選に挑む少し前ですが、ある私的な会合で赤ワインをたしなんでいたと報じられたことがありました。普段はマスコミ報道に神経質なのに、この時は全く波風が立たなかった。どうやら健在ぶりをアピールするのに好都合と判断したようなのです。〈安倍晋三はワインをグイグイ飲むほど体調万全〉というイメージを広げる戦略で、その直後に総裁選に名乗りを上げていた。今回も何らかの意図を感じずにいられません」(永田町関係者)

 また「過去の人」と陰口を叩かれたくないからか、キングメーカーとして存在感を誇示するためか、はたまた3度目への布石か。一方で、永田町では仮病説まで飛び交っている。衆院事務局に30年余り勤めた元参院議員の平野貞夫氏もネットメディア「デモクラシータイムス」の番組(8日配信)で、こう疑問を投げかけていた。「安倍首相は潰瘍性大腸炎が再発したことを退陣の理由にし、既成事実化した。医師団の公式発表がないのは非常に大きな問題です。安倍首相の意図によって7年8カ月の法的、政治的責任を封じ込めるため、首相の仲間による権力の私物化ではないのか。これは憲法上、許されない“自己クーデター”ではないか」平野氏によると、病気で退陣を余儀なくされた元首相は石橋湛山、池田勇人、小渕恵三の3人。石橋と池田は辞任にあたって医師団が病状を発表。小渕は逝去後に医師団が会見した。安倍の辞め方も謎なら、電光石火の密室劇で疑惑潰しを継承した“黒子”が圧勝の流れ。確かに、あまりに出来過ぎの展開なのだ。

旧態依然の派閥に乗っかりながら「改革者」を気取っている二枚舌

 派閥解消、世襲制限を訴えてきた菅が、世襲だらけの主要派閥に担がれて新総裁に選ばれる。漫画みたいな話だ。この矛盾を突かれることは本人も気にしているのだろう。総裁選の告示前から、新政権の人事は「派閥からの要望は受け付けない」「改革意欲のある人を優先」などとカッコつけていたが、菅を支援した5派閥の間では、すでに閣僚ポストや党役員人事をめぐる主導権争いが勃発している。派閥の力がなければ総裁になれなかった菅が、派閥の意向を無視できるのか。組閣・党人事が見ものだ。

 だいたい、菅の言う改革とは何なのか。やたらと省庁の縦割りを敵視しているが、それは権限を官邸に一極集中させたいだけではないのか。「同じ官邸主導でも、小泉政権では自由闊達な議論がありました。首相が聞き入れるかどうかは別として、反対意見も言えたし、それで冷遇されたり、左遷されることはなかった。ハナから議論する気もなく、自分がこうと決めたら脅してでも言うことを聞かせてきたのが安倍政権であり、それを継承する菅政権です。改革というのも、自分たちに都合のいいように変えるということでしかなく、官邸主導や改革を誤解している。持論の省庁再編にしても、利権を一手に握りたいだけのように見えます。改革という美名の下に自己責任を強要し、格差拡大を容認する新自由主義者にしか見えません」(本澤二郎氏=前出)

 小泉政権も決して褒められたものではなかったが、小泉元首相は「自民党をぶっ壊す」と言って、本当に派閥の力に頼らず、党員・国民から直接の支持を受けて総裁に選ばれた。だから「改革」を口にする資格があったとも言え、そこが派閥に乗っかった菅との一番の違いだ。菅はデジタル庁創設など省庁再編に言及。大風呂敷を広げて本格政権を目指しているようだが、国民はその胡散臭さをすでに感じている

加計疑惑の中心人物が第2の今井になる醜悪

 安倍政権の不正、失政の元凶が「官邸官僚」の跋扈だった。菅はこの悪習も継承しようとしている。「安倍首相は経産省出身の今井補佐官を最も信頼し、重用してきましたが、安倍政権を支えてきた官邸官僚の中でも菅長官に近く、側用人といわれるのが杉田官房副長官と公金不倫疑惑で有名になった和泉首相補佐官です。この2人にはすでに官邸残留が伝えられたそうで、菅政権では、ますます権限を強めそうです」(官邸関係者)

 安倍の悪事を隠蔽するのが菅の役割とはいえ、官邸官僚の続投は、あまりに国民をバカにしている。わけても杉田副長官と和泉補佐官は加計学園問題の中心人物だ。加計問題で「総理のご意向」などと書かれた文科省文書の存在を認め、疑惑を告発した前川元文科次官に対し、新宿の出会い系バーへの出入りをとがめて“警告”したのが杉田副長官だった。構造改革特区で15回もはねられた加計学園の獣医学部新設を、国家戦略特区を用いて、針の穴を通すようなスキームを練り上げて実現させたのは和泉補佐官だといわれる。

「内閣人事局で霞が関の幹部人事を握り、茶坊主を引き立てて逆らう者は左遷させる強権を振るって、忖度政治を蔓延させたことは安倍政権の負の遺産です。官僚機構ににらみを利かせてきた張本人が菅官房長官だった。疑惑の隠蔽に協力した官僚が出世する国家が続くなんて、国民にとっては悪夢ですよ。アベノマスクのように判断を誤った政策でも、官邸が決めたことに官僚も国民も黙って従えという態度では、ますますイエスマンしかいなくなる。すべてが密室で決まり、そのプロセスが国民には知らされない非民主主義が菅政権では強化されることを覚悟しなければなりません」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 菅は13日のフジテレビ番組で、内閣人事局に「見直すべき点はない」と明言。政権の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と強調した。実際、ふるさと納税の欠点を指摘しただけで、総務官僚を左遷させたこともある。ちょっと意見を言うと、「許さない」と感情的に異動させるのであれば、それは報復人事だし、独裁国の恐怖政治である。