2020年9月16日水曜日

菅官房長官に圧力をかけられた元官僚たちが語る恐怖支配の手口(LITERA)

  菅氏は内閣府が官僚の人事権を握ったことの理由として、省庁縦割りの制度、省庁の既得権、悪しき前例踏襲(の風土)を改革するためとしています。そうした弊害を改めるのは必要なことですが、そのことは内閣が人事権を握ることの正統性の説明にはなりません。政治家(議員)は選挙で選ばれているから何をしても良いというのも「当たらない」し、まして自分の構想にクレームをつけた官僚を左遷する理由にはなりません。また総裁選で問われたときに、官僚の異動は大臣の了解を得てやっていると説明しましたが、ふるさと納税に反対意見を述べた平嶋総府省局長(当時)自治大学校長に左遷したときも、高市早苗総務相がの昇格を提案した際に氏が「それだけは許さない」と拒否して断行したものであったし、前川元文科省事務次官も、官邸が了承した人事を菅氏が拒否した事例がよくあったと述べています。要するに菅氏はその時 平然と虚偽の説明を行ったのです。「虚偽・捏造・隠蔽・・・」のネーミングを思い起こさせるものです。

 そもそも平嶋氏は、自治税務局内の統一見解を持ってきたもので、意見の具申に当たっては資料を準備しそれに目を通して欲しいと述べたのですが、菅氏は全く目も通さずに突き返し、翌15年に左遷の人事を行ったのでした。普通であれば意見に耳を傾け、資料にも目を通した上で判断すべきものです。菅氏の対応は、意見に先ずは耳を傾けるという常識も謙虚さもなく、唯々自分の構想に反対するのは怪しからんと憤る狭量さ、レベルの低さ、執念深さ、陰険さの持ち主であることを示しています。いずれも政治家以前の問題であり彼には人格の陶冶こそが求められます。

 改革は一定の権限の下で理詰めで行うべきものであって、本来、恣意的・独裁的な人事権を振り回すこととは全く無縁の話です。しかし菅氏は、内閣府人事局が発足した14年5月以降、先頭に立ってそれを悪用してきました。その結果起きたのは官僚による官邸の意向への忖度の蔓延で、官界を始めとして世の中はあるべき姿から「まがり切り」ました。その悲劇を自覚せずに平然と今後も続けるとしたのでした。安倍首相の懐刀と見られた段階でもそうだったのですから、いまやトップに躍り出たのでこの先布かれる恐怖政治の不毛は計り知れません。それは改革とは無縁であり、あるべき政治の姿でもなく、逆に、ウミを出し切るどころかその本体の一方が残ってしまったということです。勿論菅氏には、安倍政権の不正、失政の元凶が「官邸官僚」の跋扈にあったという自覚もありません。病膏肓に入るというべきで、そんな人間が改革を謳うのは笑止です。

 LITERAの記事を紹介します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

菅義偉“総理”誕生で政府は権力のために不正を働く「忖度官僚」だらけに! 圧力をかけられた元官僚たちが語る恐怖支配の手口

 LITERA 2020.09.14

 「密室政治による茶番劇・出来レース」の末、本日14日、菅義偉氏が自民党総裁に選ばれた。16日に臨時国会でおこなわれる首班指名選挙を経ることになるが、事実上、菅総理が誕生したということになる。だが、この新たな菅政権が安倍首相時代をはるかに上回る恐怖政権となることは火を見るよりも明らか。総裁選の最中から「まずは自分でなんとかする」という「まずは自助」を掲げたことも象徴的だったが、露骨だったのは、昨日13日出演した『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)での発言だ。同番組では、菅氏とも昵懇の関係にある橋下徹氏が「政治的に決定したあとに官僚が反対してきた場合、異動させるのか、異動させないならどうするのか。安倍政権に対する批判で内閣人事局の問題ありますが、断固異動させるのか、異動しないならどういうかたちで」などと総裁選候補者に質問。すると、菅氏はこう答えた。「私ども、選挙で選ばれてますから、何をやるかという方向が決定したのに反対するのであれば異動してもらいます

 政権の意向に歯向かう官僚は異動させる──。ようするに、菅氏は「現場の声に耳を傾ける気などさらさらないし異論を唱える者は排除する。弾かれたくなければ忖度しろ、言うことを黙ってきけ」と恫喝したのだ。森友問題では安倍首相の「私や妻が関係していたら首相をやめる」という発言を端緒にして公文書の改ざんが命じられ、それに猛反発したのに聞き入れられず従わされた近畿財務局の職員・赤木俊夫さんは自殺にまで追い詰められた。このような事件を起こしておきながら、公然と「恐怖政治」を敷くことを断言するとは……。首相になる前から横暴さを隠そうともせずおこなわれた、この「独裁」宣言。しかも、『日曜報道 THE PRIME』では、安倍政権下で官僚の忖度を引き出す役割を担ってきた内閣人事局について見直す点はないかと問われると、菅氏は「ないと思います」と平然と答え、「懸案はまず大臣に入ってくる。大臣は自分の省庁のことをしっかりみている。大臣が了解しなければ動かすことはしない」と述べた。

 菅氏は8日放送の『news23』(TBS)でも、「大臣を蹴飛ばして官邸で人事をやることはないんです。それは大臣がそれぞれの省庁に責任持っているわけですから」などと強弁し、官邸主導の人事を否定したが、それはまったくの嘘だ。実際、12日放送の『報道特集』(TBS)では、前川喜平・元文科事務次官が「以前も『官邸の了解を取る』という手続きはあったんですけども、大概は官邸はOKをしてたんですけども、菅官房長官からはダメ出しを食らうと。拒否権を発動されるということがよくありました」と言い、その具体例についてこう明かしていた。「文化庁長官の人事で、文科省からの内部登用というかたちで当時の大臣の了解をもらって官邸に持っていって、官邸で(官房)副長官の杉田(和博)さんの感触はよかったですけども、官房長官にあがったら、これを差し替えさせられたと、こういうようなケースはありました」

 しかも、菅氏はすでに安倍政権下で「自分の意向に背く奴は左遷する」という官僚人事を実行してきた。その最たる例が、2014年に「ふるさと納税」をめぐって菅官房長官に異を唱えた総務省官僚だった平嶋彰英氏の人事だ。ふるさと納税は総務相時代の菅氏の肝いり政策だが、2014年に官房長官だった菅氏は自治体に寄付する上限額の倍増などを指示。これに対し、当時、総務相の自治税務局長だった平嶋氏は「消費増税をお願いするなか、高所得者の節税対策になっているのはおかしい」と、菅官房長官に直接、問題点を説明したという。しかし、菅官房長官の態度は冷淡なものだった。「『俺はふるさとに純粋に寄付している人をいっぱい知っている』と言われ、資料も渡したが、すぐ返されました。俺に文句言うな、という感じでした」(前出『報道特集』より平嶋氏の証言)

 だが、菅官房長官はただたんに訴えを無視しただけではなかった。平嶋氏が説明に行ったあとには、「総務省の上層部からも電話がかかってきて、これ以上は何も言わないように忠告されました」(「週刊朝日」オンライン版10日付、平嶋氏インタビューより)といい、さらに翌年の2015年の人事で、事務次官候補とも呼ばれた平嶋氏が、そのコースから外れる自治大学校長に異動となったのだ。

 この人事の背景に何があったのか。じつは毎日新聞2017年6月3日付記事には、こうある。〈2015年夏の総務省人事で、高市早苗総務相がある幹部の昇格を提案したが、菅義偉官房長官が「それだけは許さない」と拒否。高市氏は麻生太郎副総理から「内閣人事局はそういう所だ。閣僚に人事権はなくなったんだ」と諭され、断念に追い込まれた。この幹部は菅氏が主導したふるさと納税創設を巡る規制緩和に反対していた。〉この「幹部」とは明らかに平嶋氏のことだが、つまり、菅官房長官は「楯突く者はこうなる」と見せしめに左遷したのである。平嶋氏自身も「自分のことをきっかけに『官邸に何を言ってもダメだ』という雰囲気ができた」(前出『報道特集』)と語っているが、自分の肝いり政策の問題を指摘されただけで権力にものを言わせて人事で干しあげたこの一件は、他の官僚たちを萎縮させたことは間違いない。

賭け麻雀の黒川東京高検検事長、『報ステ』圧力メール送った秘書官…イエスマンは続々出世

 しかも、菅氏はそうやって異を唱える官僚を左遷するという見せしめをおこなう一方、自分に跪き、言うことを聞く「イエスマン」を露骨に引き上げてきた。象徴的なのが、「賭け麻雀」問題で辞任した黒川弘務・元東京高検検事長をめぐる人事だ。黒川氏といえば、言わずもがな安倍政権下で巻き起こった不正をめぐる捜査をことごとく潰してきた人物だが、黒川氏のカウンターパートは菅官房長官だ。その付き合いは約15年にもなると言われ、ふたりが会っているところが頻繁に目撃されてきた。つまり、捜査を握りつぶしてくれる「用心棒」として黒川氏と安倍政権の強いパイプを築いたのは菅官房長官だったのだ。

 そして、ある意味、最大の功労者たる黒川氏を検事総長にしようと、異例の人事がおこなわれる。昨年、法務省は次期検事総長として複数の候補者を提案したが、〈安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示した〉(読売新聞2月21日付)ことで覆り、2月に定年を迎える黒川氏の「異例の定年延長」人事が実行されたからだ。しかも、菅官房長官が黒川氏の人事に口を出したのはこれが最初ではなかった。2016年夏、当時法務省事務次官だった稲田伸夫氏の異動に伴い法務省は、後任の法務省事務次官に刑事局長だった林真琴・現検事総長を、黒川氏を広島高検検事長に据えようと人事案を官邸に上げたが、それを蹴ったのは菅官房長官だったと言われている。

 菅官房長官が自身の「イエスマン」を引き上げた人事はこれだけではない。そのひとりが、現在の財務省主計局長で、次期事務次官と言われている矢野康治氏だ。矢野主計局長といえば、2017年の人事で官房長となり、一気に将来の次官候補に名乗りをあげたが、この人事の際は「誰も想像だにしなかった」「能力としては中の下」(「週刊新潮」2018年5月3・10日号/新潮社)と言われていた。しかも、同年に福田淳一事務次官(当時)によるテレビ朝日の女性記者へのセクハラ問題で官房長から事務次官代行となったときには、「(名乗り出ることは)そんなに苦痛なことなのか」「(調査法が不適切では?と聞かれ)より良い方法があれば考えますけど、ご提案があれば」などと言い放つなど横暴さに批判が集まったが、その後も出世コースを歩んできた。だが、それもそのはず。矢野氏は2012年から2015年まで菅官房長官の秘書官を務めた人物であり、さらには菅官房長官の「報道圧力」の尖兵となってきた人物でもあるのだ。

 実際、2015年に『報道ステーション』(テレビ朝日)で古賀茂明氏が「I am not ABE」発言をおこなった際、番組放送中に抗議の電話とメールを送ったのは、当時、菅官房長官の秘書官で、菅官房長官と一緒に放送を観ていたという中村格・現警察庁次長だと古賀氏が著書で明かしているが、古賀氏は財務省セクハラ問題が起こった際、Twitter上でテレ朝が女性記者の告発を隠蔽していた点について、〈私がI am not ABEと発言した時も菅官房長官二人の秘書官中村格(詩織さん事件もみ消し警察幹部)矢野康治(現財務省官房長)の圧力メールを隠蔽〉(2018年4月20日)と事実を明かしテレ朝の対応を批判していた。つまり、中村氏のみならず、矢野氏も菅官房長官に代わって報道に圧力をかけるべく、メールを送っていたというのである。

森友公文書改ざんのキーマン・太田充氏も財務省事務次官に登り詰め

 また、忘れてはならないのは、今年7月、ついに財務省事務次官にまで登り詰めた太田充氏だ。太田氏はいえば、言わずと知れた森友公文書改ざん問題の“キーマン”のひとりだが、その太田氏の疑惑には必ず菅官房長官の存在が見え隠れしている。公文書改ざんは2017年2月17日の「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」という安倍首相の国会答弁がすべてのはじまりだったが、安倍首相は「総理を辞める」宣言のあと、菅官房長官に「私の家内の名前も出ましたから、しっかりと徹底的に調べるように」と指示を出していたことを国会でも認めている。そして、菅官房長官はこれを受けて、同月22日に財務省の佐川理財局長と中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官(いずれも当時)を呼び出しているのである。改ざんがはじまったのは、その2日後、24日のことだ。

 つまり、ここで菅官房長官が佐川氏や太田氏らに改ざんを命じた可能性が濃厚なのだが、それだけではなく、共産党が独自入手した2017年9月7日におこなわれた太田理財局長(当時)と国交省の蝦名邦晴航空局長(当時)らの話し合いを記録した文書では、太田氏は会計検査院の報告書への介入を口にすると同時に、こうも述べている。「両局長が官邸をまわっている姿をマスコミに見られるのはよくない。まずは寺岡を通じて、官房長官への対応をするのが基本だ」この「寺岡」というのは、当時、菅官房長官の秘書官を務めていた寺岡光博(現・内閣官房副長官補付内閣審議官)のことを指していると思われるが、ようするに菅官房長官と太田氏は会計検査院の報告や国会対応をどうごまかすかなどの相談をおこなっていたのだ。

 自分に楯突く官僚は左遷し、意のままに動く官僚は昇進させていく──。こうして安倍政権は公文書改ざんという国家的犯罪をはじめ、加計学園問題のような政治の私物化、あるいは「アベノマスク」のような無茶苦茶な官邸主導の政策に官僚を従わせてきたが、政権の意向に歯向かう官僚は異動させることを宣言する「菅総理誕生」によって、官邸支配はより強固なものとなってゆくだろう。前述した、菅官房長官に異を唱えたことによって報復人事を受けた平嶋氏は、「週刊朝日」オンライン版のインタビューで「官房長官に意見することに、怖さはなかったのですか」と訊かれ、こう答えている。「日本が戦争で負けたのは、米国と戦っても負けることはわかっていたのに、軍人を含む官僚たちが政治家に客観的な事実を報告しなかったからです。政治家にとって耳の痛い話でも、役人は事実をちゃんと報告することが仕事です。それをしなかったから、たくさんの悲劇が起きた。私としては、事実を伝えることは役人としての当然の仕事で、このことについては今でも後悔はありません」

 昨日13日放送の『日曜討論』(NHK)では、石破茂氏が「政府、官僚は国民のためにあり、権力のためにあるのではない」と菅氏に釘を差していたが、その声は菅氏の耳にはまったく届いていないだろう。菅総理の誕生は、「安倍政権の継承」どころか、「安倍政権の悪夢」を深化させることにほかならないのである。(編集部)