2020年9月27日日曜日

竹中氏のベーシックインカム論が前触れする菅政権の社会保障改革(世に倦む日々)

  23日のBS-TBS番組「報道1930に登場した竹中平蔵氏について、番組は小泉政権時から菅氏と最も親密な政治家であると紹介しました。実際に竹中氏は菅政権の経済分野のブレインと見做されています。司会者から、18日に早速都内のホテルで朝食をとりながら二人で1時間以上懇談した際にどんな話をしたのかと問われたのに対して竹中氏はあらかじめ用意したフリップを掲げて、月7万円のベーシックインカムを国民全員に支給する代わりに、生活保護と年金の制度を廃止する構想を説明しました。

 年金や生活保障をなくしてどうして月7万円で生活が出来るというのでしょうか。あまりにバカバカしくて呆れるほかはありません。ツイート界では早くも「#竹中平蔵」はおろか「#竹中平蔵ろくでもない」「#竹中平蔵は月7万円で暮らしてみろ」などのハッシュタグが立ちました。
 批判の対象はベーシックインカムにとどまらず、「竹中氏がこだわった国家戦略特区での規制緩和で加計疑惑が起きた」、「例の英語の民間試験導入も竹中氏の教育改革推進協議会で始まった」ことにも及んでいます。
「世に倦む日々」氏は、首相の掲げた「自助・共助・公助」竹中氏が新自由主義のイデオロギーを正当化する際に援用したフレーズであるとし、TBSが竹中氏を出演させたのは官邸差配で、そこでベーシックインカム話をマスコミで始めてくれと指示を受けたものと見ていますそして結果的に、氏が猛毒を持つ新自由主義の確信犯的で狂信的な信奉者であるかがく分かった放送だったとしています。
 早くも菅氏の底が割れたのは喜ばしいことであり、竹中氏に対する国民の批判が根強いこともツイートから分かりました。菅氏は政治の軌道を根本的に改めるべきです。
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竹中平蔵のベーシックインカム論が前触れする菅義偉の「社会保障改革」
                      世に倦む日々 2020-09-25
16日に政権を発足させた菅義偉が、2日後の18日に竹中平蔵と会食して話題になった。都内のホテルで朝食をとりながら1時間以上懇談、政策のアドバイスを受けている。さらに23日の報道1930に竹中平蔵が出演、その場で持論を披露し、月7万円のベーシックインカムを国民全員に支給する代わりに、生活保護と年金の制度を廃止すると言った。この放送を受けて、23日夜から24日にかけてツイッターで怒濤の批判が巻き起こり、関連するキーワードがトレンドに立って怒りが沸騰する状況が続いた。25日(今日)も興奮の余波が続いていて、今週の最も大きな政治ニュースになった。放送を見ながら、突然この話題が飛び出したのには驚いたが、フリップが予め用意されており、また、松原耕二が「菅さんに何をお話されましたか」と質問した回答の延長で提起されたので、視聴者の衝撃は大きかった。明らかに、竹中平蔵はこの問題を番組出演の目玉にしたのであり、観測気球を上げることを目的にして登壇したのだ。

番組では、竹中平蔵が、菅義偉といかに古くからの政策の同志であったかが紹介され、小泉政権時からの最も親密な政治家で、互いに助け合う関係だった過程が説明された。視聴者には、菅義偉がどれほど窮極で猛毒の、確信犯的で狂信的なネオリベ政治家であるかがよく分かった放送だったと言える。間違いなく、竹中平蔵は、月7万円のベーシックインカムの件を菅義偉に具申しているし、菅義偉から、その話をマスコミで始めてくれと指示を受けている。TBSが竹中平蔵を出演させたのも、官邸・内閣府の(マスコミ操作担当の)差配だろう。偶然ではなく計画的にやっている。一部の報道によると、菅義偉は内閣にブレーンとして竹中平蔵を入れようと検討したが、閣僚は自民党議員にしてくれと二階俊博に断られたという。竹中平蔵が菅政権にどれほど強い影響力を持っているかがよく分かるし、菅義偉が竹中平蔵を頼りにして、政策を立案推進する要役として位置づけていることが窺える。今後も会食とテレビ出演を重ね、菅内閣のスポークスマンの役割を果たすに違いない。

そもそも、菅義偉が総裁選時から掲げたスローガンが「自助・共助・公助」で、これは竹中平蔵が新自由主義のイデオロギーを正当化する際に援用したフレーズである。自己責任論だ。福田政権に代わり、小泉時代のネオリベ⇒新自由主義政策が世間から強い批判を浴びた後、竹中平蔵が雑誌等で開き直りに使うようになった。言うまでもなく、00年代後半は小泉竹中の構造改革が否定された時期で、その延長に「国民の生活が第一」を掲げた民主党政権の誕生がある。そこで下野した自民党が、野党として民主党政権との違いを際立たせようとしたのか、例の過激な憲法草案と同様、敢えて挑発的に、新自由主義の象徴的言句を拾い、「自助・共助・公助」を2010年の新綱領に取り入れた。おそらく、この「自助・共助・公助」を新綱領に入れるとき、党内論議で最も先鋭に立ち回り、意見集約に奔走した筆頭だったのが、当時61歳の菅義偉本人だったのではないか。そう推測する。だから、菅義偉のこの言葉への思い入れは特別なのであり、それゆえにこそ、総裁選出馬時に迷うことなくこの標語を自らの信条・理念として掲げたのだ。

菅義偉の「自助・共助・公助」は空文句ではなく、本気なのであり、カルト的なネオリベ狂信者の権力意思を示したものである。おそらく菅義偉は、早ければ秋国会、遅くとも春国会で、社会保障の大幅削減を打ち出してくるだろう。生活保護削減、公的年金削減、医療費負担増、介護保険負担増、等々を盛り込んだ、令和の「社会保障改革」案を発出し、自己の配下であるマスコミを使って絨毯爆撃作戦を展開するだろう。また、そのときは、単なる「社会保障改革」ではなく、またぞろ消費増税をセットにしたところの「社会保障と税の一体改革」をプログラム化する可能性が高い。すなわち、「一体改革」の第二弾であり、「一体改革」の令和版である。総裁選が始まったとき、菅義偉は、将来的な消費増税は避けられないと本音を漏らした後、「今後10年は上げる必要がない」と訂正した。再確認しないといけないが、前回の「社会保障と税の一体改革」が策定されたのが9年前の2011年で、そこで消費税を10%に引き上げると決め、最終的に実現するまで8年を要している。消費税率を倍に上げるのに10年かかることを官僚と支配層は知っている。

消費増税は長期計画の政策だ。10年前から仕込んでおかないと、目標とする税率への引き上げを達成することができない。しかもそれは、与野党合意という政治的仕掛けを組んで固める必要があり、選挙で争点にならないように、選挙で白紙化されることのないよう万全に工作しないといけない。社会保障削減も同じである。与野党合意でがんじがらめにして、国民が抵抗できないように要塞化する必要がある。前回、平成の「一体改革」は、民主党政権が裏切って与野党合意を組むことで実現した。首相は菅直人、官房長官は枝野幸男、委員の一人は湯浅誠である。菅義偉は、当然、打ち出す「社会保障改革」なり「新一体改革」においても、与野党合意の戦略で臨んでくるだろうし、野党に対して「改革」の趣旨に賛同しろと迫り、対案を出せと要求するだろう。さて、そのとき、枝野立憲民主党がどうするかである。まず、維新と国民民主党は「改革」に大賛成で乗ると予想される。菅義偉にとって厄介で難題なのは、むしろ与党の公明党との調整だろう。玉木雄一郎などは、現段階で早々に竹中平蔵のベーシックインカム策に乗っかる始末で、「改革」の先兵となる姿勢を見せている。

枝野立憲民主党は、新党に衣替えすると同時に、急に反新自由主義の旗幟を鮮明にするようになり、テレビ等で新方針の訴求と情宣に懸命になっている。共産党やネットの左翼は、この新方針を歓迎し、立憲民主党が政策を大きく転換したと意義づけ、積極的に評価して強調している。だが、新綱領の本文を吟味精読すると、そこには新自由主義の文字はなく、新自由主義への批判はない。過去の民主党・民進党の路線を払拭したという説明もない。せいぜい、第三項に書かれた「過度な自己責任が押しつけられることなく」という部分だけだろうか。全体として、3年前の綱領と基調は同じであり、多様性主義と共生社会に主眼を置いた理念になっていて、ソシアルではなくリベラルの性格の政党の綱領である。果たして、この程度の中身の新綱領をもって、立憲民主党が反新自由主義に転換したと言えるのだろうか。その政治的事実を納得し了解し確信できるものだろうか。私には不可である。政党にとって綱領は命だ。軽々しく変えられるものではなく、変えていいものでもない。もし、立憲民主党が過去の新自由主義的属性を清算したと言うのなら、その総括を綱領の中に書き込むべきだろう。

政治について猜疑心の強い私は、枝野立憲民主党の俄(にわか)な変身をよく信用できない。新しい政調会長は前原誠司の子分だった泉健太であり、新執行部は凌雲会の仲間で固めた布陣となっている。他ならぬ枝野幸男自身が、前原誠司と並ぶ凌雲会の双璧だった。名にし負う野党のネオリベ派閥。右派の拠点。凌雲会体制で出発した新立憲民主党が、新自由主義の克服を政策の機軸に据えると言っても、それを簡単に信じて鵜呑みにする庶民は少ないのではないか。もとより、旧民主党のマニフェスト詐欺には手痛い目に遭っていて、その苦痛と被害は忘れていない。どうやら、社会保障が大きな争点になりそうなこの局面で、想起するのは、4年前の前原誠司の「All for All」である。民進党が「All for All」を発表したとき、幹事長は枝野幸男だった。あの政策は何だったのか。要するに、「薄く広く」の応益負担の発想であり、必要な社会保障が欲しいなら増税に応じよという趣旨だったと整理できる。生活保護は現物支給にするという物騒な要素も入っていた。この構想の取り纏めに幹事長の枝野幸男が関与してないはずがない。果たして枝野幸男は、「All for All」についてどのような責任と反省の態度を示すのだろうか

それとも、何の自責もなく、4年前の「All for All」を是認したままだろうか。前原誠司にくっついて国民民主党の政調会長になった泉健太は、「All for All」を全面肯定する立場だろう。立憲民主党の基本政策やビジョンはまだ文書化されていない。菅義偉が「社会保障改革」を打ち上げ、基本合意の上での与野党協議を迫ってきたとき、果たして枝野幸男はどうするだろうか。当然、共産党は反発し反対する。したがって、菅義偉のその策は「野党共闘」分断の奸計でもある。危惧する最悪の予想を率直に言えば、例によって、枝野幸男は、口癖であるところの「国の基本政策については与野党で対立するべきではない」に回帰し収斂するのではないか。