14日、「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」が閣議決定されたことを受けて、15日の地方紙社説は戦争法案への懸念で埋まりました。
曰く、
平和と語れば語るほど、平和国家の評価変えるのか、「平和のために」まやかしだ、「平和国家」が変容する、これが平和守る道なのか、平和主義の曲がり角だ、平和主義を捨て去るのか(以上いずれも社説のタイトルから)・・・など。
ちなみに15日付の社説のタイトルを例示すると以下のようになります。
南日本新聞の二つの社説を紹介します。
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[安保法閣議決定] 平和と語れば語るほど
南日本新聞 2015年5月15日
私たちは、多くの嘘(うそ)いつわりを、
真実のように話すことができます。
けれども、私たちは、その気になれば、
真実を語ることもできるのです
先日亡くなった詩人、長田弘さんの詩「夏の午後、ことばについて」にある。
閣議決定された安全保障関連の「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」には、そろって「平和」の名が冠された。
戦後の日本は、不戦を誓う憲法のもと、「平和」国家を目指してきた。しかし、新たな安保法制は、国民にこれまでとは異なる道を歩ませるものだ。
ことさら「平和」を強調し、真実を隠すような政府の姿勢に、長田さんの詩が思い浮かんだ。
今回の安保法制は昨年7月、安倍政権が憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたところから始まった。
世界情勢の変化などを挙げ、「国民の命と暮らしを守るため」と、安倍晋三首相が主張する集団的自衛権は、自衛隊が他国の戦争に参加することを認めるものだ。
その後まとめられた安保法制は、平時から有事まで、そして地球の裏側までも、自衛隊の「切れ目のない対応」を可能にした。
他国軍の後方支援を可能にする国際平和支援法でも、自衛隊の活動域は「現に戦闘行為が行われている現場」以外に広がる。将来的に戦闘行為が行われる可能性もあるし、後方支援であっても相手から見れば攻撃対象になり得る。
政府がいかに否定しようと、野党の一部が指摘するように「戦争法案」と呼ぶ方が実体を表しているように思える。
「積極的平和主義」の看板を掲げる首相は、これまでもしばしば「平和」を口にしてきた。
昨年の全国戦没者追悼式では、「不戦の誓い」に触れることなく「世界の恒久平和に、能(あた)うる限り貢献」すると強調した。4月の米議会演説では、安保法制の夏までの成就を約束し、「地域の平和のため、確かな抑止力をもたらす」と胸を張った。
首相は著書で「自分の国を守るために戦わない国民のために、替わりに戦ってくれる国は世界中どこにもない」と述べる。「平和」は国民が血を流し、勝ち取るものだという考えなのだろう。
安保法制の先には、首相が悲願とする憲法9条の改正がある。国防軍の設置や国民の義務も盛り込み、そこでも「平和のため」と繰り返すつもりだろうか。
聞こえのいいフレーズは終わりにしたい。政治家なら真実の言葉で語るべきだ。
[安保法閣議決定] 政権の暴走に抗議する
南日本新聞 2015年5月15日
この法案が成立すれば、自衛隊は「専守防衛」の衣を脱ぎ捨て、「地球の裏側」まで出かけて戦うことになりかねない。
国民に信を問わないまま、日本国憲法を骨抜きにする政権の暴走に強く抗議する。
安倍内閣が安全保障関連法案を閣議決定した。
閣議決定後の記者会見で安倍晋三首相は、「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と断言した。「戦後日本の平和国家の歩みに胸を張るべき」とも述べた。
クロをシロと言いくるめるようなものではないか。不誠実にすぎよう。
きょうにも国会に提出される法案は、武力攻撃事態法や自衛隊法、周辺事態法など改正対象の法案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」の2本である。
安保法制の整備には二つの目的がありそうだ。「切れ目のない」対応と日米同盟強化である。
武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」から集団的自衛権の行使を容認する「存立危機事態」まで、一括法案に盛り込まれた。
その内容は、防護対象を米軍限定とした昨年の閣議決定の拡大解釈だったり、地理的制約の撤廃、他国を武力で守ったりである。
「切れ目のない」対応とは要するに、「歯止めのない」自衛隊派遣を意味しよう。
オバマ米政権は「リバランス」(再均衡)政策を掲げる。二つ目の目的の日米同盟強化は、負担肩代わりの点でも「渡りに船」だ。
実際、中国が岩礁埋め立てを急ぐ南シナ海で、自衛隊の恒常的な警戒監視活動を望む発言が米側から相次いでいる。いずれ望まない紛争に巻き込まれかねない。
他国軍支援はこれまで特別措置法で対応してきた。イラク戦争では「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派遣を)の一言でイラク特措法が成立した。
結果的に開戦は誤りだったが、いまだに日本政府はきちんとした検証を怠っている。失敗から教訓を学ばない政治が、恒久法を手にしたらどうなるのか。
政府が法案を2本にまとめたのは、いざとなれば数の力で押し切る意思表示にみえる。戦後70年、海外で一度も武力行使しなかった日本の歩みを転換させる法案だ。強行採決は許されない。
安保関連法をめぐる国会論戦は今月下旬から本格化する。国権の最高機関にふさわしい議論を与野党に求める。