2020年9月12日土曜日

誰が「安倍継承」を求めているというのか 驚くべき国民との乖離 菅氏

  総裁選に出馬した菅氏はひたすら安倍政治の継承を述べ立てています。本心で安倍政治が良かったと思っているのか、それとも党内の権力を維持するためにはそう言うしかないと考えてるのかは判然としません。いずれにしても安倍政権は、呆れるくらい長く政権の座にありながら何一つ誇るべきレガシーは残せず、ひたすら国民を貧しくし、国家財政の赤字の山を築き、憲法をないがしろにして、モラルを退廃させ、公文書を・・・などそれこそ悪夢の7年8ヵ月でした。それを継承するというのですから只々驚き 呆れるしかありません。

 日刊ゲンダイの記事「<誰が「安倍継承」を求めているのか> 身内だけの菅人気 驚くべき乖離 国民と自民党」と「菅官房長官『虚飾の履歴書』生家は豪農、名士の父は元町議」を紹介します。菅氏の真実に迫るものです。

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<誰が「安倍継承」を求めているのか> 身内だけの菅人気 驚くべき乖離 国民と自民党

日刊ゲンダイ 2020年9月10日(「阿修羅」より転載)

 叩き上げの苦労人が、長年支えた総理の無念を晴らすため、新たなトップの座を目指す――。菅官房長官自身が臆面もなく語り、メディアが喧伝する総裁選のストーリーだが、あまりにも現実とかけ離れている。

 安倍政権のすべてを継承すると繰り返す菅の圧勝ムードに〈「安倍なき安倍政権」という首なしお化けのようなもので、気持ちが悪い〉と喝破したのはジャーナリストの高野孟氏だ。9日発売の日刊ゲンダイのコラムでそう書いたが、気持ち悪いお化けを支えるのは“政界の妖怪”とも称される二階幹事長。実に薄気味悪い構図である。

 長期政権で強権を振るった菅自身の「暗さと不気味」も党内の雪崩現象に拍車を掛けた。服従する“しもべ”なら、河井克行前法相や菅原一秀前経産相らどんな問題児でも初入閣などを次々実現させ意を酌まない官僚たちは左遷人事で遠ざける。霞が関では「菅さんににらまれたら出世できない」と公然と語られるほどで、菅政権発足後の「冷や飯」を恐れ、慌てて党内5派閥が支援に回った。

 裏返せば、それだけ支援の見返りを欲しがる議員が掃いて捨てるほどいるわけだ。朝日新聞の調べだと、菅陣営は既に衆参両院の議長を除く党所属国会議員の394票のうち、78%に当たる308票を固めたという。首なし安倍亜流政権での「冷や飯」に震え上がり、ポスト欲しさに所属議員の実に8割近くが流れる異様な政党――。そんな理念も信念もない風見鶏たちが今から主導権争いに興じる醜悪ぶり。半沢直樹なら「今の自民からは腐った肉の臭いがする」と言うであろう総裁選のおぞましさだ。

虫が良すぎる「菅1強」シナリオ

 大体、菅が「安倍継承」を繰り返すのは、語るべき政策や国家ビジョンを持っていないからではないか。

 所見発表演説も常に下を向いて原稿棒読みの頼りなさ。スカスカ演説まで安倍から継承するとはある意味、徹底しているが、空虚な自分をゴマカすために「雪深い秋田の農家の長男」「高卒で単身上京し、段ボール工場に勤務」「地方議員出身の叩き上げ」と苦労人エピソードに頼るしかないのだろう。そんな浪花節をメディアが美談に仕立て上げ、おかげで、どの世論調査でもアッという間に「次の首相」にふさわしい人で断然の1位に躍り出た。菅も上機嫌で、大新聞も「本格政権も視野」などと持ち上げる。

 総裁選びの正統性を問う声を抑えるため、地方票でも他候補を圧倒。勢いに乗じて「脱派閥」人事を断行し、新政権への期待を追い風に早期解散に打って出る。総選挙に圧勝すれば、来秋の総裁選は無投票再選となり、長期政権の道が見えてくる。とまあ、虫が良すぎる「菅1強」シナリオを総理になる前から、メディアがはやし立てれば、菅がその気になっても、おかしくはない。しかし旧態依然のイカサマ総裁選を既に制したといっても過言ではないとはいえ、「菅新首相」を見る国民の目は節穴ではない。世論は、菅が掲げる「安倍継承」など望んじゃいないのだ。

党益を守り国益を滅ぼす醜悪な論理

 毎日新聞と社会調査研究センターが8日、総裁選の告示を受けて緊急の全国世論調査を実施。次の首相に期待するのは安倍政権からの継続性か、それとも政策や政治姿勢の変化かと聞くと、「継続性を期待」は33%、過半数の55%は「変化を期待」と答えたのだ。この色分けは、総裁選で「あなたが投票できるとしたら、誰に投票しますか」との質問にも変化を及ぼす。安倍継承を求める層の85%は菅を支持。一方、変化を求める5割強に限ると、石破56%、菅22%とダブルスコアで逆転する。

「身内だけの菅人気」の傾向は他の調査からもうかがえる。4~6日実施の読売新聞の調査によると、次の首相にふさわしい人は菅46%、石破33%の順。これは全体の数字で、自民支持層は菅63%と石破22%を圧倒するが、無党派層に絞れば石破が39%、菅は33%と逆転を許している。安倍継承なんて身内の論理で、決して国民全般に受け入れられているわけではないのだ。

「安倍政権下の世論調査では改憲や安保法制、年金、消費税など個別の政策の評価を聞くと、6~7割は支持してこなかった。モリカケ、桜、IR汚職、河井夫妻の選挙買収など安倍政治の『負の遺産』も、菅氏は継承することになりますが、これらの説明に国民の8割は納得していません。揚げ句がコロナ対策で、アベノマスクなどの愚策で世論の支持を失い、行き詰まったのが、安倍政治の実情です。その路線を引き継ぐことに、多くの国民は冷ややかです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 また、安倍首相の退陣表明後、どの世論調査でも内閣支持率は50~60%台まで跳ね上がり、自民党の政党支持率も軒並み40%前後までアップ。この結果に自民党内はホクホク顔で、安倍への同情票や新政権へのご祝儀票が期待できるうちに解散・総選挙を求める声が強まっている。しかし、高支持率を支えるのは“お餞別”ムード。直近のJNN世論調査で安倍退陣のタイミングが「早すぎた」との回答は13%。「適切だった」(51%)と「遅すぎた」(29%)を合わせると、回答者の8割は「辞めるなら今でしょ」と感じているのだ。安倍の退陣判断に世論が賛同しただけで、高支持率はしょせんバブル。すぐに霧散するに決まっている。

世界の潮流にも逆行する危うい選択

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。「長らく世論調査で安倍内閣支持の最大理由だった『他に適当な人がいない』も虚構でした。総裁選の演説を聞いても、安倍首相や菅氏よりも石破氏と岸田氏の方が、マトモな政策と国家観を兼ね備えているのは明らか。しかし、メディアは論争度外視で『焦点は菅氏の勝ち方と2位争い』など勝敗だけにこだわり、総裁選後の組閣人事を巡る自民党内だけの身内の争いを夢中で追いかける。国民をシラケさせ、『菅氏で決まり』の諦めムードを助長しています」

 そもそも菅支持の細田、麻生、二階、竹下、石原5派閥の領袖は誰も「一国の顔」になり得ない。そんなブザマな面々が既得権益を守るため、長期政権のよどみが詰まった「パンドラの箱」を、石破だと開けかねないと利害関係が一致。寄ってたかって石破潰しと権力維持だけで、スカスカ菅を担ぎ上げているのだ。

「つまり菅氏は便器のフタのような立場。中身空っぽで党益に反しないからこそ、支える側には都合がいいのでしょうが、それは腐った内向きな論理です。外交・安保の経験ゼロで原稿棒読みの菅氏が各国のリーダーと渡り合っていけるとは思えません。ましてや、中国ベッタリの派閥の長に推された新首相誕生は、香港問題などで中国依存を避ける世界の潮流に逆行します。党益を守って国益を滅ぼしかねない危うい選択です」(五野井郁夫氏=前出)

 前出の五十嵐仁氏はこう言った。「党員・党友票を省いた総裁選が象徴的で、今の自民党は地方の課題や国民の多様な意見を聞く、かつての『国民政党』の姿を自ら放棄しています。菅氏の『安倍継承』とは人事を牛耳る官僚支配や疑惑隠し、メディア統制、身内びいきなど独善的な1強体制を引き継ぐことを意味し、さらなる分断と対立を招来させるのでしょう。ただ、異論や反対意見に不安を覚える1強体制はもろい。コロナ禍と米国の黒人差別反対運動で生じた協調と多様性を重んじる国際世論にも反しており、時代の要請に応えられない政権となるだけです」 驚くほど国民意識と乖離した自民党の内輪の論理。こんな古い発想に支えられた菅が「新」政権を発足させるなんて、悪い冗談でしかない。

 

菅官房長官「虚飾の履歴書」生家は豪農、名士の父は元町議

日刊ゲンダイ 2020/09/11

 ポスト安倍を決める自民党総裁選の投開票まであと3日。「菅総裁」が選出され、7年8カ月に及んだ安倍政権の居抜き内閣が誕生するのは確実な情勢だ。5派閥の支持を得た菅官房長官は国会議員票394票の8割を固め、地方票141票も半数超えを確保する勢い。世論の支持も広げつつあるが、「苦労人」「庶民派」のイメージには偽りアリだ。 

 毎日新聞によると、菅氏は地方票の過半数を確保して80票を超える勢い。石破茂元幹事長は30票弱、岸田文雄政調会長は10票あまりにとどまっているという。マスコミ各社の世論調査でも、菅氏の支持率は国民人気の高い石破氏を抜き去り、支持が広がらない岸田氏を尻目にトップに躍り出ている。「令和おじさん」で知名度を上げたとはいえ、つい最近まで支持率3%だった男が、あっと言う間に支持率トップになるのは異例だ。好感度アップに、つくられたプロフィルが寄与しているのは間違いない。

「苦労人」「庶民派」イメージで支持拡大

「雪深い秋田の農家の長男として生まれ、地元で高校まで卒業いたしました。卒業後、すぐに農家を継ぐことに抵抗を感じ、就職のために東京に出てきました。町工場で働き始めましたが、すぐに厳しい現実に直面をし、紆余曲折を経て2年遅れで法政大学に進みました。いったんは民間企業に就職しましたが……」

 8日の所見発表演説会で菅氏が口にした経歴だ。ライバルの石破氏と岸田氏は政治家一家に生まれた3世議員。政界のサラブレッドである。対する菅氏は、政治とは無縁の貧農に生まれ育ち、食うや食わずの中で上京し、苦学して政治の道を志したかのようなイメージだが、それは大間違いだ。

 菅氏が生を受けたのは、秋田県雄勝郡秋ノ宮村(現・湯沢市秋ノ宮)。父・和三郎氏は南満州鉄道に勤めた地元エリート。終戦で秋田へ引き揚げた。「冬には出稼ぎに行く農家が多かったため、和三郎氏は地域振興のためイチゴ栽培に取り組んだ。それが見事に成功し、菅家は貧農というより、むしろ豪農と言った方がいい」(永田町関係者)

 名士となった和三郎氏は雄勝町議を4期務め、姉2人も大学に進学して教職に就いたという。菅氏の学歴についても、「夜間部卒」と一部で報じられているが、実際は昼間の「法大法学部政治学科卒」。“集団就職”も作り話だ。議員バッジを付けるまで恵まれない環境にあったというわけではない。

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。「実質的に自民党総裁イコール首相です。国民が直接選ぶことはできませんが、世論の反応は無関係ではありません。総裁候補がどういう人生を歩んできたかは国民にとって重要な判断ポイントの一つなのに、総裁選は公選法の対象外だからかメディアの突っ込みは総じて甘い。菅長官を含め、全候補者の発言に大して厳しいファクトチェックが必要です」

 それに、菅氏は弱肉強食を是とする新自由主義の信奉者だ。決して弱い人間の味方ではない。この総裁選でも「自助・共助・公助」を掲げ、国民にまず自己責任を求めている。東北出身の苦労人だから……と、期待したら国民は痛い目に遭うだけだ。